五嶋みどりさんロビー・コンサート~温かい思いが溢れた「ミュージック・シェアリング」
2016年10月21日(国立新美術館1階ロビー)
アメリカを拠点に世界で活躍しているヴァイオリニストの五嶋みどりさんは、国連平和大使を務め、また非営利団体「Midori &Friends」(ニューヨーク)と認定NPO法人「ミュージック・シェアリング」(日本)を主宰しています。多忙な演奏活動と並行して、世界の子どもたちに本物の音楽を届け、彼らのクリエイティビティを育む活動にも力を入れています。そんな五嶋さんが、特別支援学校に通う障がいを持つ子どもたちとともに、30分ほどのコンサートを国立新美術館1階ロビーで開きました。開演の30分前には立ち見もできるほどの大盛況でした。
■プログラム
エルガー:愛の挨拶
ヴィエニャフスキ:モスクワの思い出
久石譲:歌の力、MIDORI Song
コンサートは国立新美術館長の青木保氏の挨拶から。「今日から3日間、『ここから -アート・デザイン・障害を考える3日間-』が展示室で開催されていますので、ぜひご覧になって下さい。このコンサートを聴き、展覧会を観て、新たな創造の可能性について、あらためて考えたいと思います。」と述べられました。
プログラムは五嶋みどりさんのヴァイオリン、ジアイ・シーさんのピアノにより、エルガーの「愛の挨拶」で始まりました。ガラス張りの壁をバックにしての演奏で、3階ほど高さのある天井に音が舞い上がっていくようでした。続く五嶋さんの十八番でもあるヴィエニャフスキ「モスクワの思い出」も同様で、ヴァイオリンの技巧を披露しながら、清らかな演奏となりました。五嶋さんの使用する名器グァルネリ・デル・ジェスとヤマハが貸与したCF6も優しく溶け合っていました。
3曲目は、リトルキャロルが、久石譲作曲の合唱曲「歌の力」を温かい声で歌いあげました。
4曲目は、五嶋さん、アンサンブル麻生OB・OG会、楽器指導ボランティアによる合奏、えびな少年少女合唱団、リトルキャロルによる合唱で「MIDORI Song」を演奏。五嶋さんが主宰する「ミュージック・シェアリング」の活動のひとつに「楽器指導支援プログラム」があり、特別支援学校に通う障がいを持つ子どもたちに、音大生や音大卒業生が継続的な楽器演奏指導を行っています。このコンサートでは、作曲家久石譲よりミュージック・シェアリングに寄贈された「MIDORI Song」を一生懸命演奏してくれました。会場から起こった盛大で温かい拍手に応えて、アンコールとして同じ曲をもう一度。さらに大きな拍手でコンサートは終了しました。
Text by 堀江 昭朗