第5回仙台国際音楽コンクール 優勝記念演奏会
ソヌ・イェゴン氏がヤマハCFXで詩情あふれる感性をのびのびと披露
2014年6月20日(浜離宮朝日ホール)
昨年6月に行われた仙台国際音楽コンクールピアノ部門で優勝の座に輝いた、ソヌ・イェゴン氏。彼の東京でのお披露目となるリサイタルが、6月20日、浜離宮朝日ホールで行われました。
この日のプログラムは、ソヌ氏の詩情あふれる感性が伝わる内容。モーツァルト《ピアノ・ソナタ第10番》の冒頭の音で聴衆の耳をひきつけ、素直でみずみずしい音楽を紡ぎます。ショパン《バラード第3番》はとにかく優しく、ヤマハCFX の丸みのある音を活かして語りかけるように奏でてゆきます。静から動へドラマティックに展開したリスト《巡礼の年第1年スイス「オーベルマンの谷」》には、どこか作品への共感が滲むようです。一つひとつの言葉を丁寧に選び語っていくようなタッチに、CFX が応えます。
後半は、得意だというロシアもの。チャイコフスキー《「四季」より6月、8月、10月》では、淡い色彩を重ね塗りしてゆくような表現が印象的。最後のラフマニノフ《ピアノ・ソナタ第2番》では、温めてきたエネルギーを解き放つかのようにのびのびと楽器を鳴らし、スケールの大きな音楽を聴かせました。
アンコールは、メンデルスゾーン《結婚行進曲》やJ・シュトラウス《こうもり》からのピアノ編曲作品など、ここでもレパートリーの広さと趣味のよさを見せます。仙台から羽ばたく俊英として、今後に大いなる期待を感じる演奏会となりました。
Text by 高坂はる香