- 将来を嘱望される12名のピアニストたちがヤマハホールに集合! ~Yamaha Rising Pianists Concert~ この記事は2018年8月10日に掲載しております。

ピアノ界の次代を担う綺羅星のようなスターたちの夢の競演「Yamaha Rising Pianists Concert」が、2018年9月19日、20日の2日間にわたってヤマハホールで開催される。国内外から選りすぐられた12名のピアニストは、いずれもすでに様々なコンクールで優勝、入賞を果たし、多彩な演奏活動を繰り広げている俊英揃い。公演を前に、彼らの魅力をご紹介しよう。

9月19日に登場するのは、梅田智也さん、太田糸音さん、坂本彩さん、エリザベータ・クリュチェリョーヴァさん、リ・ヒョックさん、フィリップ・ショイヒャーさん。

 梅田智也さんは、東京藝術大学修士課程修了後、ウィーン国立音楽大学のマーティン・ヒューズ氏のもとでさらに研鑽を積み、第12回東京音楽コンクール第1位ほか、ヨーロッパの国際コンクールでも入賞を重ね、著名指揮者、主要オーケストラとの共演も多い実力派ピアニスト。鮮やかな技巧と知的なアプローチでブラームス《パガニーニの主題による変奏曲 第2集》を楽しませてくれることだろう。

 太田糸音さんは、東京音楽大学付属高校を2年で修了し、飛び級で東京音楽大学ピアノ演奏家コース・エクセレンスに進学した注目の若手ピアニスト。NHK Eテレアニメ「クラシカロイド」の演奏を担当したり、シャネル・ピグマリオン・デイズ2018のアーティストとして活動するなど、多忙な日々を送っている。ラヴェル《夜のガスパール》は、2017年から取り組み、強く心惹かれている作品だという。透明感のある色彩豊かな音色を響かせて幻想的な世界を描き出すことだろう。

 坂本彩さんは、東京藝術大学卒業後、ベルリン芸術大学大学院でパスカル・ドゥヴァイヨン氏に師事し、第6回仙台国際音楽コンクール第6位、第20回ホセ・イトゥルビ国際コンクール(スペイン)第5位など、着実に力をつけ、皇居での御前演奏をはじめ、国内外で様々なコンサートに出演し、好評を博している。リスト《巡礼の年 第1年「スイス」》より『オーベルマンの谷』ほか3曲を、情熱あふれるドラマティックな演奏で聴かせてくれることだろう。

 エリザベータ・クリュチェリョーヴァさんは、モスクワ生まれの19歳。11歳のときにパリで開催されたスクリャービン国際コンクールで優勝したのを皮切りに、クライネフ国際コンクールなど数々のジュニアのためのコンクールで優勝、入賞を果たしているロシア期待の新星だ。現在はモスクワ音楽院でアレクサンドル・ストコフ氏に師事している。ロシアの抒情を湛えたラフマニノフ《ピアノ・ソナタ第2番》に期待が高まる。

 リ・ヒョックさんはソウル生まれの18歳。12歳のときにモスクワで開催された第8回若いピアニストのためのショパン国際コンクールでグランプリを獲得、16歳のときには第10回パデレフスキ国際ピアノコンクールで優勝し、天才少年として注目を集め、現在はモスクワ音楽院で学んでいる。スカルラッティのソナタ、ストラヴィンスキー(アゴスティ編曲)《組曲「火の鳥」》、リスト《ラ・カンパネラ》を、フレッシュな果実のような演奏で楽しませてくれることだろう。

 フィリップ・ショイヒャーさんはオーストリア・グラーツで生まれ、ウィーン国立音楽大学のマルクス・シルマー氏のもとで研鑽を積み、ヨーロッパの伝統が息づく洗練されたピアニズムを身につけ、独自の音楽世界を持つピアニストとして知られる。ベートーヴェン《幻想曲》、リゲティ《ピアノ練習曲より「魔法使いの弟子」》、リスト《超絶技巧練習曲より「マゼッパ」》という変化に富んだプログラムで、鮮烈な印象を聴く人の心に刻みつけることだろう。

9月20日に登場するのは、今田篤さん、木村友梨香さん、中川真耶加さん、アレクセイ・タルタコフスキーさん、ステファン・ボネフさん、ソン・ユルさん。

 今田篤さんは、東京藝術大学卒業後、英国王立音楽大学でロシア出身の名ピアニスト、ドミトリー・アレクセーエフ氏に師事した後、現在はライプツィヒで、バッハのスペシャリスト、ゲラルド・ファウスト氏に師事している。ヨーロッパでの学びの日々の集大成として、ハイドン《ピアノ・ソナタ 第40番》、ラヴェル《夜のガスパールより「スカルボ」》を成熟したピアニズムで味わい深く聴かせてくれることだろう。

 木村友梨香さんは、東京音楽大学ピアノ演奏家コースを卒業後、ベルリン芸術大学修士課程でマルクス・グロー氏、ドンキュ・キム氏に師事している。ピアニストラウンジのコラムに22回にわたって連載した「木村友梨香の留学日記~ドイツからGuten Tag!!」では、ベルリンでの充実した留学生活を紹介し、話題を呼んだ。ベートーヴェン《ピアノ・ソナタ 第13番》、ショパン《練習曲 作品25 第11番「木枯らし」》というプログラムは、力強いピアニズムと多彩な表現に定評のある彼女にぴったりだ。

 中川真耶加さんは、東京音楽大学ピアノ演奏家コースを経て同大学院を卒業。2015年の第17回ショパン国際ピアノコンクールでは、第2次予選に進出し、楽曲を深く読み込んだクオリティの高い演奏でワルシャワの聴衆を魅了し、ディプロマを受賞した。のびやかな音楽性を発揮し、プロコフィエフ《ピアノソナタ 第7番》を清々しく聴かせてくれることだろう。

 アレクセイ・タルタコフスキーさんは、ロシア出身のアメリカのピアニスト。2015年のショパン国際ピアノコンクールでは、セミファイナルに進出し、包容力のある音楽を披露した。ストラヴィンスキー《ペトルーシュカからの3楽章》では、目の覚めるような技巧と情感あふれる演奏を楽しませてくれることだろう。

 ステファン・ボネフさんは、ブルガリア出身のピアニスト。ドイツのハンブルク音楽演劇大学、イタリアのフィエゾーレ音楽院で学び、ヨーロツパの様々なコンクールで入賞を果たし、ソロ、室内楽、オーケストラとの共演など幅広い演奏活動を展開している。ベートーヴェンの最後のソナタ、第32番にどのように向き合い表現するのか、とても楽しみだ。

 ソン・ユルさんは、韓国芸術総合学校音楽院1年に在学中の18歳。2015年の第3回アジア・パシフィック国際ショパンコンクールのジュニア部門で第1位およびポロネーズ賞を受賞して注目を集めた。2017年には、ミネアポリスで開催されたE-ピアノ・ジュニアコンクールで第2位を獲得している。珍しいフランス・バロックの作品、ラモー《新しいクラヴサンのための組曲より『エンハーモニック』『エジプトの女』》とバルトーク《ピアノ・ソナタ》を組み合わせた斬新なプログラムを、しなやかなピアニズムで楽しませてくれることだろう。

 今後さらなる活躍が期待される豪華な顔ぶれの演奏を一度に聴く贅沢な2日間。ヤマハCFXからそれぞれの個性が際立つ音色を引き出し、素敵な演奏を聴かせてくれるに違いない。未来の巨匠たちの「いま」を聴くコンサートにぜひ足を運んでいただきたい。

Textby 森岡葉

上記は2018年8月10日現在の情報です。