”自分の音楽や演奏家としての活動における能力が、誰かの何かの役に立つ事が目標であり夢” と稲積陽菜。
自動演奏ピアノを越えたエンターテイメントピアノ Disklavier™を使用したコンサートツアー、
そして、自らの研究とコンサートの横断という取り組みについて語っていただきました。
Q1:このツアーは全4拠点で開催され、11月28日に青山音楽記念館からスタートしましたが、本ツアーに向けた意気込みをお聞かせください。
このツアーでの一番大きな挑戦はヤマハ様のDisklavier™を使わせていただくことです。演奏を数値データとして記録・再現できるこの楽器を、来年度から進学予定の慶應義塾大学大学院での研究にもつなげていきたいと考え、取り組みと楽器・演奏の魅力を組み合わせたリサイタルとして設計しました。
大学院で研究をしていくことを皆さまがどう受け取るか不安もありましたが、演奏と研究の両方に真剣に向き合い、その二つを組み合わせてこそ今の私だという姿勢を、まずこのツアーで形として提示したいと思い、プログラムからこだわって構成しました。
今の私そのものを体現するツアーになればと思っています。
Q2:リサイタルタイトル「伝統の継承、未知への探究──」には、どのような想いが込められているのでしょうか。
このタイトルには二つの意味が込められています。
まず一つは、バロックや古典派、ロマン派の中での所謂クラシック音楽を代表する作品と、まだ広く知られていない作曲家の作品を並べるといったプログラム構成そのものに対する思想です。もう一つは、伝統的なピアノリサイタルという場に、革新的なDisklavier™という楽器を用いてデータ取得やアンケートを組み合わせ、研究的視点を重ねることで、音楽と科学が交差する場を創り出したいという想いです。
Q3:プログラムA・プログラムBの2種類をご用意されていますが、それぞれのプログラムの特徴や、作曲家・曲目などの聴きどころについてぜひ教えてください。
私自身のリサイタルではこれまで取り上げてこなかったバロック時代や古典派の作品をあえて取り入れている点は、私にとって新しい挑戦です。プログラムBでは、初めて本格的に向き合うベートーヴェン後期ソナタにも挑みます。また、ボルトキエヴィチやモンポウ、アルベニス、リャードフなど、私が出会って強く惹かれた、少しマニアックな作曲家の中からいくつかの曲を厳選しました。未知の作品との出会いを楽しんでいただけたら嬉しいです。
Q4:稲積さんにとって、ピアノと向き合う時間はどのような時間でしょうか。また、これまでの活動を振り返って、心境や向き合い方に変化を感じている部分があれば教えてください。
この一年を振り返っても、ピアノへの向き合い方の変化を感じる瞬間は何度もありました。
ピアノと向き合うことに前向きになれない時期が長くありましたが、大学院入試の勉強中に勉強に寄り添う音楽としてクラシックを選ぶようになったことをきっかけに多くの作品に触れ、狭いと思い込んでいたクラシック音楽の世界の広さに気づけたことは大きな転機でした。
また、ピアニストは孤独なものだと思っていましたが、本番に向けて何度もアドバイスをくれる友人や、一緒に頑張ろうと言ってくれる仲間、先生や家族など様々な立場から応援してくださる方々、そして熱量を持って熱く、温かく支えてくださる調律師やアーティストサポートの方々との出会いが大きな支えとなり、本番に向けた準備のひとつひとつが、かけがえのない思い出となっていくのを感じました。
私がピアノに向き合う時間は、支えてくださる方々に恩返しができるかもしれない、その可能性を少しでも積み重ねていく時間です。
Q5:当日はヤマハDisklavier™(ディスクラビア)の自動演奏機能を使用した演奏も予定されていますが、稲積さんのピアニストとしての活動の中で、Disklavier™はどのような存在のピアノでしょうか。
Disklavier™は、私にとって演奏と研究をつなぐ架け橋として捉えています。ピアノと向き合う中で、自分の中でしっくりこない感覚や言葉にしづらい疑問を抱えてきましたが、それがDisklavier™を通して具体的な研究へとつながっていきました。以前から触れる機会をいただく中で、「自分の演奏を自分が客席で聴くことは永遠に叶わない」と言われてきたことが、記録・再現によって現実になる時代に入ったのだと実感し、強く感動したことを覚えています。
Q6:「稲積陽菜ピアノリサイタル『伝統の継承、未知への探究──』」にご来場予定の皆さまへ、メッセージをお願いします。
このツアーには、私のさまざまな想いを込めています。聴きに来てくださった方々が、新しい作曲家や作品との出会いでも、Disklavier™という楽器の面白さでも、ヤマハのピアノの響きそのものでも、あるいは音楽と科学が交差する試みに対する興味でも、何か一つでも心に残るものを持ち帰っていただけたら嬉しいです。
未知のリサイタルでの挑戦の道のりを皆さまに最大限楽しんでいただけるよう、日々準備を重ねてお待ちしております。
【YouTube】
♪Sergei Bortkiewicz – Lyrica Nova, Op.59 No.1[Hina Inazumi|YAMAHA Disklavier]
稲積陽菜ピアノリサイタル「伝統の継承、未知への探究ー」
- 【名古屋】稲積陽菜ピアノリサイタル「伝統の継承、未知への探究ー」

- 日時:2025年12月21日 15:00
- 会場:ヤマハグランドピアノサロン名古屋
- 出演:稲積陽菜
- 【仙台】稲積陽菜ピアノリサイタル「伝統の継承、未知への探究ー」

- 日時:2026年1月11日 15:00
- 会場:ヤマハミュージック仙台サロン6F
- 出演:稲積陽菜
- 【東京】稲積陽菜ピアノリサイタル「伝統の継承、未知への探究ー」

- 日時:2026年1月25日 19:00
- 会場:浜離宮朝日ホール
- 出演:稲積陽菜






