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© Gregor Hohenberg
- pianist
クレア・フアンチ - クレア・フアンチは9歳で奨学金を得て、 コンサートやコンクール出場といった国際的なキャリアを築きはじめた。2011年のミュンヘン国際音楽コンクールに最年少で出場し、みごと第2位を獲得した。10代の後半になると、ピアニストは自身の天職であると強く感じるようになった。フィラデルフィアのカーティス音楽学校にて、エレナー・ソコロフやゲ イリー・グラフマンに師事し、有意義な指導を受けたのち、ハノーファー音楽演劇大学においてアリー・ヴァルディのもとで学んだ。そして2016年春より、 ヴァルディの助手を務めている。 2009年、ダルムシュタットで行われたショパン国際コンクール、並びに2010年、マイアミにおける同コンクールにて第1位に輝き、ショパンの音楽は彼女に芸術的飛躍のきっかけを与え続けている。また、幅広いレパートリーを弾きこなし、その中には多くの現代作品も含まれる。その多彩さは誰の目にも明らかだ。多数のソロ・リサイタルを行うほか、これまでにモーツァルテウム管、シュトゥットガルト放送響、ミュンヘン室内管、中国フィル、バンクーバー響、サンタフェ響、モスクワ放送響、イスタンブール国立響等の世界各地の一流オーケストラと、カーネギーホール、トーンハレ(チューリッヒ)、コンツェルトハウス ベルリン、ガスタイク(ミュンヘン)、ゲヴァントハウス(ライプツィヒ)、サル・コルトー(パリ)、王子ホール、ザ・シンフォニーホールといった世界有数の会場で共演している。また、キッシンゲンの夏音楽祭や、ヴェルビエ音楽祭、メニューイン音楽祭(グシュタート)、シュレースヴィヒ=ホルシュタイン音楽祭、ラインガウ音楽祭、MDR音楽祭、シュヴェツィンゲン音楽祭に招かれた。
チャイコフスキーとプロコフィエフの作品に焦点を当てた彼女のデビューアルバムは、2013年、ベルリン・クラシックスより発売され、絶賛を浴びた。2015年には、スカルラッティのソナタを収録したセカンド・アルバムが同レーベルから発売された。このアルバムでフアンチは555曲のソナタの中から39曲を選び、それらをバロック時代のソナタ組曲として収録をした。このような試みによって、彼女は音楽史を貫くスカルラッティの伝統を表現した。この録音は、ドイツレコード批評家賞に輝き、グラモフォン・マガジンの「エディターズ・チョイス」にも選ばれ、「これは最高水準のスカルラッティの芸術だ。(中略)神童と呼ばれた16歳から、偉大な芸術家の一人となった25歳までのフアンチの躍進を、我々は喜んで賞賛する。」と評された。
2018年5月、ウィーン放送交響楽団と上海で共演予定。
※上記は2017年10月24日に掲載した情報です。
Q1.自分で影響を受けたと思われるアーティストは?
指揮者のクラウディオ・アバドです。私は交響曲を聴くのが好きで、子どもの頃から彼が指揮した録音をたくさん聴いています。マルタ・アルゲリッチとのコンチェルトなども……。ドイツに来てからは生の演奏も何度か聴きました。緻密な解釈、色彩豊かな音楽表現に魅了され、大きな影響を受けました。ピアニストでは、グリゴリー・ソコロフですね。
Q2.ヤマハピアノに対するイメージと印象は?
大きい楽器でも小さい楽器でも、ヤマハのクオリティは高く、私の表現したいことに確実に応えてくれます。パワーと繊細さを兼ね備えた最高のピアノだと思います。コンクールやコンサートで、ステージにヤマハのピアノがあると、懐かしい友人に会ったような幸せな気持ちになります。
Q3.あなたにとってピアノとは?
私の人生そのものと言っていいでしょう。ピアノは自分自身を表現する唯一の手段です。
Q4.印象に残っているホールは?
ベルリンフィルハーモニーホールです。初めて演奏したのは2010年で、なんて大きなホールだろうと怖気づいたのを覚えています。自分がとても小さく感じられました。オーケストラとラフマニノフ《パガニーニの主題による狂詩曲》を演奏したのですが、ピアノを弾き始めると素晴らしい響きが広がって、恐れが喜びに変わりました。その後、ソロや室内楽で4回演奏していますが、私も年を重ねて経験を積んだので、ホールがそれほど大きいとは感じなくなりました。客席でも様々なコンサートを聴いていますから、今ではホールの特性がよくわかっています。今年の6月、オーボエとのデュオで演奏しましたが、温かく美しい響きに包まれて嬉しくなりました。
Q5.ピアノを学ぶ(楽しむ)方へのメッセージ。
私の経験から言えるのは、ピアノを毎日7時間も8時間も練習するような生活はしない方がいいということです。ピアニストを目指す若者にとって、最も大切なのは、広い視野を持ち、人間として豊かに成長することだと思うのです。人生を楽しみ、本を読んだり、美術館に行ったり……。様々な作品に触れることも大切です。現代作品や室内楽作品もたくさん演奏するといいでしょう。フォルテピアノやチェンバロなど、古楽器を弾くのもいいと思います。とにかく、小さな瓶の中に閉じこもるようにピアノを弾いていてはいけません。今のクラシック音楽界は淘汰が厳しく、次々にスターが生まれては消えていきます。何でも弾けるオールラウンドの演奏家が望まれる傾向にあるので、幅広く学び、視野を広げる必要があります。