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© Takaaki Hiratra
- pianist
佐藤 卓史 - 4歳よりピアノを始める。2001年第70回日本音楽コンクールピアノ部門第1位、併せて野村賞、井口賞、河合賞、三宅賞を受賞。03年秋田市文化選奨を受賞。翌年には史上最年少で第30回日本ショパン協会賞を受賞した。07年第11回シューベルト国際コンクールで第1位並びに特別賞を受賞。10年エリザベート王妃国際コンクール入賞。11年には第21回カントゥ国際コンクール(クラシック部門)で優勝し、12年11月の第8回浜松国際ピアノコンクールにおいても第3位および室内楽賞を受賞した。これまでに都響、東京フィル、東響、ミュンヘン室内管、シドニー響、ベルギー国立管等の公演に出演。室内楽奏者としても活躍しており、篠崎史紀、堀米ゆず子、大谷康子、山崎伸子、藤森亮一、澤和樹、佐藤俊介、カール・ライスター、山本貴志、米元響子などと共演している。最近では、ジョナサン・ノット指揮/東京交響楽団音楽監督就任披露演奏会、ユベール・スダーン指揮/広島交響楽団定期演奏会、現田茂夫指揮/NHK交響楽団地方公演に出演。録音においても多くのCDをリリースし、いずれも高い評価を得ている。なかでも佐藤俊介との共演によるCD「グリーグ:ヴァイオリン・ソナタ集」(ナミ・レコード)は平成19年度文化庁芸術祭レコード部門《大賞》を受賞した。2014年より、シューベルトのピアノ関連器楽曲全曲演奏プロジェクト「佐藤卓史シューベルトツィクルス」を展開中。内外のアーティストから厚い信頼を寄せられ、今後の活躍が期待されるピアニストである。
BS ジャパン 「おんがく交差点」出演/毎週木曜23:00~23:30
▶佐藤卓史 公式ウェブサイト
※上記は2018年2月22日に掲載した情報です。
Q1.自分で影響を受けたと思われるアーティストは?
アルトゥール・ルービンシュタインと、ミエチスラフ・ホルショフスキ。どちらも実演に接する機会はなく、録音を通して知った巨匠ですが、他の奏者とのアンサンブルに積極的に取り組む姿勢、生涯現役を貫き、年を経るにつれ「円熟」というよりむしろ更なる「成長」や「進歩」が聴き取れることなど、私の人生の指針になっている二人です。何よりもその温かく美しい音は、何度聴き返してもうっとりするばかりです。
Q2.ヤマハピアノに対するイメージと印象は?
アクションの安定性、どんなに強奏しても決して音が割れない強靱さは、世界中どのヤマハピアノにも共通していて、特に外国でヤマハに出会うと「馴染みの兄貴分」に再会したような安心感があります。最新のCFXは、加えて軽やかで色彩的な音色、機動性が高く敏捷なメカニックを兼ね備えており、モダンピアノの最高峰、到達点といっていいと思います。変な話ですが、他のピアノでは難しくて弾けなかったのにCFXでなら弾けた、という経験が何度かあります。
Q3.あなたにとってピアノとは?
基本的には「頭の中で鳴っている音楽を表現する手段」「現実化するための道具」だと思っているのですが、特に良いピアノや古いピアノを演奏すると、楽器から教えられることがとても多く、「先生」というのが一番近いかもしれません。
Q4.印象に残っているホールは?
故郷秋田のアトリオン音楽ホール。内壁に秋田杉を使用した響きの豊かなホールです。発表会やコンクールで何度となくステージに立っただけでなく、開館以来世界の一流のアーティストの来演を間近で聴くことができました。私の中では、アトリオンの響きが「理想的・スタンダードな音響像」として脳にインプットされていて、たびたび訪れては懐かしく再確認するとともに、こどもの頃から弾いているからこそ、舞台に立つのに最も緊張するホールでもあります。
Q5.ピアノを学ぶ(楽しむ)方へのメッセージ。
とにかく「実演に接すること」をお勧めします。今は世の中に大量の音源があり、YouTubeなどで気軽に聴くこともできて、私も喜んで利用しているのですが、録音と生演奏では、受け取れる情報量に白黒とカラーほどの違いがあると思います。前にもお話ししたように、私が小学校1年生のときに地元にコンサートホールができて、そこでさまざまな演奏家の実演に触れることができました。まるで音が天から降ってくるような体験、客席の後方に座っていても近くでささやいているように聞こえる歌声、鍵盤に触れる前にふっと全神経を集中させる瞬間、白熱してきたときの息づかい、そして客席の期待に満ちた雰囲気。そういった、「ライヴでしか得られない体験」が私の音楽家としてのベースにあるように思うのです。特に音楽を志す人、学ぶ人たちには、できるだけ多くコンサートホールに足を運んで、自分だけの音楽体験を蓄えていって欲しい。それがあなたの音楽人生を支えてくれる糧になると思います。