Vol.1：中川真耶加（イモラ国際ピアノアカデミー）、野上真梨子（ベルリン芸術大学国家演奏家資格課程）
世界に羽ばたく若手ピアニストによるジョイントコンサート「サロンコンサート in Ginza」が新たなコンサートシリーズ企画としてスタート。2021年3月22日に開催されたVol.1には、中川真耶加さんと野上真梨子さんが出演しました。
前半のステージに登場した中川真耶加さんの最初の曲は、ベートーヴェン《ピアノ・ソナタ第3番》。第1楽章冒頭の3度の重音のテーマを透き通るような弱音で明晰に奏で、その後の強音のパッセージでは豊かな響きを操り、若き日のベートーヴェンの壮大なソナタが幅広い音域とダイナミクスで展開されていきます。ロマンティックに歌う第2楽章、即興的なインスピレーションに満ちた第3楽章、エネルギッシュに駆け抜ける第4楽章まで、中川さんの鮮烈な技巧にヤマハCFXの音色が変幻自在に応え、ベートーヴェンの新鮮な魅力を堪能させてくれました。
続いてショパン《スケルツォ第4番》。明るく穏やかな雰囲気で始まり、中間部では抒情的な旋律を清々しく歌い、力強く華やかなコーダに至るまで、ドラマティックな音楽を繰り広げました。
後半は野上真梨子さんのステージ。シューマン《ピアノ・ソナタ第2番》の第1楽章冒頭の悲愴感あふれる和音で始まり、起伏に富んだ曲想がヤマハCFXの多彩な音色で描き出されていきます。抒情に満ちた第2楽章、激情が迸る第3楽章、カデンツァ風のプレスティッシモのコーダで終わる第4楽章まで、ヤマハCFXの幅広いダイナミクスを駆使して躍動感に満ちた音楽を紡ぎ出しました。
続いてショパン《ノクターン第8番》。みずみずしい情感を湛えた左手の分散和音の序奏で始まり、美しい旋律が微妙なハーモニーの移ろいとともに伸びやかに歌い上げられていきます。ヤマハCFXは野上さんの繊細な感性に応えて、細やかな装飾音のすべての音を宝石のように煌めかせ、豊かな弱音のグラデーションでエレガントな表現を支えました。
終曲はショパン《アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ》。無限に広がる地平線を思わせる穏やかな「アンダンテ・スピアナート」と生き生きとしたエネルギーに満ちた「華麗なる大ポロネーズ」の対比を鮮やかに描き分け、オーケストラのような迫力ある演奏でコンサートを締めくくりました。
終演後、中川さんは「2019年の2月からイモラ国際ピアノアカデミーに留学し、それまでとはまったく違った環境で学んでいる今の私の音楽を聴いていただきたいと思って組んだプログラムです。ベートーヴェンは大好きな作曲家なのですが、これまで演奏する機会はほとんどなかったので、高校時代に取り組み、イタリアで勉強し直した《ピアノ・ソナタ第3番》を、そろそろいいかなと今回のプログラムに入れてみました。ショパン《スケルツォ第4番》は、イタリアに行ってから学んだ作品です。2020年は、新型コロナウィルスの感染拡大でコンクールや演奏会が中止や延期になって最初は少し落ち込みましたが、ピアノがいかに自分にとって大切なものかを再確認しながら前向きに努力しています。今日演奏したヤマハCFXは、温かな響きがサロンの空間に溶け合い、弱音からダイナミックな音までコントロールしやすく、楽器に助けられたと感じています。コロナ禍の影響で、今後どのようになるかわかりませんが、残る留学期間を有意義に過ごし、いろいろなものを吸収して学んでいきたいと思います」と語った。
野上さんは「コロナ禍で聴衆の方に演奏を聴いていただくのは久しぶりだったのですが、緊張感はあるものの温かな空気が感じられ、幸せだなと感じました。今回のプログラムはシューマンとショパン、同じ年に生まれた2人の作曲家を取り上げました。シューマンのソナタは高校生の頃に演奏して以来しばらく弾いていなかったのですが、ドイツで勉強し直して新たな発見がありました。ショパンは子どもの頃から弾き続けてきた大切な作曲家で、今後もレパートリーの中心に据えて長く弾き続けたいと思います。今回演奏したヤマハCFXは低音が豊かに響き、それに支えられて音楽を自由につくることができました。小さい頃から慣れ親しみ、練習してきたヤマハのピアノのタッチにはやはり安心感があります」と語ってくださいました。
ヨーロッパで学んだものを糧にさらなる飛躍を目指すお2人の今後の活躍が楽しみです。
| 会場 | ヤマハ銀座コンサートサロン（ヤマハ銀座ビル 6F） |
|---|---|
| 日時 | 2021年3月22日 18:30開演 （18:00開場） |
| 演奏者/曲目 | ■野上真梨子 ■中川真耶加 ※都合により曲目が変更になる場合がございます。 |
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