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サロンコンサート in Ginza

Vol.17 :海老原歩実、稲積陽菜

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 未来を嘱望される若きピアニストたちのジョイントコンサートシリーズ「サロンコンサート in Ginza」。2023年12月7日にヤマハ銀座コンサートサロンで開催されたVol.17に、東京藝術大学音楽学部2年在学中の海老原歩実さん、桐朋学園音楽大学音楽部2年在学中の稲積陽菜さんが出演し、フレッシュな演奏を楽しませてくれました。

 前半のステージに登場した海老原歩実さんの最初の曲は、ベートーヴェン《ピアノソナタ第8番「悲愴」》。第1楽章の荘重な序奏部がヤマハCFXの深い響きで奏でられ、情熱と悲愴感に満ちた傑作ソナタがドラマティックに展開されていきます。聴く人の心を癒すような美しい第2楽章、軽やかなテンポで悲しみの向こうに光を感じさせる第3楽章、柔軟なテクニックと繊細な感性で、若き日のベートーヴェンの意欲作を鮮やかに聴かせてくれました。

 続いて、リスト《『伝説』より「小鳥に説教するアッシジの聖フランチェスコ」》。CFXの透明感のある高音を活かした細かいパッセージが小鳥のさえずりを思わせ、やがて現れる聖フランチェスコの説教のレスタティーヴォと対話する情景が、清々しく描き出されました。最後の曲は、シマノフスキ《変奏曲》。仄暗くメランコリックな主題が提示された後、幻想的な和声、独特の叙情に満ちた12の変奏が繰り広げられていきます。第3変奏のマズルカ、第9変奏の軽やかなワルツなど、民族舞曲の要素や甘美なメロディを味わい深く聴かせ、最後の第12変奏ではヴィルトゥオジティを発揮して華やかなクライマックスを迎えました。

 後半の稲積陽菜さんは、同じ年に生まれたロマン派の作曲家、ショパンとシューマンの魅力あふれる大曲を披露。シューマン《幻想曲》は、後に妻となるクララとの仲を彼女の父に引き裂かれた時期の作品で、クララへの熱い想い、哀しみ、慟哭がほとばしるような曲想が、CFXの多彩な音色で奏でられていきます。ベートーヴェンの歌曲《遥かなる恋人に寄す》の憧れに満ちた旋律の引用で静かに締め括られた第1楽章から、愛の勝利を宣言するかのような決然とした第2楽章をダイナミックに展開し、第3楽章ではしなやかなピアニズムで、優美でロマンティックな夢のような世界に客席を誘いました。

 ショパンの最高傑作のひとつ《バラード第4番》は、冒頭のためらうような情緒豊かな序奏から穏やかで美しいテーマが現れ、さまざまな声部が織りなすポリフォニックな音楽世界が壮大に描き出されていきます。凄まじいテクニックを要する終盤では、激しい情感が渦巻くような演奏を繰り広げ、聴きごたえのあるプログラムを締めくくりました。

 終演後、海老原さんは、「以前客席で聴いて、木の温もりのある空間が素敵だなと思っていたので、このサロンで弾くことができて嬉しかったです。ベートーヴェンの《「悲愴」ソナタ》を初めて聴いたのは小学4年生の頃で、第3楽章が素敵だなと憧れました。今は第2楽章の暖かさに惹かれています。第1楽章も、もちろん素晴らしく、最初の和音から異次元の世界に入ったような感覚で演奏しました。リスト《小鳥に説教するアッシジの聖フランチェスコ》は、可愛がっているペットのセキセイインコの気持ちになって演奏しました。小鳥が大好きなので、いつか「鳥」をテーマにした作品を集めたプログラムを演奏したいなと考えています。シマノフスキ《変奏曲》は、暗く沈んだ世界に希望の光が射すような雰囲気が好きで、聴いていただきたいと思いました。今回初めて弾いたヤマハCFXは、音色がとても魅力的で、気持ちよく演奏することができました。《「悲愴」ソナタ》の深い響き、小鳥のさえずりを表現する美しい高音など、曲にもマッチしていたと思います。音楽を究めるのは大変なことで、実力不足に悩むこともありますが、視野を広く持って、今できることに精一杯取り組み、いつかそれが音楽にあらわれたらいいなと思います」と語ってくださいました。

 稲積さんは、「後半のショパン《バラード第4番》は、新しいレパートリーで、初めて人前で弾くので緊張しましたが、会場の響きやピアノに助けられ、思ったよりもリラックスして演奏することができました。ショパンは大好きな作曲家なので、様々な作品に取り組み、引き続き深めていきたいと思っています。シューマン《幻想曲》は、バッハに通じるような対位法的な作品なので、その魅力を感じていただきたいと思い、内声を聴かせたり、自分なりのアレンジを加えてみたりしました。ヤマハCFXは音がまろやかで、とても弾きやすかったです。とくに今日のプログラムは、弱音を聴かせる場面が多かったのですが、ピアノが敏感に反応してくれたので、繊細な表現をすることができました。将来の夢は?と尋ねられたとき、しっかりと答えられるようになることが今の私の目標ですが、ピアノを通じて何か人の役に立てたらいいなと思います」と語ってくださいました。

会場

ヤマハ銀座コンサートサロン(ヤマハ銀座ビル 6F)
東京都中央区銀座7-9-14

日時

2023年12月7日 19:00開演 (18:30開場)

演奏者/曲目

海老原歩実さん
L.v.ベートーヴェン/ピアノソナタ第8番「悲愴」 他

稲積陽菜さん
F.ショパン/バラード第4番 他

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上記は2023年11月22日現在の情報です