第3回：進藤 実優(モスクワ音楽院付属中央音楽学校) 、 橋本崚平（東京藝術大学)

今年から始まった若きピアニスト達によるコンサートシリーズ「ネクスト・ヴィルトゥオーゾ・ピアノリサイタル」ですが、新型コロナウィルス感染拡大の影響で第2回を終えたところで一時中断。12月21日に約10か月振りに第3回目が行われ、進藤実優さん、橋本崚平さんのお二人が出演しました。

最初に登場した進藤さんは、今年生誕250周年を迎えたベートーヴェンのピアノソナタ第8番「悲愴」から演奏をスタート。冒頭一音目の和音を重々しく、かつ叫びにも似た感情を乗せて轟かせて序奏を終えると、正確なインテンポで刻む激しいパッセージが聴き手の鼓動をどんどんと高めるような空気感で第一楽章を締めくくります。抒情的な調べの第二楽章では、ヤマハCFXから紡ぎだされた木のぬくもりを感じるような温かな音色に会場全体が癒されるかのような空気が広がりました。ロンド形式で再びテンポを上げた第三楽章でも進藤さんの集中力は益々引き締まり、颯爽と駆け抜けました。

その後はショパンの作品へ。ピアニスティックで優美なノクターンOp.15-2、雄大な調べのスケルツォ第2番を同じ楽器とは思えないような音色の変化で表現した後は、マズルカ風ロンドでは郷愁を誘うような世界観を展開。バラード第一番では進藤さんの高い技巧にヤマハCFXの鍵盤アクションが機敏に反応し、調性の変化にもドラマティックな表現力で応えていきます。劇的なコーダを圧倒的な説得力を持って弾き切ると、客席からは大喝采が止みませんでした。

その後はショパンの後期作品の傑作、幻想ポロネーズへ。冒頭のダイナミックな和音から続くアルペジオではピアノの持つ豊かな倍音が会場内にじんわりと漂うかのような、まさに「幻想的」な響きが印象的。ポロネーズの引き締まったリズムの中で目まぐるしく繰り返す転調、終盤に向けて加速するダイナミクスにも橋本さんの集中力はますます研ぎ澄まされるように高まり、どこまでも響き続けるような輝かしい和音で最後を締めくくります。最後はスクリャービンのピアノソナタ第4番。浮遊感たっぷりの第一楽章をヤマハCFXの弱音の美しさの中で作り上げると、アタッカで突入した第二楽章では要求される高い技巧を決して表に強調せず、リズミカルな曲調をごく自然に、かつ壮大に表現していたのが印象的でした。演奏を終えると会場からは惜しみない拍手が続きました。

進藤さんは「ヤマハCFXはとても弾きやすく、リハーサルから本番にかけてどんどん楽器になじんでいけました」、橋本さんは「ヤマハCFXは優しいタッチの中で沢山表現でき、よく反応してくれるピアノで、事前の練習段階から弾くのが楽しいピアノでした」とそれぞれ終演後に感想を述べられました。


新型コロナウィルス感染拡大によって演奏活動にも大きな影響を受けたお二人が、久々に人前で演奏をする喜びを感じた、思い出に残る一夜となりました。