この記事は2023年9月29日に掲載しております。
2023年7月に開催された第14回リヨン国際ピアノコンクールで史上最年少優勝を果たした八木大輔さん。慶應義塾大学文学部で美学美術史を専攻しながら、ピアニストとして活躍の場を広げています。これまでの歩み、今後の抱負などをうかがいました。
- pianist
八木大輔 - 2003年神奈川県生まれ。4歳より藤井麻衣子、6歳より石井理恵の両氏に手ほどきを受け、現在黒田亜樹、藤井一興、ヴィンツェンツォ バルツァーニの各氏に師事。またタチアナ ゼリクマン、ドミトリー バシキーロフの各氏にも指導を受ける。2017年5月、第7回ピアノタレント国際コンクールにて大賞および聴衆賞 受賞。同年10月第30回ポッツォーリ国際ピアノコンクールにおいて第3位、13歳で史上最年少入賞を果たす。2018年3月第4回スタインウェイコンクールin Japanにて大賞および聴衆賞受賞。同年5月チッタ・ディ・カントゥ国際ピアノ協奏曲コンクール古典派部門で第1位(最年少受賞)併せてベートーヴェン賞受賞。2019年6月、アンドレア・バルディ国際ピアノコンクールにて、史上最年少で第1位受賞。同年11月スポレート国際ピアノコンクールにて史上最年少で第1位受賞。2021年9月モツアルテ国際ピアノコンクール最上位(1位無し第2位)入賞。現在、慶應義塾大学文学部在学中。
シャネル・ピグマリオン・デイズ 2020-2022 参加アーティスト。
オフィシャルサイト
※上記は2023年9月29日に掲載した情報です。
いろいろなことに興味があって、それを探求するのが楽しい
2023年7月に開催された第14回リヨン国際ピアノコンクールでは、史上最年少優勝を果たした。
「大学の期末試験の時期で、課題のレポート提出のメールがたくさん来て、演奏が終わるとそれを片付けるという感じで、とにかく目の前のことをこなすのに精一杯だったせいか、あまり緊張せずに本番に臨めたのかもしれません。ホームステイしたお宅には、8歳、6歳、3歳の男の子がいて、彼らが騒いでいるリビングルームのアップライトピアノで練習し、お母さんが作ってくれるご飯を食べ、フランス語を話す練習にもなったし、楽しかったですね。リヨンは、歴史的な建造物が多く、川が流れる緑豊かな美しい街で、人々も気さくで優しく、いろいろ大変でしたが、素敵な思い出ばかりです」
音楽高校・音楽大学には進まず、慶應義塾高校から慶應義塾大学文学部に入学し、美学美術史を専攻している。好奇心旺盛で、数学、物理、哲学、文学、社会学などを探求するのが楽しいと語る。語学も大好きで、英語、フランス語、イタリア語、ドイツ語などを学んでいる。
「高校では、スポーツ、芸術、学問、いろいろな分野に秀でた友人をつくることができました。先生にも恵まれて数学が大好きになり、卒業研究は相対性理論に取り組み、ブラックホールの数式を解明することに没頭しました。
今後の方向性については、今、ちょっと悩んでいるところなんです。ピアノを含めていろいろなことに興味があって、それを探求するのが楽しい。語学も好きで、会話ができたらうれしいし、海外の文献が読めるのもいいなと思います。フランスの放送局の文献は、英語の文献にはないクラシック音楽の最新の情報が含まれているので、興味深く読んでいます。クラシック音楽と言語の関係は密接で、バッハやベートーヴェンを弾くには、ドイツ語の抑揚やニュアンスを知っていた方がわかりやすいですよね。
最近、アレクサンダー・ガジェヴさんのレッスンを受けて、親しくしているのですが、数学、物理、文学、哲学などに興味があるところに共通項があって、レッスンの後に一緒に方程式を解いて、「これが人生だ!」と盛り上がったり……。
自分の興味が持てるものを大切にしていく、何よりも幸せに生きることが大事だなと思っています。留学も含めて、今後のことを考える時期になっていますが、ピアノは自分を映し出す鏡、喜びを与えてくれる存在だということには間違いがないので、ずっと弾き続けていきたいと思います」