この記事は2016年4月1日に掲載しております。
鮮烈な個性の競演となった第17回ショパン国際ピアノコンクール。温かな包容力のある音楽で聴衆を魅了し、第2位(併せてソナタ賞)に輝いたシャルル・リシャール=アムランに、コンクールを振り返りながら、これまでの歩み、今後の抱負などを語っていただいた。
- pianist
シャルル・リシャール=アムラン - 2015年ショパン国際コンクール第2位。クリスチャン・ツィメルマンプライス(ソナタ.ベスト・パフォーマンス賞)を同時に受賞したシャルル・リシャール=アムラン。2014年モントリオール国際音楽コンクール第2位、ソウル国際音楽コンクール第3位、同時にベートーヴェンのソナタに対する特別賞受賞。2015年トロントのウーマンズ・ミュージカルクラブより、特別なキャリアアップ賞を受賞。ポール・サルドゥレスク, サラ・ライモン、ボリス・ベルマンに師事し、マックギル大学を2011年に卒業。2013年イエール大学でマスター課程を修了し、両大学から全面的な奨学金を受けた。現在モントリオール音楽院にて、アンドレ・ラプラントのもと研鑽を積んでいる。
2015年9月彼のファーストCD、ショパン後期の作品を収録したものがリリースされている。
これまでにワルシャワ・フィル、モントリオール・フィル、ソウル・フィル、イ・ムジチ・デ・モントリオール等と共演。
楽器と一体化して紡ぎだされる温かい音、謙虚で成熟度の高い演奏は、早期より世界中のメディアから絶賛されている。
※上記は2016年4月1日に掲載した情報です
第2位とソナタ賞は最高のシナリオ
2015年10月にワルシャワで開催された第17回ショパン国際ピアノコンクール。16歳から30歳までの個性あふれるコンテスタントたちが、それぞれのショパンへの想いを奏でる中で、透明感のある色彩豊かな音色でショパンの音楽が内包する人間の様々な情感を描き出すシャルル・リシャール=アムランの演奏は、聴く人々の心を強く惹きつけた。
「上位3位以内に入るなんて、思ってもいませんでした。ファイナル最終日にコンチェルトを弾き終わったのが午後6時、結果が発表されたのは7時間後の午前1時で、長い時間に感じられましたが、心は穏やかでした。“もうこれで充分。ここまで来たのは夢みたい。すでにコンサートのオファーは来ているし、僕の人生は大きく変わった”と思っていたのです。ガールフレンドと電話で、もしこれ以上望むなら、第2位とソナタ賞だねと話しました。そしてその通りの結果になって、とても幸せです」
10代の頃から頭角を現しているコンテスタントが多い中で、やや遅咲きの26歳。第2位という結果は、自分にとって最高のシナリオだと語る。
「大器晩成型(a late bloomer)とでも言ったらいいのでしょうか。国際コンクールに参加し始めたのも2014年からなんです。結果的に人生で3回参加した国際コンクール(モントリオール国際音楽コンクール、ソウル国際音楽コンクール、ショパン国際ピアノコンクール)すべてに入賞し、ラッキーだったと思います。第1位になれなくて残念だと言ってくださる方もいますが、僕にはまだ準備ができていませんでした。チョ・ソンジンさんはすでにキャリアもあり、優勝者ツアーをこなす実力を持っています。審査員は正しい判断をしたと思います。また、僕は生活の拠点はモントリオールに置き、ゆっくり学びながらピアニストとして成長していきたいと思っています。世界中を飛び回って年間に何百回もコンサートをするような生活は望んでいません」
とは言え、ショパンコンクールでの鮮烈な演奏は大きな注目を集め、コンクール直後から演奏会のオファーが押し寄せ、多忙な日々を送っている。
「少し戸惑っているんですよ。2016年は、すでに70回のコンサートが世界10ヶ国で予定されています。急にびっくりするような状況になっていますが、足元を見つめて堅実にピアニストとしての活動を展開していきたいと思います。
コンクールに入賞して一番うれしいのは、大きな自由を手に入れたことです。今まではどうしてもコンクールを意識して選曲せざるを得ませんでしたが、これからは自分の好きな作品を演奏できます。たとえばベートーヴェンの《ロンド》、エネスクの《古風な形式による組曲第2番》など、素敵な作品で大好きなのですが、コンクール向きではありませんよね。シューベルトやスクリャービンのソナタも……、もちろんショパンももっと弾きたいです」
※上記は2016年4月1日に掲載した情報です