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清水 和音 氏(Shimizu Kazune) ピアニストが決定的に他の楽器と違うのは本番で自分の楽器を弾けないことなんだ。 この記事は2010年8月17日に掲載しております。

来年はデビュー30周年を迎える清水和音氏。様々な記念プロジェクトの準備が進行中。
この取材の最中は撮影カメラマンと写真談議が白熱、とうとうその場でカメラを借りてピアノの撮影まで始めてしまわれたほどのカメラ好き。Nikonをこよなく愛され、その理由として「本当に好きな人達が真剣に本気で作っているというのが伝わってくるから」と。音楽とは無関係と言われますが、その情熱の引き出しを少しだけ見せていただきました。

Profile

pianist 清水 和音

pianist
清水 和音
1981年、弱冠20歳で、パリのロン=ティボー国際コンクール・ピアノ部門で優勝、あわせてリサイタル賞を受賞した。1982年、N響と初共演、また、デビュー・リサイタルを開き、高い評価を得た。1983年「プラハの春音楽祭」にて、プラハ室内管と共演。1984年、ブラティスラヴァ音楽祭のオープニングでスロヴァキア・フィルと共演。1986年、ロジェストヴェンスキー指揮ロンドン響と共演し、ロンドン・デビュー、また、M.T.トーマスとの共演でレコーディングを行った。1990年にオーストリア放響と、1991年にはレニングラード・フィル室内オーケストラと共演するなど、国内外で広く活躍している。
1995年秋から2年にわたって紀尾井ホールで行われた、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ全32曲演奏会は、その完成度を新聞紙上で高く評価され、ライヴ録音がリリースされている。
2002年5月、ジャナンドレア・ノセダ率いるキーロフ歌劇場フィルハーモニー管弦楽団とサンクトペテルブルク及び日本で共演。
2004年からショパンの全曲録音を開始、これまでにオクタビア・レコードから5枚のCDをリリース。いずれも高い評価を受けている。2005年1月アシュケナージ指揮NHK交響楽団と共演。アシュケナージから最大級の賛辞を贈られた。2006年1月ゲルギエフ指揮マリンスキー歌劇場管と共演。2007年6月NHK交響楽団定期演奏会にてアシュケナージと再共演。また、アシュケナージ指揮シドニー交響楽団定期演奏会に出演。
完璧なまでの高い技巧と美しい弱音、豊かな音楽性を兼ね備えたピアニストである。
※上記は2010年8月17日に掲載した情報です

うちはねNikonしか買わないの

おじいちゃんの代からね。僕が初めて買ったのはF3。触った瞬間から「これは違う!」と思った。中学生の時からの趣味です。葉っぱを撮るのが好きでね。一枚一枚・・・だからマクロレンズだけあればいいの。プロのカメラマンは出来上がりが重要だけど、僕はカメラに触っているだけでいいの、もう幸せ!
えっ?ピアノとカメラの共通点?ない、ない!(きっぱり)オーディオも大好きです。ヤマハもいっぱい持ってるよ(笑)。アンプなんか4台あるから・・・クラシック音楽以外は全く聴かない。興味もないし。

最初にピアノに出逢った記憶はない。

うちのおやじがちょっとピアノを教えていたのでもの心ついた時から楽器は身近にあった。
気が付いたら弾いていたと言う感じかな。ジュネーブに留学して、ロン=ティボー(*)受けて、さっさと日本に帰ってきた。あの頃、スイス・フランがやたら高かったから生活も大変だったし。僕は日本人だから日本を拠点に活動するのは当たり前だと思ってた。強い意志を持って海外で花開かせようなんて微塵も考えなかったね。(笑)第一、日本はインフラがものすごく整っていて楽器もホールも世界最高じゃない?コンサートの数も半端じゃないし、こんな環境をわざわざ無視する必要ないよね。

(*)ロン=ティボー国際コンクールのこと。清水氏は1981年に優勝。

なぜピアノだったのか?

成り行きだね。子供の頃からたまたまやってきて、真剣に進路を考えなくちゃいけない時期になって、大学にいく偏差値もない、自分に出来ることの中でピアノが突出していたから。ただそれだけ。迷いなんかない。でもね、やらなくていいんだったら、何にもやりたくない。これって人間の本音だよね。家族養って食べていかなきゃならないし・・・

僕はなぜか音楽家達に人気があるの。

一般聴衆、お客さん達よりあるかも(笑)。だから室内楽もよくやるよ。僕にとってはソロと違ってストレスが全然ないしね。なぜって、譜面見ながら弾けるから!暗譜するくらいまでやるのと、譜面があって弾くのとでは全然違う。それに僕は大抵の人とは一緒にやれるかな。変な人は別だけど・・・あっ僕の方が変かな?

ピアニストって普通は子供の頃から一人で弾くことしかやってこないじゃない?弦楽器の人たちは違うね。必ずピアノ伴奏が一緒だから人の音や演奏に耳を傾ける習慣が小さいころ頃から身についている。無伴奏の曲もあるけれど、普通は必ず誰かと一緒にやる。これは室内楽の醍醐味だと思う。ピアノ以外の楽器をやってみたいかって?全くない。

ピアノが他の楽器と決定的に違うのは

本番で自分の楽器で弾けないこと。たまに自分の楽器をホール会場に運んじゃうピアニストもいるけれど、世界中どこ探したって日本くらい環境が整っていてそれなりのピアノを持っているホールばかりの国ってないと思うよ。
もちろん調律師の存在は大きい。信頼できる確かな技術を持った調律師がいればこそ、僕らは安心してそこのピアノに向かえるわけだから。ここには拘る。

ホールとピアノの関係も大きい。

世界的に見てもいいホールにはいいピアノが置いてある。ピアノがよく鳴るのはホールもいいんだ。弦楽器を弾く人達は新しい楽器を手に入れたら、最初はいい弓で弾きこむとか、上手い人に弾いてもらったりするじゃない?エイジンングって重要だよ。ピアノも同じだよね。ピアノもいいホールでいい奏者に弾きこんでもらうとどんどん相乗効果でよくなると思うよ。がんばれ、新ヤマハホール!(笑)期待しているよ。

清水 和音 へ “5”つの質問

※上記は2010年8月17日に掲載した情報です