クリスマスシーズン恒例の「小曽根真 Christmas Jazz Night 2023」。今年もBunkamuraオーチャードホールで、12月16日、17日の2日間にわたり、幅広い世代のメンバーが集い、極上のエンターテイメントを届けてくれました。
2023年12月16日(Bunkamuraオーチャードホール)
■プログラム(2023年12月16日)
1st Part :Big Band
M1.Jungle:Makoto Ozone
M2.Jean Pierre:Miles Davis
M3.Deviation:Makoto Ozone
M4.Mr. J.J.:Jeff “Tain” Watts
2nd Part: Combo & Big Band
M5.Carrots or Bread:Makoto Ozone
M6.Park Hopper:Makoto Ozone
M7.Improvisation(Piano Solo):Makoto Ozone
M8.No Strings Attached:Makoto Ozone
Encore
M9.Happy Christmas:John Lennon
2023年の「小曽根真 Christmas Jazz Night」のテーマは、“Beyond Generations”。小曽根さんは近年、ご自身も若き日に巨匠たちから見出され、チャンスを得てキャリアを積んできたことから、若いミュージシャンと共演することで活躍の場を用意することに積極的に取り組んでいます。そしてそれは同時に、小曽根さん自身にとっても大きな刺激となっているとのこと。
そのようなわけで出演者は、トランペットのエリック・ミヤシロさんやトロンボーンの中川英二郎さんなどMakoto Ozone featuring No Name Horsesのメンバーなど長きに渡り小曽根さんと共演してきたベテランをはじめ、コロナ禍をきっかけに小曽根さんが力を入れているFrom Ozone Till Dawnの若いミュージシャンたち、ニューヨークから招聘した若き才能、ジョーイ・クレリ、ニコラ・カミニティ、タル・カルマンという、世代も国籍も幅広い豪華な顔ぶれです。
大ホールに満員の聴衆とともに、2日間にわたり、サプライズと音楽の喜びにあふれたライブが繰り広げられました。
公演は、会場全体が真っ暗になったところからスタート。どこからともなくまるで動物の鳴き声のような管楽器の音が聞こえ、出演者たちが思い思いに音を鳴らしながら続々とステージに集います。その様子は、闇に包まれたジャングルか、はたまた動物園で夜な夜な密かに繰り広げられる動物たちのパーティーのよう。
すると突然、客席の間の通路にスポットが当たり、そこには小曽根真さんの姿が。そうして「Jungle」(小曽根真)が始まり、楽しい仕掛けにあふれた特別な時間になりそうな予感とともにコンサートが幕を開けます。冒頭から熱いセッションが繰り広げられ、会場が盛り上がりました。
その後、「Jean Pierre」(Miles Davis)、「Devitation」(小曽根真)、「Mr. J.J.」(Jeff “Tain” Watts)と、エキサイティングな演奏が続きます。まず興味深かったのは、管楽器奏者たちのソロパート。多彩なメンバーがかわるがわるソロをとっていくと、ベテランの手慣れた音楽作り、若手のまっすぐな表現、ニューヨークメンバーの個性的な感性と、それぞれの良さが際立ちました。
ステージの左手には、2024年1月にアルバムをリリースする新トリオ「Trinfinity」の顔ぶれでもある、小曽根さん、小川晋平さん(ベース)、きたいくにとさん(ドラムス)が集まっています。小曽根さんが若者二人をあおり、その期待を越えようとする反応に、さらに小曽根さんが楽しそうにのってゆく、熱いかけあいも聴きものでした。
「僕の曲は聴いていると楽しいかもしれないけれど演奏するのは大変なものが多いのに、ニューヨークからのメンバーも、まるで自分たちの曲のように演奏してくれて嬉しい」と小曽根さん。
それぞれが他の奏者のソロを楽しそうに聴いている姿も印象的で、出演者たちの音楽の喜びが、客席まで伝わってくるようでした。
後半は小曽根さんの楽曲から、「Carrots or Bread」「Park Hopper」。この日小曽根さんが演奏していたのは、ヤマハCFXの特別なディスクラビア(Disklavier™)。小曽根さんは、ときに合いの手を入れ、いたずらをしかけるように多様なサウンドを鳴らし、楽器の声色をさまざまに活用しながら、共演者との対話を繰り広げます。
小曽根さんのソロによる深い物思いに耽るようなインプロビゼーションで客席の心を少し穏やかにした後は、続けて「No Strings Attached」。ふたたび出演者たちがステージに集合し、客席を巻き込んで音楽が最高潮に盛り上がります。そして迎えたフィナーレとともに、キャノン砲でメタルテープが客席に放たれるサプライズ!
鳴り止まない拍手に応え、再び出演者たちがステージに現れます。小曽根さんから、先にウィーンのコンサートで、イスラエル人歌手とパレスチナ人ギタリストの音楽が一つになった瞬間を目の当たりにしたときの思い出が語られたのち、「世界の平和とみなさんの新しい年を祈念して」というメッセージと共に、アンコール、ジョン・レノンの「Happy Christmas」。白いドレスに身を包んでステージに登場した石川紅奈さんと小曽根さんの歌が、“Beyond Generations”なメンバーのサウンドの上で、あたたかいハーモニーを生み出します。
客席には、クリスマスを祝う高揚感、素晴らしい音楽で晴れた心とともに新しい年を迎えられる喜びがあふれていました。
Text by 高坂はる香