ソヌ・イェゴン氏、リリシズムあふれるシューマンのコンチェルト
2016年3月13日(日立システムズホール仙台)
第5回仙台国際音楽コンクールピアノ部門 (2013年)で優勝に輝き、国際的な活躍を続けている韓国出身のピアニスト、ソヌ・イェゴン氏が、第6回仙台国際音楽コンクール開催記念コンサート「コンクールへの前奏曲~3人のソリストが誘(いざな)う協奏曲の世界~」に出演。海老原光氏指揮・仙台フィルハーモニー交響楽団との協演で、シューマン《ピアノ協奏曲イ短調》を披露しました。
■プログラム
プロコフィエフ : ヴァイオリン協奏曲第1番ニ長調 op.19 (リチャード・リン)
シューマン : ピアノ協奏曲イ短調 op.54 (ソヌ・イェゴン)
メンデルスゾーン : ヴァイオリン協奏曲ホ短調 op.64 (有希マヌエラ・ヤンケ)
3年前のコンクールの思い出が詰まったステージに、清々しい表情で登場したソヌ・イェゴン氏。第1楽章の冒頭、オーケストラの華やかなトゥッティにピアノが鮮烈なパッセージで応え、情熱的な序奏部が瑞々しく描き出されていきます。さらに、オーボエが奏でるロマンティックな旋律にピアノが美しく絡みながら幻想的な展開部へと発展し、カデンツァでは、ヤマハCFXから色彩感あふれる音色を引き出し、若き日のシューマンの想いを生き生きと表現しました。そして、弦楽器パートとピアノの掛け合いで、愛らしいテーマが優雅に奏されるチャーミングな第2楽章を経て、第3楽章では、爽快なピアニズムを発揮し、
ヤマハCFXの重厚な低音から煌めくような高音まで、あらゆる音域を豊かに鳴らしてドラマティックな演奏を繰り広げ、聴衆を感動の渦に巻き込みました。鳴りやまない拍手に応えて、アンコールはリスト《コンソレーション第3番》。天から降り注ぐような透明感のあるピアノの響きが会場を満たし、詩情豊かな音楽でステージを締めくくりました。
終演後、疲れも見せずにインタビューに応じてくださったソヌ氏は、「仙台に戻って演奏することができて幸せです。3年前のコンクールで優勝して以来、何回かコンサートのために訪れていますが、仙台の聴衆の皆さんはいつも僕を温かく迎えてくれます。シューマンのコンチェルトは今回初めて弾いたのですが、コンクールのときと同様、仙台フィルハーモニー交響楽団の方たちが僕の気持ちを理解し、表現したいことのすべてを自由に表現させてくれました。ヤマハCFXも、多彩な音色で僕の演奏をサポートしてくれました。昨年、ドイツのコンクールで優勝して以来、ヨーロッパやロシアでの演奏機会が増え、ヴェルヴィエ音楽祭でのリサイタル、マリインスキー劇場でのクララ・ジュミ・カン(バイオリン)とのデュオなど、素晴らしい経験を積み重ねています。今年の秋からは、ヨーロッパに移ってドイツ作品などをしっかり勉強したいと考えています。実は僕が一番好きな作曲家はシューベルトなんです。内省的な音楽に惹かれます。5月にギルモア・ホールでオール・シューベルト・プログラムのリサイタルが予定されているんですよ。パリでダンサーとのコラボレーションでショパン《24の前奏曲》を演奏したり……、楽しみなコンサートが続きます。学び続け、成長していきたいと思います」と語ってくださいました。進化し続ける未来の巨匠の今後の活躍が楽しみです。
Text by 森岡 葉