第4回:竹澤勇人(桐朋学園大学ソリスト・ディプロマコース)、黒木雪音(昭和音楽大学ピアノ演奏家コース)
2020年からスタートした若き才能あふれるピアニストたちによるコンサートシリーズ「ネクスト・ヴィルトゥオーゾ ピアノリサイタル」。2021年3月16日に開催された第4回には、竹澤勇人さんと黒木雪音さんが出演しました。
前半は、竹澤勇人さんのステージ。ベートーヴェン《ピアノ・ソナタ第14番「月光」》第1楽章の冒頭の分散和音が透明感のある音色で奏でられ、静謐な空間の中にテーマの旋律が現れて幻想的な世界が描き出されていきます。続く第2楽章では温かなユーモアを感じさせ、第3楽章では溜めていたエネルギーを解き放つかのように情熱的な演奏が繰り広げられました。
2曲目は、フレッド・ハーシュ《バラード》。現代最高峰の「ピアノの詩人」と称されるジャズ・ピアニストの洗練されたメロディとハーモニーが会場を満たし、幽玄な世界に誘われました。
最後は19世紀の「ピアノの詩人」、ショパンの最高傑作《バラード第4番》。ためらいながら囁くような序奏から始まり、表情豊かにテーマが展開されていきます。陰影に富んだ曲想が、ヤマハCFXの繊細なニュアンスに富んだ音色でドラマティックに紡ぎ出され、聴衆を深い感動で包みました。
アンコールは、サプライズのビートルズ《イエスタデイ》。ジャズ・ピアニストのデヴィッド・ヘイゼルタインのアレンジに竹澤さんの自在なアドリブが加えられ、ファンタジーあふれる音楽を楽しませてくれました。
後半のステージには、黒木雪音さんが登場。リスト《愛の夢》を清々しい抒情を湛えて爽やかに聴かせ、続くバッハ=ブゾーニ《シャコンヌ》では、ヤマハCFXから荘厳な響きを引き出し、緻密な構成力でスケールの大きな演奏を繰り広げました。
終曲はラフマニノフ《ピアノ・ソナタ 第2番》。第1楽章冒頭の鮮烈なテーマを充実した音色で力強く奏で、哀愁に満ちた曲想がみずみずしく展開されていきます。内省的な美しさを秘めた第2楽章からアタッカで切れ目なく入った第3楽章では、精巧なテクニックで多彩な音色を駆使し、ロシアの大地を感じさせる壮大な音楽世界を構築しました。
終演後、竹澤さんは「ベートーヴェンとショパンという偉大な作曲家のまったく違う世界を、F.ハーシュの《バラード》で繋ぐプログラムを聴いていただきました。ヤマハCFXは、サロンコンサートに適した芳醇な音色を生み出し、それぞれの作曲家の世界を鮮やかに描き分けることができました。これは、私にとって稀有な体験でした。コロナ禍の日々、音楽家の存在意義とは?と自身に問い続けながら、SNSやYouTubeなどに演奏の動画を上げることはせず、生の演奏を聴いていただくことに価値を見出したいと考えてきました。音楽の喜びを聴衆の皆様と共有しながら、社会に貢献していくことができればいいなと思います」と語り、黒木さんは「この3月で東日本大震災から10年。亡くなった方たちへの追悼と祈りを込めてリスト《愛の夢》、バッハ=ブゾーニ《シャコンヌ》を演奏させていただきました。ラフマニノフ《ピアノ・ソナタ第2番》は、長年憧れの曲だったのですが、あまり早く弾くとラフマニノフに怒られてしまうような気がして、構成や音色について理解してから弾きたいと思っていました。3月20日に大学の卒業式を迎えるという節目に、この作品に取り組み、聴いていただくことができて幸せです。ヤマハCFXは音色が豊かで、ダイナミック・レンジが無限に感じられ、繊細なピアニッシモ、軽やかな音、さまざまなフォルテ……、自由に楽曲のイメージを膨らませることができ、もっと弾いていたいと思いました」と語ってくださいました。
真摯に作品に向き合い、自身の音楽を追求している次代のヴィルトゥオーゾたちの今後の活躍が期待されます。
会場 | ヤマハ銀座コンサートサロン(ヤマハ銀座ビル 6F) |
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日時 | 2021年3月16日(火)18:30開演 (18:00開場) |
演奏者/曲目 | ■竹澤勇人 ■黒木雪音 ※都合により曲目が変更になる場合がございます。 |
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チケットご予約受付を終了しました。 2021年3月5日(金)
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上記は2021年2月19日現在の情報です