前途有望な若手ピアニストたちが瑞々しい演奏を披露する
「ヤマハ ライジングピアニストコンサートVol.10」
2025年1月25日(土)、26日(日)(ヤマハホール)
記念すべき10回目を迎えた「ヤマハ ライジングピアニストコンサート」が、2025年1月25日(土)、26日(日)の2日間に渡りヤマハホールにて開催されました。
このコンサートには、今後のピアノ界を担う才能あふれる若手ピアニストたちがすることもあり、熱演を楽しみにしている観客で会場が埋め尽くされました。
今回、演奏を終えた出演者の皆さんに、自らの表現をいかに深めているかについて、プログラム構成や作品曲への思いを語っていただきました。
今後のステージでどのような演奏をするか楽しみとなる8名の出演者でした。
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原田 怜
W.A.モーツァルト:ピアノ・ソナタ第6番「デュルニツ」 ニ長調K.284 K6.205b 第3楽章
C.ドビュッシー:喜びの島 イ長調
O.メシアン:鳥のカタログ 第1巻 3.イソヒヨドリ
Q1 今日のコンサートをふりかえった感想と、選曲をお聞かせください。
「今回キャラクターが異なる3曲をプログラムとしましたが、3つの異なる空間を構築できるのではないかと楽しみでした。空間を意識して演奏するには最適なホールで、とても気持ちよく弾くことができました。
メシアンは、最も長く演奏している作品ですが、いくつかのホールで演奏した中で、今回また違った捉え方ができました。」
Q2 複数名が出演するコンサート、いかがでしたか?
「それぞれのカラーや凄みが異なり、音楽の新たなあり方を発見する貴重な機会となりました。」
Q3 今後、チャレンジしてみたいことありますか?
「クラシック音楽だけでなく、文学や美術、他のジャンルにも触れることで、見える世界や物事をより深く理解し、音楽をさらに深く捉えられるようになりたいです。」
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津野 絢音
L.リーバーマン:ガーゴイル Op.29
F.ショパン:「ドン・ジョヴァンニ」の「お手をどうぞ」の主題による変奏曲 変ロ長調 Op.2
Q1 今日のコンサートをふりかえった感想と、選曲をお聞かせください。
「自分が楽しめるピアノだったので、無理に音の大きさを追求することなく、響きで楽しむことができました。昨年の冬、ヤマハホールで演奏を聴いた際、弱音が美しく響くホールの印象があり、今回コンサートのお話をいただいた時に響きを意識した選曲をしました。
『ガーゴイル』は、コンサートで演奏されることが少ない曲ですが、技巧的で幻想的な要素があり、自分のレパートリーになりました。」
Q2 複数名が出演するコンサート、いかがでしたか?
「30分という、ある程度意志を持ったプログラムで演奏できることは、貴重な機会でしたし、他の大学の方たちとこのようなコンサートをする機会が少ないので、人脈を広げることができました。」
Q3 今後、チャレンジしてみたいことありますか?
「音楽に向き合う時間をもっと持ちたいと思っています。コンサートやコンクールで知っていただけて嬉しい反面、まだ成長し続けなければならないと感じる部分もあり、緊張しています。より深く勉強していきたいですね。あと、マイナーな曲にも積極的に挑戦していきたいです。」
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塩﨑 基央
M.ムソルグスキー:組曲「展覧会の絵」
Q1 今日のコンサートをふりかえった感想と、選曲をお聞かせください。
「今日のコンサートでは、4名で1人あたりの演奏時間が30分という、とてもバランスのとれたプログラムで、『展覧会の絵』を演奏するのにピッタリなコンサートでした。
大曲を一曲演奏するということは、演奏者にとって大変緊張感があり、技量や個性が試されます。コンクールなどでは高いハードルに感じやすいものです。しかし今回の舞台では、素晴らしい方々とご一緒に、最高に楽しく演奏ができ感謝しております。また、この曲が生まれた背景である当時のロシア文化や時代観についても深く調べたことがあり、思い入れのあるこの曲を弾けたことは、とても感慨深く嬉しいひとときでした。」
Q2 複数名が出演するコンサート、いかがでしたか?
「4名それぞれの個性が際立つ演奏で、とても色彩豊かで楽しく、また大変刺激を受けることができました。」
Q3 今後、チャレンジしてみたいことありますか?
「私は、東京音楽大学の優秀生を中心に構成されるZ新世代オーケストラ『ネコフィル -Next CosMo Philharmonic-』を設立し、活動しております。
私たち音大生が学ぶクラシック音楽の歴史を俯瞰的にみると、実は「改革を繰り返すこと」自体が伝統となっている文化であることが分かります。音大生だからこその新視点・発想から生まれる音楽事業を企画・実現しつつ、全ての世代の皆様と一緒にこのクラシック音楽の文化を広める活動を発展させたいと願っております。」
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柴田 陽人
F.ショパン:マズルカ風ロンド ヘ長調 Op.5
S.ラフマニノフ:ピアノ・ソナタ 第2番(1931年版) 変ロ短調 Op.36
Q1 今日のコンサートをふりかえった感想と、選曲をお聞かせください。
「ラフマニノフは高校の試験やコンクールで2回ほど弾いたことがあります。ショパンは、毎回弾き方を変え、工夫を凝らして遊び心を持ちながら演奏しています。例えば、内声を出してみたりタッチを変えてみるなど聴いている人にも楽しんでもらえるようにしています。
ヤマハホールで弾くのは初めてでしたが、弱音がとても綺麗に響くホールだと感じました。2曲ともその弱音を活かして楽しみながら演奏することができました。」
Q2 複数名が出演するコンサート、いかがでしたか?
「今回のコンサートにメンバーとして参加できて、とても嬉しかったです。素晴らしい方々ばかりなので、自分の個性を最大限に出したいと思いました。また、いつも演奏を聴いているみなさんとたくさんコミュニケーション取れました。楽しかった1日であり、非常に刺激を受けることが出来ました。」
Q3 今後、チャレンジしてみたいことありますか?
「お客様にまた聴きたいと思っていただけるようなピアニストになりたいです。そのためには自分の個性が重要だと感じています。そのため、自分なりの解釈を大切にし、曲を自分のものにしていきたいです。」
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後藤 美優
F.ショパン:エチュード集(練習曲集) 第1番 ハ長調 Op.10-1
F.シューベルト:即興曲集 第3番 変ロ長調 D.935 Op.142-3
F.リスト:「ノルマ」の回想(ベッリーニ)S.394 R.133
Q1 今日のコンサートをふりかえった感想と、選曲をお聞かせください。
「10年ぶりにヤマハホールで演奏しました。東京に来て初めてのホールでした。
シューベルトは今回初めて弾いたので、技術的に難しさを感じましたが、ホールの響きに助けられました。『ノルマ』はお気に入りの曲で、華やかな曲調がホールにぴったりで、演奏していてとても楽しかったです。シューベルトは普段あまり弾かない曲だったので、チャレンジしてみました。
Q2 複数名が出演するコンサート、いかがでしたか?
「複数名が出演するコンサートについては、ホールでお互いに演奏を聴き合うことができ、他の大学の方々と交流できる貴重な機会となりました。」
Q3 今後、チャレンジしてみたいことありますか?
「夜遅くまでピアノに取り組んで、疲れて寝るのが好きで得意です。また、語学も学んでいきたいと思っています。リストが好きなので、ハンガリーにも行ってみたいです。」
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朴 沙彩
F.リスト:白鳥の歌(シューベルト)「セレナード」 S.560 R.245
F.リスト:水の上で歌う(シューベルト)S.558
S.ラフマニノフ:ピアノ・ソナタ 第2番(1931年版)変ロ短調 Op.36
Q1 今日のコンサートをふりかえった感想と、選曲をお聞かせください。
「1音目から、ピアノとホールの響きが素晴らしく、非常に気持ちよく演奏することができました。柔らかく深い音も出せましたし、速いパッセージも弾きやすかったです。
今回のプログラムは、シューベルトの歌曲の繊細な要素が入るリストから、華やかで大曲のラフマニノフまで幅広く演奏しましたが、どちらもホールの響きに助けられました。」
Q2 複数名が出演するコンサート、いかがでしたか?
「学校以外の方と知り合える機会が少ないので、このように複数名で出演できることはとても嬉しいです。他の方の演奏もホールで聴けたので刺激を受けました。」
Q3 今後、チャレンジしてみたいことありますか?
「もちろん音楽を深く勉強していきたいと思っていますし、文学が好きなので、ヨーロッパの19世紀ごろの小説も読みたいです。」
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大山 桃暖
F.ブゾーニ:ソナチネ 第6番 ビゼーの「カルメン」に基づく室内幻想曲 Kind.284
C.シューマン:ベッリーニの歌劇《海賊》のカヴァティーナにもとづく演奏会用変奏曲 Op.8
Q1:今日のコンサートをふりかえった感想と、選曲をお聞かせください。
「小4以来、9年ぶりにヤマハホールで演奏しました。響きがいいホールで、自分の弾いた音に包み込まれるように気持ちよく弾けました。技術的に結構難しかったですが、舞台音楽が好きで、その中でもあまり弾かれない曲を敢えて選びました。」
Q2:複数名が出演するコンサート、いかがでしたか?
「皆さんの演奏が聴ける良い機会となりました。」
Q3:今後、チャレンジしてみたいことはありますか?
「海外に行って、その国の文化に触れたり、舞台など観劇してみたいです。」
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大沢 舞弓
A.スクリャービン:8つのエチュード(練習曲) 第4番 嬰ヘ長調 Op.42-4
A.スクリャービン:ピアノ・ソナタ 第1番 ヘ短調 Op.6
Q1 今日のコンサートをふりかえった感想と、選曲をお聞かせください。
「今回演奏したソナタ1番は、スクリャービンのソナタの中ではあまり演奏されていない曲ですが、自分に近い年代の時の作品ということで、彼を身近に感じたくて選曲しました。 彼の音楽には、夢のような音色や幻想的な魅力があるので、特に音色作りを意識しました。求める音色を出したい思いにヤマハホールが応えてくれるので、弾きやすく心地よかったです。
ヤマハホールは幼い頃から私にとっての夢の舞台で、ピアノに向かい合う動機でもあった場所なので、幸せな時間でした。」
Q2 複数名が出演するコンサート、いかがでしたか?
「学友以外で、情熱を持って音楽に向かい合う同世代のピアニストと繋がれる貴重な機会となりました。とても楽しかったです!」
Q3 今後、チャレンジしてみたいことありますか?
「ヨーロッパに行って、クラシック音楽の本場の空気を体感したいです。」
Text by 編集部、写真:武藤章