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今田篤さん ピアノの世界に没頭している時は、本当に楽しい。~今田篤さんインタビュー この記事は2019年10月1日に掲載しております。

2018年11月に開催された第10回浜松国際ピアノコンクールで第4位に入賞した、今田篤さん。イギリス、ドイツでの留学生活、数々のコンクール経験を通じ、今感じているピアノへの想いを伺いました。

Profile

pianist 今田篤
© Vita Pictures

pianist
今田篤
1990年静岡県掛川市生まれ。
2018年第10回浜松国際ピアノコンクール第4位及び2016年世界三大コンクールの一つである
エリザベート王妃国際音楽コンクール(ベルギー・ブリュッセル)にてファイナリスト入
賞。その他若い音楽家のためのクライネフ国際ピアノコンクール、全日本学生音楽コンクー
ル、日本音楽コンクール、PTNAピアノコンペティション、東京音楽コンクールをはじめ国内
外のコンクールで優勝、入賞多数。
これまでにマリン・オールソップ指揮ベルギー国立管弦楽団、ポール・メイエ指揮王立ワロ
ン室内管弦楽団、クラウディオ・クルス指揮リベイラン・プレート交響楽団(ブラジル)、
クラウディオ・クルス指揮サンパウロ青少年交響楽団等海外及び国内のオーケストラと多数
共演。リサイタルを日本国内及びフランス,ベルギードイツ,ブラジル,アゼルバイジャン,英
国にて行う。2008年度(財)ヤマハ音楽振興会音楽支援奨学生
2011年、2014年度公益財団法人ロームミュージックファンデーション奨学生
2013年度宗次エンジェル基金/新進演奏家国内奨学金奨学生
2017年芸術・文化 若い芽を育てる会奨励賞。明治安田クオリティオブライフ奨学金奨学
生。
2018年ベルギーショパン協会賞受賞
ピアノをこれまでに寺田美智子、三好のびこ、故堀江孝子、クラウディオ・ソアレス、伊藤
恵、ドミトリー・アレクセーエフの各氏に師事。東京藝術大学附属音楽高等学校を経て東京
藝術大学を卒業。2014年9月に英国王立音楽大学修士課程に奨学生として入学し2016年7月に
優秀な成績で卒業。2017年3月に東京藝術大学大学院修士課程を卒業修了時に大学院アカン
サス音楽賞及び藝大クラヴィーア賞を受賞。2017年9月よりライプツィヒ演劇音楽大学演奏
家課程にてゲラルド・ファウト氏に師事。
※上記は2019年10月1日に掲載した情報です。

厳しいアドバイスも受け止めて

 今田さんは、東京藝術大学で学んだ後、ロンドンに留学。そして今は学びの場をライプツィヒに移し、日本と行き来しながら演奏活動も行なっている。
「芸高、芸大で師事していた伊藤恵先生は、ドイツでの生活が長かったピアニストなので、僕は日本にいるときから、いわばあまり日本的でない、贅沢な環境で勉強することができました。おかげで留学してからも、ピアノの勉強の面でのギャップを感じることはありませんでした。もちろん、日常生活や、友達がなかなかできないという苦労はありましたけれど(笑)」
 ライプツィヒは旅をするのに便利な街ではないというが、それでも、ヨーロッパ各地の講習会への参加や、優れたピアニストに個人的にレッスンを受けるということを、積極的に続けているという。これまでに受けた数々のアドバイスの中で、印象に残っている言葉にはどんなものがあるのだろうか。
「最近だと、ルステム・サイトクーロフ先生から言われたことです。“君の演奏は、曲のフレーズの最後の部分がはっきりしない。普段言葉で話しているときも同じだ。そんなことでは、結局何が言いたいのかわからない”、と。何か、指摘されたくないことを言われてしまったように感じましたね。実際、演奏には人間性が出るものですから、普段から最後まで自信を持って言い切るようにしようと最近は心がけています。ただ、何十年もかけてこういう話し方になったので、すぐに変えるのは難しいですが……(笑)。

 また、シフやコチシュの師でもある、フェレンツ・ラドシュ先生の講習会を受けた時に言われた、“君がどういうふうにピアノを弾くかになんて、私は興味がない。その音楽がどういうふうにできているかということに興味があるんだ”という言葉も、一生心に残ると思います」
 浜松コンクールの直後、どんなピアニストになりたいかと尋ねたとき、今田さんは「作曲家がどういう音楽にしたかったのかを第一に考え、その解釈を聴衆と共有できる演奏家を目指したい」と話していた。そんな彼にとって、これは心に響き、共感する言葉だったのだろう。
 さまざまな先達からの言葉を糧に成長することを目指す今田さんだが、やはり、「厳しいことを言われると、心がズタズタになります。批判されることが好きなわけではありませんよ(笑)」と話す。
「でも今はまだ、落ち着いてしまったら、演奏家として次のステップに進むことができないような気がするのです。もちろん、自分で考え、自立して音楽をつくることも大切ですが、自分一人の狭い世界で完結したくないと感じています。自分を批判的な目で見ることは、なかなかできません。だからこそ、常に第三者の視点から、ときには批判的なコメントをもらえるということが、僕にとってはとても大切なのです」

来る11月には、東京藝術大学時代の同級生である梅田智也さんと、東京文化会館でジョイント・リサイタルを行う。
「ピアノは1台でも音が多く、どうしても攻撃的になりがちなところ、それが2台になるのですから、弦楽器などと合わせる時とはまた違った難しさがあります。一方で、基本的な音色は同じ二つの楽器だけれど、タッチなどによって微妙に異なる音が重なりあった時の美しさは、2台ピアノならではだと思います。今度の公演では、それぞれのソロの他に、梅田くんとブラームスの『2台のためのソナタ』を演奏します。オーケストラのような立体的な響きを楽しんでいただけるのではないかと思います」
 この日は、2台のヤマハCFXでの演奏となる。今田さんにとって、理想的なピアノとはどんな楽器なのだろうか。
「全ての音域でバランスが整っていて、歌心のある楽器には魅かれます。ヤマハのCFXは、低音を支えるバスから高音の美しい部分まで一つの流れがあり、バランスがよくてナチュラル。演奏するにあたって、安心感があります。清潔で、気品ある優雅な音のキャラクターも好きです」

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今田篤さんへ “5”つの質問

※上記は2019年10月1日に掲載した情報です。