この記事は2009年4月13日に掲載しております。
この3月にRCAよりアルバムをリリースされたばかり、ドイツを拠点に活躍する河村尚子さんをお迎えしました。今年は日本でベートーヴェン、チャスコフスキー、ラヴェルといくつもの協奏曲の公演も予定、明るい笑顔と観る人をも幸福にさせるオーラを放つその魅力を探ります。
- pianist
河村 尚子 - 現在世界的に最も注目すべきピアニスト。
2006年、権威ある難関ミュンヘン国際コンクール第2位、続いて翌2007年、多くの名ピアニストを輩出しているクララ・ハスキル国際コンクールにて優勝を飾り、世界の注目をあびる。
86年渡独。ハノーファー国立音楽芸術大学在学中にヴィオッティ、カサグランデ、ゲザ・アンダなど数々のコンクールで優勝・入賞を重ねる。また、ドイツを拠点に、オーストリア、スイス、イタリア、フランス、ポーランド、チェコ、ロシアなどで積極的にリサイタルを行い、オーケストラの共演については、チューリヒ・トーンハレ管弦楽団、バイエルン放送交響楽団、モスクワ・ヴィルトゥオーゾ、スロヴェニア・フィルハーモニー管弦楽団のソリストに迎えられ、ルール、オーヴェール・シュル・オアーズ、国内では、ラ・フォル・ジュルネ音楽祭に参加するなど、早くも国際的な活動を広げている。日本においては、2004年11月小林研一郎指揮/東京フィルハーモニー定期演奏会で、ショパンのピアノ協奏曲第2番を弾いてデビューし、日本フィルハーモニー交響楽団、東京都交響楽団、東京交響楽団、京都市交響楽団、兵庫芸術文化センター管弦楽団、名古屋フィルハーモニー交響楽団等の主要オーケストラと相次いで共演を重ね、いずれも好評を得る。2009/10シーズンには、関西フィルハーモニー管弦楽団、広島市交響楽団、仙台フィルハーモニー管弦楽団の定期演奏会へ初出演する他、京都市交響楽団、日本フィルハーモニー交響楽団、大阪フィルハーモニー交響楽団、東京交響楽団などから再招待を受けている。また、紀尾井ホール、フィリアホールでリサイタルも予定。ヨーロッパではスイス、フランス、ドイツ、スロヴェニアなど公演が決まっている。
2009年3月、RCA Red Sealレーベルへのデビュー盤となるオール・ショパン・アルバムを発売。録音は、これまで仏ディスコヴェール(2002年発売)と独アウディーテ(2004年発売)から2枚のアルバムが発売されており、そのどちらにも河村の愛奏曲の一つ、シューベルトのピアノ・ソナタ第20番が収録されている。
これまで、ウラディーミル・クライネフ、澤野京子、マウゴルジャータ・バートル・シュライバーに師事。現在、ハノーファー国立音楽芸術大学ソリスト課程に在籍。兵庫県西宮生まれ。
「河村 尚子」オフィシャルホームページ
※上記は2009年4月13日に掲載した情報です。
日本人に囲まれての生活は楽だけど、コミュニケーションをとれない自分が悔しかった。だからドイツ人の普通の学校に行こう!と決めました。
1986年から父の仕事でドイツ・デュッセルドルフに移り住みました。当時私は5歳、ピアノは始めたばかりでした。もともと兄と姉が習っていたので、金魚のフンの様に姉にまとわりつき、レッスンについていきました。先生からジュースを出していただいたり、お菓子を食べたり、別にピアノに興味があったというわけではなく、なんだかその延長で自然に始めたように思います。先生から「あなたもやってみない?」と言われて。
ドイツでの生活が落ち着いてから、また日本人の先生に出会うことができてピアノを再開しました。小学校6年生までは日本人学校に通っていましたがその後はドイツ人の普通の学校に行くと意思表示し、移りました。最初は大変でしたよ。今までドイツ語を話す必要がなかったのですから全く言葉がわかりません。子供のためのピアノ・コンクールに出場したときにまわりとコミュニケーションをとれないことがとても悔しかったのです。残念で。。。これがドイツの学校に行こうと思ったきっかけでしたね。でも子供は順応性も高いし、すぐに物事を覚え溶け込むので、友達もできてなんとかやっていきました。
初めてのレッスンを終えて帰る時に「次回のレッスンまでにプロを目指すのかどうするのか考えてくるように」と言われました。
自分がピアノでやっていくことを導いて下さったのはポーランド人の先生です。12歳の時にゲッティンゲンのショパン・コンクールに出場し、バートル・シュライバー先生に出会いました。初めてレッスンを終えて帰る時に「次回のレッスンまでにプロを目指すのかどうするのか考えてくるように」と言われました。
ピアニストになるには早いうちから準備が必要です。レッスンはとても厳しい先生でしたが第2の母のような存在でした。この仕事はとても過酷でつらい職業で、華やかな舞台とはかけ離れた世界があるのだと言うことを教えて下さったのだと思います。
例えば、どんなに舞台で喝采を浴び、大きな拍手を受け、喜びに浸ってもその数十分後には一人ぼっちなのです。バイオリニストやチェリストは伴奏者がいますよね。(無伴奏は別ですが。。。) パートナーがいます。でもピアニストは一人なんです。食事をするときも演奏旅行もすべてね。先生から、常に一人でやっていけるかどうか、一人でいられるかどうか、これがソロ・ピアニストになるための条件のように言われました。
もう一つは、常に完璧であること、ミスはだめです。お客様は私の演奏にお金を払って聴きに来られるのですから、それにお応えしなくてはならない。この2つを当たり前のように身につけていきました。
人を喜ばせる、幸福な気持ちにさせる、ピアニストとしてエンターティナーとしての喜びを実感!
初めてのリサイタルはゲッティンゲンで、14歳の時でした。丁度、先生の40歳のお誕生日で、まぁ自分にとっても納得できる演奏が出来て成功したリサイタルだったと思うのですが、先生が大変喜んで下さり、本当にうれしかった! その時に、人を喜ばせる、幸福な気持ちにさせる、ピアニストとしてエンターティナーとしての喜びを実感しました。確か、この時はベートーヴェンのソナタNo7とシューベルトの即興曲90-2.3、リストの練習曲、そしてショパンの小品を演奏しました。
2006年にミュンヘン国際コンクールに参加、ドイツが最も美しい9月で、お天気がとにかくよかったことを覚えています。幸い2位に入賞することができ、バイエルン放送交響楽団と共演できたことは大きな経験となりました。本当にすばらしいオーケストラです。
今回のアルバムは録音チームに恵まれました。
昨年、杉並公会堂で泉ゆりのさんとジョイント・コンサートをやらせていただいたのですが、その時にレコード会社BMGの方が聴きに来て下さいました。それから他の音楽会にも。そこから私の演奏を気に入って下さってレコーディングの話が進み始めたのです。
幸せなことに、フルトヴェングラーやカラヤンも録音した大変響きのよいベルリンの教会ですることができました。曲目は恩師のクライネフ教授と随分相談しましたね。これまでにヨーロッパで2枚のCDをリリースしていましたが、その時はショパンが入れられなかったので今回はぜひトライしたいと思いました。そして何より、録音チームに恵まれました。調律はすばらしい、私が何も言わなくてもわかる。。。常に最高の状態を作ってくれる。録音エンジニアも他のスタッフも、それぞれがきちんと意見を出し合い、よいディスカッションが出来ましたし、充実した3日間でした。ちなみにこの録音チーム名は「B# (ビーシャープ)」、つまり英語のBe Sharpに引っ掛けて「鋭敏/機敏に生きろ!」みたいな。。。笑 なんかカッコイイでしょう?
東フィルの事務局からいきなり電話が、飛び上がるくらい驚きました!
この6月に東京サントリーホールでフェドセーエフさんの指揮で初めて協奏曲をご一緒させていただきます。彼は2003年のチューリッヒでのゲザ・アンダ・コンクールで審査員長をなさっていて、私のファイナルで演奏したショパンの協奏曲がとても印象よかったのか、2004年11月の東フィル定期公演に声をかけて下さいました。私はまだ日本ではコンサート活動をしたことがなかったので本当にびっくり。東フィルの事務局からいきなり電話をいただき、飛び上がるくらい驚きました。信じられませんでしたね。。。
その時は東京オペラシティとサントリーホールで弾かせていただきました。残念なことにお声をかけてくださったフェドセーエフさんはその時、ご病気で来日することができなくなり、小林研一郎さんが指揮をされました。これが私の日本デビューでした。この時をきっかけにして日本での演奏活動が広がりましたので本当に感謝しています。
そして出会いから6年経ってこの6月にフェドセーエフさんと共演させていただくわけですから、楽しみです。チャイコフスキーの協奏曲No1を演奏するのですが、この曲は初めて。今までこの曲は男性的なイメージでがつん!がつん!!としたパワーが必要だと思っていたのですが、取り組んでみると結構私に合ってるかも。。。(笑) ぜひたくさんの方に聴いていただきたいですね。
他に今年は大阪でラヴェルの協奏曲、京都ではラフマニノフのパガニーニの主題による狂詩曲などのコンサートも予定されています。今は何にでも挑戦する時期なので、どんどん取り組んでいきたいですね。
ヤマハピアノの印象
とてもクリアで粒が揃っていると思います。どんな人にも弾きやすいピアノではないでしょうか。繊細な音が出しやすい点が気に入っています。でもベースも分厚いんですよね。日本に戻ってきたときはいつも丁寧に調整されたCFIIISで練習できるので大変有り難い境遇にいます!
これからピアノを楽しむ方へのメッセージですか?
そうですね。。。「音楽」とは音を楽しむこと。別に難しく考えないで、どんな音を出したいのか、どんな情景が浮かぶのか、とにかくイメージを持つこと、そしてそれを大切にすることがピアノを楽しむコツかな。
※上記は2009年4月13日に掲載した情報です。