コンサートレポート

コンサートレポート

さまざまなコンクールで結果を出してきた成長著しいピアニスト3名が集結
「PIANO JOINT CONCERT」

2025年3月1日(ヤマハ銀座コンサートサロン)

 ヤマハ銀座コンサートサロンにて、米田彩乃さん、上坂哲生さん、鎌田紗綾さんがジョイントコンサートを開催。昭和音楽大学附属ピアノアートアカデミーで研鑽を積む3名が、それぞれに高い音楽性を発揮しました。

✦———公演プログラム————————————————✦
米田彩乃
ラモー:クラヴサン曲集と運指法 第1番(第2組曲)鳥のさえずり
    新クラヴサン組曲集 第2番(第5組曲)未開人
リスト:死の舞踏(サン=サーンス)S.555 R.240
ホロヴィッツ:ビゼーのカルメンの主題による変奏曲(1968年)
ショパン:アンダンテ・スピアナートと華麗な大ポロネーズ 変ホ長調 Op.22

上坂哲生
シューベルト:ソナタ第13番 イ長調 D664
ショパン:ノクターン 変ニ長調 Op.27-2
     スケルツォ第3番 嬰ハ短調 Op.39

鎌田紗綾
ショパン:ノクターン 嬰へ短調 Op.48-2
     スケルツォ第2番 変ロ短調 Op.31
     幻想ポロネーズ 変イ長調 Op.61
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 3月に入り春めいてきた週末の午後、ヤマハ銀座コンサートサロンにはクラシック愛好家の方々が多く集い、会場は満席となりました。
一人目の演奏者は、米田彩乃さん。小学生のころから昭和音楽大学附属ピアノアートアカデミーに在籍し、数多くのコンクールで優秀な結果をおさめてきました。
 15歳のピアニストは、少し緊張しながらも笑みをたたえて登場し、軽やかなタッチを披露しました。今回、4人の作曲家の作品を並べた米田さん。楽曲それぞれの個性を際立たせ、30分以上のプログラムを最後まで丁寧に演奏しました。とくに、リスト「死の舞踏」では輪郭がはっきりとした音をつづり、CFXの豊かな低音を活かして特徴的なリズムを打ち出し、歌心にあふれた悲哀のメロディで聴衆を魅了しました。

 次に登場した上坂哲生さんは、昭和音楽大学の2年生。同附属ピアノアートアカデミーにも在籍し、さまざまなコンクールで入賞を果たすほか、オーケストラとの共演や韓国での演奏など幅広く活躍しています。
 シューベルト「ソナタ第13番」は森羅万象を感じさせるナチュラルな演奏で、イ長調の柔らかな色彩を見事に描きました。続くショパン「ノクターンOp.27-2」はCFXの艶やかな音色で旋律を優美に歌い、幻想的な雰囲気に聴衆は夢見心地に。また、「スケルツォ第3番」では決して鋭くない角のとれた、それでいて勢いのあるフォルテを奏で、躍動感に満ちた充実の音楽を聴かせてくれました。

 この日トリを務めたのは、鎌田紗綾さん。昭和音楽大学2年生で、同附属ピアノアートアカデミーに在籍しています。第2回ショパン国際ピリオド楽器コンクールでは、日本人で唯一セミファイナルへ進出。ショパンの生家でのリサイタルも経験されています。
 鎌田さんのプログラムは、オールショパン。「ノクターンOp.48-2」はフレーズの始まりと終わりを明確にして、たっぷりと歌いあげます。「スケルツォ第2番」では緻密なパッセージを明瞭に奏で、思いを解き放った情熱的な演奏を披露しました。そして、最後を飾ったのは「幻想ポロネーズ」。CFXから繰り出されるトリルの響きが心地よく広がり、間を取りながら歌う物憂げなメロディは余白を感じさせ、みなぎる緊張感で聴衆を惹きつけていました。

終演後、出演者のみなさんに感想をうかがいました。

米田さん
「本格的なコンサートに出演し、たくさんのお客さまに聴いていただけることが新鮮で嬉しく感じました。また、会場の温かみとCFXとの相性がよく、気持ちよく弾くことができました。今回選んだ曲は全て私の好きな曲で、この楽曲に取り組む事ができたこと、又、皆さまから沢山の拍手をいただけた事がとても幸せでした。今回の選曲を今後も更に深掘りをし、これからもたくさんの作品をこのような場でまた演奏していきたいです。」

上坂さん
「今日のCFXはおしとやかな印象を受けましたが、いつもどおり多彩な表現を可能にしてくれました。また、会場の音響は音の跳ね返りが独特で、僕がこれまでに経験したことがないものでした。音が素直に響き渡ってお客さまのもとへフルに届いていく分、音のフィードバックが自分の手元に返ってこない感覚があったので、遠くを感じながら客観的な耳を持って演奏しました。とくにショパンの「ノクターン」は、遠くにある輝かしさを降ろしてきたような感じがして、会場の音響との相性が良かったように思います。」

鎌田さん
「今日のCFXは、低音の鳴りが良かったと思います。とくに「ノクターン」はベースの進行が重要になるので、低音の支えを感じながら演奏できました。また高音も、出てくる音を聴きながら自分の出したい音色を作りやすいピアノでした。今日は偶然にもショパンの誕生日で、彼の作品をプログラムに並べることができて光栄でした。「幻想ポロネーズ」では、彼の内面的な葛藤や憂いを表現できたと思います。お客さまの雰囲気も温かかく、心地よい空間を感じながら、自分の出したいタイミングで音を奏でることができました。」

Text by 鬼木玲子、写真:武藤章