<< サロンコンサート in Ginza TOP

サロンコンサート in Ginza

Vol.13 :岩井 亜咲、神原 雅治

Profile Profile

 国際的な活躍を期待される若手ピアニストが、ヤマハ銀座コンサートサロンでコンサートグランドピアノ「CFX」を奏でるコンサートシリーズ。Vol.13には岩井亜咲さん、神原雅治さんが出演されました。お二人とも、第8回仙台国際コンクールの出場者です。

 前半の岩井さんの一曲目は、モーツァルトの《ピアノ・ソナタ第3番》。最初期のソナタで、フォルテピアノを用いて作曲された楽曲ならではの装飾的な音型の多い楽曲です。岩井さんはそれらを一つひとつ磨き上げられた美しい音色で、余裕をもって奏でます。笑顔で語り掛けるような軽快さを感じられました。

 続いてはショパンの《アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ》。岩井さんの美音が映える〈アンダンテ・スピアナート〉と、迫力ある〈大ポロネーズ〉のコントラストを見事に表現し、ポロネーズのリズムの刻みの正確さ、技巧的に難しい重音によるパッセージの軽やかさは圧巻でした。

 最後はドビュッシーの《前奏曲集第1集》から3曲。〈音と香りは夕暮れの大気に漂う〉では各声部を丁寧に際立たせた立体感のある演奏によって、楽曲の色彩感が聴衆の心を震わせます。〈アナカプリの丘〉は高音のきらめきが印象的な楽曲。岩井さんの音質と非常にマッチし、きらめくように美しい響きをまとった音色が終始奏でられました。最後の〈西風のみたもの〉は音の粒立ちの良さも相まって、それぞれの楽想の示すものが明快で、吹く風の動きや色までもが見えてくるような演奏でした。

 後半の神原さんの一曲目は、モーツァルトのピアノ・ソナタの中で最も劇的な作品である第14番。オーケストラの音色を意識したような演奏をされているのが印象的で、音の一つひとつにかなり重みがあります。また、全体を非常に構築的に展開し、動機同士の関連が浮かびあがるように演奏されていました。穏やかな第2楽章の旋律の息の長い歌いまわし、軽やかなタッチで奏でられる装飾音型も魅力的でした。

 続いて演奏されたのはブラームスの《4つのバラード》の第4曲。若きブラームスの抒情性が存分に凝らされています。神原さんは豊かな響きの音色を駆使し、繊細ながらもスケールの大きな音楽を展開。大仰な表現をしなくとも楽曲の中に込められた様々な感情を引き出した演奏で会場を包み込みました。

 最後はバルトークの《ピアノ・ソナタ》。神原さんはこれまでの2曲でピアノ以外の楽器の音色を想起させる、響きの豊かさを意識した演奏をされていましたが、この曲ではこれまでとはちがうピアノの打楽器性を最大限に活かした、シャープで透明度の高い音色を奏でていました。音数が多く、対位法的な要素も非常に多い作品ですが、この音色によって、全ての要素がクリアになり、民族舞曲的なリズムの要素をしっかりと届けながら、様々なハーモニーの変化を存分に届けてくれました。

 演奏後、岩井さんは「これまでは、練習の中で考えてきたものに捉われていたところがありましたが、今日はその場の空気からインスピレーションを得ながら演奏することができました。これはショパンコンクールでの経験や学びがあったからこそだと思います。ここでは何度か弾かせていただきましたが、とても大好きな空間です。音をお客様と共有している感覚があり弾いていて気持ちがいいんです。ヤマハCFXはとても弾きやすく、音色をつくりやすいですね。今日の演奏曲は自分が弾きたい曲、自分らしさを出せる曲でプログラミングしました。中でもドビュッシーは大好きな作曲家で、いつか前奏曲や練習曲は全曲弾いてみたいなと思っています」と語ってくれました。

 神原さんは「今日の会場は、お客様との距離が近いので緊張感がありましたが、これまでやってきたこと、やりたかったことは自分なりに出せたかなと思います。特に音色は自分にとって重要で、その点CFXはタッチのコントロールがしやすいのでとても助けてもらいました。特に ブラームスのような作品はそれが非常に重要なので、今日はとても快適に演奏することができました。仙台国際コンクールのように大きな国際コンクールは初挑戦なのでプレッシャーはありますが、自分のやってきた音楽を100%出せるようにしたいと思っています。9月からはドイツのエッセンに1年間留学予定です。初めてのヨーロッパ生活ですし、新しい先生との出会いもあり、たくさんの刺激やインスピレーションを受け、さらに新たな道も開けるかなと今から楽しみです」と語ってくださいました。

 フレッシュな印象のお二人はたくさんの可能性と輝きに溢れながら、一方ですでに自分の世界を確立されていました。今後その世界観がどのように広がっていくか、とても楽しみです。

会場

ヤマハ銀座コンサートサロン(ヤマハ銀座ビル 6F)
東京都中央区銀座7-9-14

▶公演の案内はこちら

日時

2022年6月1日 19:00開演 (18:30開場)

演奏者/曲目

■岩井 亜咲
モーツァルト/ピアノソナタ第3番 変ロ長調 K.281
ショパン/アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ Op.22
ドビュッシー/前奏曲集 第1集より
第4曲「音と香りは夕暮れの大気に漂う」
第5曲 「アナカプリの丘」
第7曲「西風のみたもの」

■神原 雅治
モーツァルト/ピアノソナタ 第14番 K.457 ハ短調
ブラームス/4つのバラード Op.10より 第4番
バルトーク/ピアノソナタ Sz.80

※都合により曲目が変更になる場合がございます。
※演奏順は当日のプログラムでご確認ください。

公演チケットのお申し込み・お問い合わせ

チケットのお申し込みは、お電話で承ります。
アーティストサービス東京 03-3572-3426(平日10時~17時)

上記は2022年5月30日現在の情報です