ショパン国際ピアノコンクール本選出場のピアニストたちが躍動
「ヤマハライジングピアニストコンサート Vol.12」
2025年8月20日、21日(ヤマハホール)

若手ピアニストが出演する「ヤマハライジングピアニストコンサート」。
第12回目が、8月20日、21日の2日間に渡りヤマハホールで開催されました。今回は、第19回ショパン国際ピアノコンクール本選に出場する8名が、オール・ショパン・プログラムを披露。個性が光る渾身の演奏を届けました。
1日目:8月20日

李 璐王子(リ・ルワンズ) ———————————————————————✦
F.ショパン:ワルツ第1番 「華麗なる大円舞曲」 変ホ長調 Op.18
F.ショパン:エチュード集(練習曲集) 第11番 「木枯らし」 イ短調 Op.25-11
F.ショパン:ノクターン第13番 ハ短調 Op.48-1
F.ショパン:バラード 第1番 ト短調 Op.23
F.ショパン:ポロネーズ第5番 嬰へ短調 Op.44
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トップバッターを務めたのは、中国の李璐王子(リ・ルワンズ)さん。にこやかな表情で一礼し、華やかな《華麗なる大円舞曲》で幕を開けました。中間部は甘くロマンティックに歌い、聴衆を魅了。続く《木枯らし》は、一転して力強く低音の旋律を奏でました。一つひとつのタッチを丁寧に紡ぐ李さんは、時折上を向いてホールの響きを確かめながらプログラムを進め、熱のこもった迫真の《バラード第1番》の演奏後は、大きな拍手が湧きました。

山縣 美季 ———————————————————————✦
F.ショパン:ノクターン第18番 ホ長調 Op.62-2
F.ショパン:ピアノソナタ第3番 ロ短調 Op.58
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現在パリに留学中の山縣美季さんは、黒と白のコントラストが目を引くスタイリッシュなドレスで登場しました。《ノクターン第18番》を豊潤な音色で紡ぎ、祈りを捧げるかのような静謐な演奏に、客席のあちこちから感嘆のため息がもれます。一方、《ピアノソナタ第3番》は、クリアな音色で決然としたテーマを奏で、唸るような低音や軽やかなスケルツォなど、多彩な表情を披露。山縣さんが描く物語が鮮明に浮かび上がり、聴衆の心に深く届きました。

李 天佑(リ・テンヨウ) ———————————————————————✦
F.ショパン:エチュード集(練習曲集) 第11番 「木枯らし」 イ短調 Op.25-11
F.ショパン:ノクターン第18番 ホ長調 Op.62-2
F.ショパン:ワルツ第5番 変イ長調 Op.42
F.ショパン:幻想曲 へ短調 Op.49
F.ショパン:ポロネーズ第6番 「英雄」 変イ長調 Op.53
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中国出身の李天佑(リ・テンヨウ)さんは、音と音のつながりを大切に紡いだ《ノクターン第18番》を披露しました。軽やかな《ワルツ第5番》は、可憐なパッセージが印象的な演奏で、李さんの個性が際立った舞曲に。また《幻想曲》では、ヤマハCFXのポテンシャルを存分に引き出し、深みのある低音と煌めいた高音で自由に音楽を歌い上げました。幻想的な音色に魅せられた観客から拍手が送られたあと、最後は《英雄ポロネーズ》を堂々と演奏しました。

山﨑 亮汰 ———————————————————————————✦
F.ショパン:ノクターン第13番 ハ短調 Op.48-1
F.ショパン:エチュード集(練習曲集) 第1番 Op.10-1 ハ長調
F.ショパン:ワルツ第2番 変イ長調 Op.34-1
F.ショパン:バラード 第2番 へ長調 Op.38
F.ショパン:24のプレリュード(前奏曲集) Op.28より第19番~第24番
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アメリカで研鑽を積んでいる山﨑亮汰さんは、身体全体でピアノと対峙。力強い《ノクターン第13番》と、爽やかな《ワルツ第2番》の対比で聴衆を惹きつけます。《エチュード第1番》は、左手が奏でる旋律の豊かさが際立ち、《バラード第2番》は、低音と高音を駆使して静と動のコントラストをドラマティックに展開しました。《24の前奏曲》から抜粋した6曲は、迫り来る轟音、囁くような音色など、楽曲それぞれの個性を見事に表現。圧巻の演奏で、1日目を締めくくりました。

2日目:8月21日

イ・クァンウク ———————————————————————————✦
F.ショパン:バラード 第3番 変イ長調 Op.47
F.ショパン:舟歌 嬰へ長調 Op.60
F.ショパン:アンダンテ・スピアナートと華麗な大ポロネーズ 変ホ長調 Op.22
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韓国のイ・クァンウクさんは、宝石をちりばめたような優美な音色で《バラード第3番》をつづりました。気高く、勢いに満ちた演奏に圧倒されます。その後、間をあけておもむろに《舟歌》へ。感傷的な陰影から朝日を感じさせる光まで、豊かな色彩を描きだしました。《アンダンテ・スピアナートと華麗な大ポロネーズ》の前半は語りかけるようにメロディを歌い、後半は確かなテクニックでポロネーズを高らかに奏でました。

西本 裕矢 ——————————————————————————————————✦
F.ショパン:ポロネーズ第7番「幻想」 変イ長調 Op.61
F.ショパン:「ドン・ジョヴァンニ」の「お手をどうぞ」の主題による変奏曲 変ロ長調 Op.2
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笑顔で登場したのは、西本裕矢さん。深呼吸して鍵盤に指を置くと、空気をたっぷりと含んだ豊かな音色が会場を満たしました。《幻想ポロネーズ》は、幅広いダイナミクスで展開し、聴衆の心を高揚させます。《「ドン・ジョヴァンニ」の「お手をどうぞ」の主題による変奏曲》では、多彩なバリエーションを表情豊かに披露。細かなパッセージは躍動感に満ち、生き生きとした響きが次々と飛び出しました。変奏曲の醍醐味を存分に味わえる演奏に、大きな拍手が送られました。

马 天坤(マ・ティエンクン) ———————————————————————✦
F.ショパン:アンダンテ・スピアナートと華麗な大ポロネーズ 変ホ長調 Op.22
F.ショパン:ポロネーズ第7番「幻想」 変イ長調 Op.61
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中国出身の马天坤(マ・ティエンクン)さんは、繊細な雰囲気を纏って《アンダンテ・スピアナートと華麗な大ポロネーズ》を演奏しました。滑らかで甘美な旋律を聴かせたあと、後半のポロネーズに入ると一変。輝かしい音色と明瞭なアーティキレーションを奏で、心地よいテンポと雄大な響きを最後までキープしました。《幻想ポロネーズ》は、絶妙な間の取り方で観客をひきつけ、ダイナミックな演奏でヤマハCFXを鳴らしきりました。

東海林 茉奈 ———————————————————————✦
F.ショパン:バラード第4番 へ短調 Op.52
F.ショパン:ワルツ第2番 変イ長調 Op.34-1
F.ショパン:舟歌 嬰へ長調 Op.60
F.ショパン:ポロネーズ第6番 「英雄」 変イ長調 Op.53
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最後の演奏者は、落ち着いた深緑色のドレスに身を包んだ東海林茉奈さん。現在、ポーランドで学びを深めています。《バラード第4番》は、水底に沈むような静けさと沸き立つ情熱が共存した演奏で、聴衆を魅了しました。《ワルツ第2番》では華やかな心踊る舞曲を、《舟歌》では冷静さを保ちながら囁くようなパッセージを披露。作品ごとに雰囲気をガラリと変え、多彩なショパンの世界を聴かせました。最後は、艶やかな音色と正確無比な《英雄ポロネーズ》で締めくくり、2日間の公演は盛大な拍手に包まれて幕を閉じました。

Text by 鬼木玲子 Photo:武藤章


