ASIO-Guard について

2013/02/08 公開

Cubase 7、Nuendo 6 において、Steinberg はオーディオエンジンをアップデートしました。新しいエンジンは、安定性、パフォーマンスの両面で向上しています。

新しいオーディオエンジンが搭載する ASIO-Guard テクノロジーは、オーディオ処理負荷の突発的なピークなどの問題に効果的に対処します。特に OS X 環境において、パフォーマンスをより安定させ、ドロップアウトを減少させることができます。Windows 環境においても、ハードウェアの組み合わせによりますがパフォーマンスの向上が得られます。

背景

Cubase と Nuendo のオーディオエンジンは元来、すべてのオーディオシグナルをリアルタイムで処理、再生するように設計されています ― つまり、あなたが聴く音は、CPU によってたった今処理された音です ― このため、ASIO 処理の中でオフセット(レイテンシー)がわずかに発生しますが、バッファーサイズの設定を詰めることにより、ほぼ聴き取れないレベルまでレイテンシーを抑えることができます。

バッファーサイズとはおおまかに言えば、ASIO でのオーディオブロック処理に用いる時間枠のことです。バッファーサイズを小さくすればするほど、コンピューターシステムが適確に設定されていること、ドライバーの性能が高いことが求められます。これらの条件が整ってはじめて、DAW アプリケーションは高い信頼性でオーディオを処理し、CPU リソースを最大限活用することができます。もしここで遅延が生じれば、オーディオブロックの処理が時間枠からはみ出し、オーディオのドロップアウト(音飛び、プチノイズ)が発生します。

このような遅延の発生には、OS、使用オーディオデバイス、ドライバー、そしてシステムの設定など、いくつもの要因がありますが、症状としてはいつも同じで、CPU パワーが十分であるにも関わらず、ドロップアウトが発生するというものです。

ASIO-Guard

このようなドロップアウトに対し、ASIO-Guard は ASIO の厳格なリアルタイム処理要求から独立し、フレキシブルに処理を行います。CPU が処理を行っているとき、リアルタイム処理以上に時間 (CPU リソース) の余裕がある場合は、次に来るバッファーブロックを前もって計算し、次の ASIO ブロックサイクルに備えます。この方法によって安定性を向上させ、またオーディオ処理全体のためのリソースを効率化することができます。

一方、ハードウェア環境だけではなく使用法によっても、オーディオパフォーマンスは左右されます。たとえば、入力モニタリングを有効にしているオーディオチャンネルはリアルタイムパスでの処理が必須であり、事前にオーディオシグナルを処理する ASIO-Guard を活用することができないため、ドロップアウトのリスクが残ります。

ASIO-Guard を有効にすると、Cubase / Nuendo は、可能な限りリアルタイム処理ではなく先読み処理を行います。この振り分けは状況に応じて自動的に行われます。モニタリング有効のチャンネルは ASIO-Guard のパスから除外され、モニタリング無効にすると再び ASIO-Guard のパスに戻ります。このように ASIO-Guard の動作は設定に応じて変化するため、CPU 負荷も変動します。VST パフォーマンスメーターを開いてモニターするよう、おすすめします。

  • ASIO-Guard は、「デバイス」 > 「デバイス設定」 > 「VST オーディオシステム」の「ASIO-Guard」オプションで有効化できます。
  • 「マルチプロセッサー対応」オプションを有効にする必要があります。

ASIO-Guard の制限事項

オーディオチャンネル、インストゥルメントチャンネル (共に、エフェクトプラグインを含む)だけが、ASIO-Guard に対応しています。初期状態では、インストゥルメントはすべて ASIO-Guard 無効に設定されています。「プラグイン情報」ウインドウの「ASIO-Guard」欄で、個々のインストゥルメントおよびエフェクトプラグインに対して有効/無効の設定をすることができます。

ASIO-Guard は、以下に対しては適用できません:

  • リアルタイム処理が必要なオーディオ信号
  • 複数の MIDI ソースを持つ VST インストゥルメント (HALion Sonic SE など)
  • ディスクストリーミングを使用している VST インストゥルメント
  • 特定のコントローラーを使用している VST インストゥルメント (Native Instruments Maschine など)
  • 外部音源やエフェクトをコントロールするための VST エディタープラグイン
  • 外部エフェクト、外部インストゥルメント
  • VST Bridge を使用しているプラグイン

ご注意:

オーディオチャンネルをモニタリング有効にする、または VSTi トラックを録音可能状態にすると、そのチャンネル/トラックは ASIO-Guard からリアルタイム処理に切り替わります(逆も起こります)。この切り替えの際、わずかにフェードイン / フェードアウトが発生する場合があります。