コンサートレポート

コンサートレポート

藤井一興氏が年始恒例のリサイタルでCFXを演奏神がかりとも思えるほどの美しい音色で聴衆を魅了

2015年1月5日(東京文化会館小ホール)

作品に向きあう真摯な姿勢と美しく研ぎ澄まされた演奏で、多くの音楽ファンを唸らせつづけている藤井一興氏。
ここ数年、東京文化会館小ホールで1月5日に行ってきた自主企画リサイタルが、今年はヤマハコンサートグランピアノCFXを使用して開催されました。

〈詩もまた絵のように=ut pictura poesis〉と題された今回のプログラムは下記の通り。
いずれも音色や響きの微細なニュアンスが求められるデリケートな作品です。

藤井一興/中札内の空に見たもの(世界初演)
フォーレ/「夜想曲」第1〜6番
武満 徹/遮られない休息
武満 徹/閉じた眼──瀧口修造の追憶に──
デュカス/ラモーの主題による変奏曲・間奏曲・フィナーレ
メシアン/「幼子イエスに注ぐ20の眼差し」より 喜びの精霊の眼差し

藤井氏は、自作において、ピアノを鳴らすのではなく〝響かせる〟フレーズを随所に採り入れ、ピアノという楽器の新たな可能性を提示。フォーレでは、芯まで透き通った音色の、さらに上澄みだけをすくい取ったような美しい音色で、あるべき音楽を表出しました。弱音の中に、神がかりとも思えるほどのニュアンスとメッセージを感じさせたのは、武満徹の2曲。続くデュカスでは一転、軽やかな存在感をもった金箔のような音色を聴かせ、CFXの音色の豊かさを再認識させました。

終曲のメシアンは、定評ある氏のレパートリーとあって、美しい音色と響きの連続にただ感動するのみ。CFXのポテンシャルはアンコールでも十二分に引き出され、ドビュッシー《月の光》《水の反映》の2曲はまるで幻想の世界に迷い込んだかのようでした。再々のカーテンコールに応じた氏は、最後にピアノ技術者をステージに招き、「今日のCFXを素晴らしく仕上げてくださった」と感謝の意を示されました。

Text by ピアノの本 編集部

☆ヤマハCFXは、今年3-4月に予定されているレコーディングと、9月16日に浜離宮朝日ホールで予定されているCD発売記念リサイタルでも使用されることになっています。