韓国の俊英ソヌ・イェゴン氏、鮮烈なピアニズムでショスタコーヴィチのコンチェルトを披露
2015年2月20・21日(愛知県芸術劇場コンサートホール)
第5回仙台国際音楽コンクールピアノ部門の覇者、韓国出身のソヌ・イェゴン氏が、2月20日、21日の両日にわたって愛知県芸術劇場コンサートホールで開催された名古屋フィルハーモニー交響楽団定期演奏会『ファースト・シリーズ』に登場。巨匠作曲家たちの「第1番」に焦点をあてたこのシリーズ、今回は〈ロシアの1番〉と題して以下のプログラムが演奏されました。
ムソルグスキー/聖ヨハネのはげ山の夜(交響詩『はげ山の一夜』原典版)
ショスタコーヴィチ/ピアノ協奏曲第1番(ピアノとトランペット、弦楽合奏のための協奏曲)ハ短調 作品35
カリンニコフ/交響曲第1番ト短調
冒頭の《聖ヨハネのはげ山の夜》で、ロシアの大地を感じさせる豊かな音楽世界が繰り広げられた後、爽やかな笑顔でソヌ・イェゴン氏がステージに現れ、ショスタコーヴィチ《ピアノ協奏曲第1番》を演奏。ヤマハCFXのクリアな音色を響かせて、名古屋フィルハーモニー主席奏者の井上圭氏のトランペットと共にスリリングな音楽を紡いでいきます。変化に富んだ曲想を明晰なタッチとシャープなリズム感で鮮やかに描き出すソヌ氏のピアノに、指揮者のアンドリス・ポーガ氏は絶妙な掛け合いでオーケストラを対峙させ、シニカルで軽妙洒脱なこの作品の魅力を楽しませてくれました。神秘的なピアノの旋律が美しい緩徐楽章、ピアノの激しい連打の中でトランペットのファンファーレが鳴り響くフィナーレ、あらゆる場面でヤマハCFXはソヌ氏のみずみずしい感性に応えて万華鏡のような音色を響かせ、楽器としてのポテンシャルの高さを感じさせました。
終演後、ポストリュードとしてソヌ氏によるミニ・コンサートが行われたのは、聴衆にとって思いがけないプレゼント。ラフマニノフ《ピアノ・ソナタ第2番》の第2楽章、第3楽章を、洗練されたテクニックで抒情豊かに奏で、ロシア音楽のプログラムを味わい深く締めくくりました。
「仙台国際音楽コンクールで私の力強いパートナーとなってくれたヤマハCFXは、いつも演奏者が求める音色と表現を100パーセント実現してくれます。ショスタコーヴィチのコンチェルトは私にとって初めての作品でしたが、指揮者のアンドリス・ポーガ氏と名古屋フィルハーモニー交響楽団は、私に最大限の自由を与えてくださり、エキサイティングな音楽をつくり上げることができました」と語ったソヌ氏。今後の活躍が楽しみな存在です。
Text by 森岡 葉