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Q1.自分で影響を受けたと思われるアーティストは？

　たくさんいますが、子供の頃はリヒテルですね。小学1年生のときだったと思います。日比谷公会堂でムソルグスキー《展覧会の絵》を聴きました。ステージに現れて、椅子に座った瞬間に音が出たのが忘れられません。子供心にも、この人は凄いピアニストだとすぐにわかりました。とにかくびっくりしました。私が飛び上がって拍手をしていたと母が言っています。
　大人になってから影響を受けているのは、イギリスのピアニストたちです。私の音楽家としての姿勢、演奏、すべてにわたって彼らから大きな影響を受けています。とくにデュオを組んでいるキャサリン・ストット、大好きなピーター・ドノホー、マーティン・ロスコー、私の同僚でもあり上司でもあるローナン・オホラ……、それぞれに味があり、考え方も違うのですが、彼らからはいつも様々なことを学んでいます。

Q2.ヤマハピアノに対するイメージと印象は？

　私はヤマハピアノを弾いて育ちました。子供の頃、「桐朋学園子供のための音楽教室」の広島分校で演奏会があって、毎年広島に行って演奏していたのですが、移動の車中で浜松の駅に近づくと、ヤマハのピアノの材料になる木材が干してあるのが見えて、あれがピアノになるんだ! と、ワクワクしながら見ていました。
　ヤマハCFXは音が温かく豊かに鳴って、安定感があると思います。7月7日にヤマハホールで弾かせていただくのを楽しみにしています。

Q3.あなたにとってピアノとは？

切っても切れない関係、私の姿を映し出すものですね。

Q4.印象に残っているホールは？

　これもたくさんありますが、音楽ホールとして「やはりここは凄い!」と思ったのは、モスクワ音楽院チャィコフスキー大ホールですね。
　イランやサウジアラビアなどイスラム圏での演奏会のホールも、印象に残っています。イランのバフダッド・ホールでの演奏会はとくに忘れられません。クラシック音楽のコンサートはなかなか開催できない場所で、現地のオーケストラとモーツァルトのコンチェルトを弾きました。女性がステージで顔を見せるのもタブーな国で、日本大使館主催の日本文化週間のイベントだったので実現したのですが、現地の聴衆の方たちが熱狂的に駆けつけてくださって、ステージ上で男女が触れ合ってはいけないので、指揮者の方と握手もできませんでしたが、舞台袖に戻って抱き合いました。それほど感動的なコンサートだったのです。ヴァイオリンの音が、すすり泣いているようでした。

Q5.ピアノを学ぶ（楽しむ）方へのメッセージ。

　ピアノの学び方はいろいろあって、アマチュアの愛好者の方たちには、ピアノに親しみ、ぜひ長く続けていただきたいと思います。プロを目指して勉強している方たちに申し上げたいことは、作曲家がもがき苦しみ、なんとかメッセージを伝えようと楽譜に残したものを、私たちは理解し、音で表現しなければならないということです。今、私たちが手にする楽譜は、美しく印刷されたものなので、作曲家が髪の毛をかきむしりながら一つひとつの音符を書いたという実感がありませんが、たとえば、ベートーヴェンはスフォルツァンドを毎小節に書いたりしています。印刷された楽譜を見ると鈍感になって、そのスフォルツァンドにベートーヴェンがどんな想いを込めたのかに気づかなくなっているようです。楽譜は作曲家が私たちを信じて、想いを託して書いてくれた手紙のようなものなので、それを一生懸命音にしていくことが大切なのではないかと思います。