ピアニスト:サラ・デイヴィス・ビュクナー  - サラ・デイヴィス・ビュクナー Mozart Innovation ~モーツァルトへの深い尊敬と愛を込めて~ この記事は2018年6月22日に掲載しております。

数々の国際コンクールで輝かしい成績を収め、世界的に活躍するアメリカ出身のピアニスト、サラ・デイヴィス・ビュクナーさん。9月に京都府立府民ホール“アルティ”で開催する『Mozart Innovation』全4回公演を前に記者会見を行い、モーツァルトの音楽の魅力を熱く語った。

Profile

モーツァルトは私の音楽家としての中核

親日家として知られるサラ・ビュクナーさん。2018年5月31日、京都府立府民ホール“アルティ”で行われた記者会見では、流暢な日本語をまじえながら、モーツァルトへの想い、『Mozart Innovation』と題する4回の公演への意気込みを語った。

「私とモーツァルトとの出会いは、2歳か3歳くらいの頃。毎日夕方、ラジオから流れる《フィガロの結婚「序曲」》で始まる音楽番組を楽しみにしていました。両親は音楽家ではありませんでしたが、音楽を心から愛し、私に音楽に触れる機会を与え、ピアノを習わせてくれました。6歳の誕生日に両親からプレゼントされたモーツァルトの小さな像は、鼻が欠けてしまいましたが、今でもピアノの傍らにいます。
 あと数年で60歳を迎える今、自身の音楽家としての中核と考えて取り組んできたモーツァルトの音楽を、新たな切り口で聴いていただこうと企画したのが今回のプロジェクト『Mozart Innovation』です。大好きな日本、大好きな京都、大好きなホール、大好きなヤマハのピアノで、4日間にわたって聴衆の皆さんとモーツァルトの音楽に浸ることができるなんて、まさに夢がかなったという気持ちです」

 モーツァルトのピアノソナタ全18曲に+αの珠玉の小品を組み合わせたプログラムは、毎回テーマを決めて、モーツァルトの作曲家としての多彩な魅力に様々な角度から光をあてる。

「モーツァルトは実に複雑な作曲家です。わずか35歳で亡くなりましたが、あらゆるジャンルの作品を様々な作曲技法、スタイルで書いています。対位法、クロマティシズム、イタリア・オペラ……、第3回で取り上げる《アイネ・クライネ・ジーグ》(KV574)など、まるで十二音技法を使った音楽のようです。当時の人々には理解されず、出版もされませんでしたが、彼は明らかに音楽の未来を予言していたのです。生徒のために書いた愛らしいソナタとは、まったく異次元の世界!驚くべき天才です。35年の生涯で書くべき作品はすべて書きました。最後の交響曲、第41番《ジュピター》の荘厳な輝きに満ちた音楽の後に、もう書くべきものはなかったはずです。
 そうしたモーツァルトの多面性を浮き彫りにしたいと考え、ピアノソナタをただ作品番号順に弾くのではなく、このようなプログラムを組みました。モーツァルトは、人間的にもおもしろい人物でした。ユーモアにあふれ、冗談を言ったり、悪ふざけをしたり、賭け事も大好きで……、モーツァルトが今生きていたら、きっと関西が気に入ることでしょう。たこ焼きや阪神タイガースも(笑)!彼は音楽の中で、人間の喜怒哀楽の感情を生き生きと描き出しています。このプログラムで、それを感じ取っていただければ幸せです」

ヤマハCFXは、ピアニストにあらゆる可能性を与えてくれる

 2016年に京都府立府民ホール“アルティ”でブゾーニ生誕150周年を記念したリサイタルを開催した際、ホールの素晴らしい音響とヤマハCFXの音色に魅せられた。

「ヤマハは私の一番好きなピアノ!私とヤマハのピアノとの関わりはとても深いのです。8歳くらいのときに、当時師事していたフィリピン出身のピアニスト、レイナルド・レイズ先生から、新しいピアノを買いなさいと言われ、母と一緒にいろいろなピアノを見に行って、価格の面でもリーズナブルなヤマハのピアノを選びました。当時、アメリカではヤマハのピアノはあまり知られておらず、ヤマハと言えばモーターバイクというイメージでしたが(笑)、素晴らしいピアノで、私の修行時代を支えてくれました。
 そして、26歳のときに参加したチャイコフスキー・コンクールでヤマハCF IIIを弾いて入賞しました。それがきっかけで、翌年、日本縦断コンサートに招かれました。その後、ヤマハのピアノは飛躍的な進化を遂げ、最新のコンサートグランドピアノCFXは、ピアニストにあらゆる可能性を与えてくれます。こういう響きが欲しい、こういう色彩が欲しいと望むままに、心の中で思い描いた音楽が表現できます」

ヤマハCFXは、今回のモーツァルトのプログラムにぴったりだと語る。

「モーツァルトの音楽には、一音の無駄もありません。一つひとつの音に意味があり、シンプルに聴こえるフレーズでも、音色を吟味し、微妙なアーティキュレーションを考えて演奏しなければなりません。それがモーツァルトの難しさです。ヤマハCFXは、私の気持ちに繊細に応えて、モーツァルトの音楽世界を鮮やかに描き出してくれることでしょう」

モーツァルトに真摯に向き合い続けるビュクナーさんの公演への期待が高まる。

Textby 森岡葉

阪神タイガースの熱狂的なファンのビュクナーさん。記者会見には、元オーナーの宮崎恒彰氏(写真右)もゲストとして登場。ビュクナーさんは阪神タイガースの法被を羽織り、応援グッズを取り出し、《六甲おろし》をピアノで披露して会場を沸かせた。

上記は2018年6月22日現在の情報です。