若手ピアニスト3名がそれぞれの個性を発揮して多彩なプログラムを披露
「PIANO JOINT CONCERT」
2025年2月21日(新潟市民芸術文化会館 りゅーとぴあ)
新潟市民芸術文化会館 りゅーとぴあにて、稲垣汐音さん、上坂哲生さん、黒木雪音さんがジョイントコンサートを開催。これから活躍が大いに期待される若手ピアニスト3名が、熱い演奏を披露してくれました。
今回のジョイントコンサートは、新潟県出身のピアニストも出演するとあって、地元からエールを送るお客さまが多く来場されました。また、ヤマハ音楽教室で学ぶ小学生や出演者の出身高校の後輩たちの姿もあり、バラエティに富んだプログラムを眺めながら開演を待ちわびていました。
✦———公演プログラム————————————————✦
第1部
稲垣汐音
ラヴェル:「夜のガスパール」より オンディーヌ、スカルボ
上坂哲生
シューベルト:ピアノ・ソナタ第13番 イ長調 D664 Op.120
ショパン:プレリュード Op.28より 第21~24番
第2部
黒木雪音
ショパン:ノクターン ロ長調 Op.32-1
ショパン:スケルツォ 第3番 嬰ハ短調 Op.39
ドビュッシー:月の光
リスト:超絶技巧練習曲より 第8番 「狩」
バッハ=ブゾーニ:シャコンヌ
アンコール
カプースチン:8つの演奏会用練習曲Op.40-1「プレリュード」
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最初に登場したのは、稲垣汐音さん。新潟明訓高等学校を卒業後、昭和音楽大学ピアノ演奏家コースに進学し研鑽を積んでいます。
落ち着いた面持ちでピアノの前に座り、天を仰いで集中力を高めて演奏をスタート。「夜のガスパールより《オンディーヌ》」は、透きとおった水が流れるようなアルペジオが印象的です。夢見心地でありつつも冷静さを保ち、終盤は冴え渡る緊張感で会場を包みました。
続く《スカルボ》は、聴衆をどこか不可解な世界へと引き込んでいきます。細かなパッセージはスピード感があり、CFXの低音の重厚さを活かした演奏は見事。さまざまな展開を自然につなぎながら、捉えどころのない作品をしっかりと見据え、色彩豊かな音色を聴かせてくれました。
2人目の演奏者は、新潟中央高等学校出身の上坂哲生さん。稲垣さんと同じく、昭和音楽大学ピアノ演奏家コースに在学中です。
シューベルト「ピアノ・ソナタ第13番」のメロディを優しく力強く歌う上坂さんは、自身が奏でるCFXの音に耳をすませ、その音色を確かめながら演奏を進めている様子。軽やかなタッチから繰り出される音は、可憐な響きに満ちていました。
次に、ショパン「プレリュードOp.28より《第21番》~《第24番》」を続けて披露しました。1曲目とは打って変わってドラマティックな展開をみせ、その激しさに聴衆がたじろぐ場面も。
最終曲は、CFXの生き生きとした音色で情熱的な旋律をつづり、ラストは迫力の低音3つを重々しく轟かせました。
休憩後に登場したのは、世界各国で演奏活動を行う黒木雪音さん。稲垣さんや上坂さんにとっては、昭和音楽大学での先輩にあたります。
にこやかに登場した黒木さんは、最初の1音で聴衆を魅了。ショパン「ノクターン第9番」をうっとりする音色で奏でます。続く「スケルツォ第3番」は息づかいも激しく、黒木さんの意思がはっきりと伝わってきました。正確無比なパッセージが一気に走り抜けて演奏が終わると、拍手喝采!「すごい!」と感嘆の声をもらす聴衆の姿がありました。
その後は、リスト「超絶技巧練習曲より第8番《狩》」で高度なテクニックを披露。ドビュッシー「月の光」ではひとつひとつの音を丁寧につむぎ、会場を柔らかな光で包むような演奏を聴かせてくれました。
そしてプログラムの最後は、バッハ=ブゾーニ「シャコンヌ」。黒木さんは改めて気持ちを整え、整然としたフォルテや繊細なピアニシモを奏でます。ダイナミクスの幅広さはもちろん、CFXの多彩な音色を駆使してさまざまな表情をみせ、最後の鬼気迫る演奏には誰もが圧倒されました。
万雷の拍手に応えてのアンコールは、カプースチン「8つの演奏会用練習曲Op.40-1《プレリュード》」。躍動感あふれる小気味よい音楽が飛び出し、前曲とのギャップや黒木さんの引き出しの多さに聴衆が驚嘆したところで、閉幕となりました。
終演後、出演者のみなさんに感想をうかがいました。
稲垣汐音さん
「「りゅーとぴあ」は、小さいころから何度も演奏している思い出の会場ですが、今回はCFXを特別に入れていただき、新鮮な気持ちで演奏しました。今日のピアノは音に立体感があり、そのおかげか作品の世界に入ることができました。お客さまも温かく迎えてくださり、とても幸せでした。」
上坂哲生さん
「とても楽しく演奏することができました。今日のCFXは非常に響きが良く、会場の残響と相まって音が輝いてくれたので、その音をお客さまにお届けすることができて本当に良かったです。また、僕自身は演奏中にいろいろなことを試すことができたので、興味深い演奏会になりました。」
黒木雪音さん
「新潟で演奏するのは初めてなので、楽しみにしていました。今日のお客さまは、1曲目から真剣に聴いてくださっていると感じました。CFXの美しい弱音や力強い音を奏でることができ、自分の描きたい世界を展開できたので、これからもっともっと他の作品も弾きたいという意欲がわいてきました。」
Text by 鬼木玲子、写真:武藤章