大阪・関西万博 よしもと waraii myraii館がNEXOのラインアレイを設置 ~ イベントスペース『アシタ広場』で活躍する「GEO M10」/「P12」~
Japan/Osaka May 2025

去る4月13日に大阪・夢洲の特設会場で開幕した2025年日本国際博覧会(通称:大阪・関西万博)。158もの国・地域が参加し、“いのち輝く未来社会のデザイン”という標語のもと、2025年10月13日まで、184日間にわたって開催されます。
民間の企業・団体も13社参加している今回の万博ですが、地元大阪の吉本興業ホールディングス株式会社は、よしもと waraii myraii館という個性的なパビリオンを出展。笑顔の球体『タマー』とイベントスペース『アシタ広場』で構成されるよしもと waraii myraii館では、連日“笑い”をテーマにした様々な催しが行われ、多くの来場者で賑わっています。
そしてよしもと waraii myraii館の『アシタ広場』の音響を支えているのが、NEXOの「GEO M10」と「P12」です。「GEO M10」はメインスピーカーとして片側4/2対向のシステムが設置され、モニター/ディレイスピーカーとして「P12」も併用。多くの来場者が行き交う喧騒の中、クリアで明瞭度の高いサウンドを観衆に届けています。
よしもと waraii myraii館「アシタ広場」の音響システムのプランニングを担当した株式会社よしもとブロードテック部長の四藤 史郎 氏、同じく株式会社よしもとブロードテックの西川 裕哉 氏、三友株式会社取締役の 辰巳 陽一 氏に、今回の万博でNEXO製品を設置された経緯と、現場での使用感についてお話を伺いました。
隣接するパビリオンへの音漏れを考慮して、メインスピーカーはラインアレイを選定
開幕以来、多くの人で賑わっているよしもと waraii myraii館の『アシタ広場』ですが、パビリオンの敷地にイベントスペースを設けるというアイディアは初期の段階からあったのですか?
四藤氏:
よしもと waraii myraii館のメインエントランスは、丘の上に浮かぶ『笑顔の球体 タマー』ですが、私は「いろんなモノのアシタがある」というコンセプトの『アシタ広場』の方の設計に、初期段階から参加しました。広さは約20m四方あり、万博でいちばん笑い声が響くパビリオンをめざし、スピーカー等の音響機材は西川に選定させ、三友株式会社と一緒に設置方法を検討しました。

『アシタ広場』では、どのような催しが行われているのですか?
四藤氏:
来場者の皆様にはさまざまなイベントやショーを楽しむことができる自由に行き来していただけるイベントスペースとなっています。芸人たちによる様々なコメディショー、言葉が通じなくても楽しめるノンバーバルパフォーマンス、日本の伝統芸能「盆踊り」にカラオケやダンスアレンジを加えた参加型イベント「盆踊りのアシタ」など、盛りだくさんのエンターテインメントをご用意しています。
笑顔検知ツールを使用し、ご来場者様の笑顔がどのくらい集まったかを計測したりもしています。

『アシタ広場』では、メインスピーカーとして「GEO M10」をご活用いただいていますが、音響システムの概要をおしえていただけますか。
西川氏:
ミキシングコンソールはヤマハさんの「QL5」で、I/Oラックは「Rio3224-D3」が1台です。入力で使っているのは、ワイヤレスマイクが10ch程度、あとはVTRや音効のパソコンの出力が入るくらいですね。入力を1台の「Rio3224-D3」に集約することで、「QL5」を別の場所に移動しても、LANケーブルを挿せばどこでもオペができるシステムにしてあるんです。
四藤氏:
「QL5」を移動できるようにしたのは、今回さまざまな事情で、音響スペースを舞台が見えない場所に作らざるを得なかったんですよ。音響スペースと舞台の間に窓を付けるという話もあったのですが、プレハブではなくテントなので、窓を付けるのは難しい。それで結局、55インチの4Kモニターを窓代わりに取り付けたのですが、会期中何があるか分からないので、一応「QL5」も動かせるようにしておこうと。でも、55インチの4Kモニターで十分舞台の様子は分かるので、閉幕まで「QL5」を動かすことはないかもしれませんね。
西川氏:
メインスピーカーは「GEO M10」が片側2/4対向で、モニターとディレイスピーカーとして「P12」も設置してあります。アンプは「NXAMP4x2MK2」で、接続はアナログで行なっています。最初、メインスピーカーはポイントソースを考えていたのですが、すぐ隣りに他社のパビリオンがあるので、音を制御できるスピーカーの方がいいと思い、ラインアレイを設置することにしたんです。
四藤氏:
騒音ガイドラインより、敷地内において騒音レベルを85dB未満に抑え込む必要がありました。ちなみに、会場内にはBSよしもとのサブもあり、生中継に対応できるシステムになっているのですが、そこではヤマハさんの「DM7」を使っています。サブの「DM7」と『アシタ広場』の「QL5」は、Danteでリンクできるようになっています。

「GEO M10」は本当に言葉が明瞭で、心なしかお客さんもいつも以上に笑っているような気がする
ラインアレイを設置するにあたって、複数の選択肢があったと思うのですが、「GEO M10」を選定された理由をおしえてください。
西川氏:
NEXOのスピーカーに関しては昔から使用していて、「GEO M10」は何度かデモさせていただいたのですが、そのときの印象がすごく良かったんです。僕らはお笑いの現場が多いんですけど、人間の声が明瞭に聴こえるスピーカーだなと。漫才の定番、サンパチとの相性も良く、オフマイクの拡声もしっかりしている。2022年の『M-1グランプリ』の準決勝でも使用したのですが、本当に言葉が明瞭で、心なしかお客さんもいつも以上に笑っていたような気がします(笑)。あとは今回の万博の予算に合ったというのも大きいですね。
辰巳氏:
こういった案件では2~3社お見積もりを出すのが普通なのですが、今回は最初から「GEO M10」一択で、完全に決め打ちでしたね。「GEO M10」が、予算内で最もパフォーマンスに優れたラインアレイということを、よしもとさんが十分理解されていたんです。

片側2/4対向という構成に関しては?
西川氏:
ヤマハさんにシミュレートしていただいて決定しました。
四藤氏:
プランニングの段階では、催しが盆踊りくらいしか決まっていなかったんですけど(笑)、『アシタ広場』くらいのスペースであれば、これくらいの構成で十分だろうと。
辰巳氏:
今回は屋外への設置になるので、「GEO M10」は固定設備仕様のものを選定しています。

「GEO M10」は、トラスの円柱に取り付けてあるのですか?
辰巳氏:
そうです。トラスの設計は先に出来上がっていたのですが、100kgを超えるようなスピーカーを吊るせるような構造にはなっていなかったんです。それで弊社の技術スタッフと検討し、トラスの円柱にくくり付けようということになりました。
四藤氏:
舞台上にスタックして設置するという案もあったのですが、舞台にお客さんを上げるという話もあったので、スピーカーを置くのは危ないだろうと。
辰巳氏:
もちろん、円柱に取り付けるためのアタッチメントなど用意されていないので、今回は専用で鉄製の取り付け金具を製作しました。強度の関係で、円柱に穴を開けたり、何かを打ち込むことはできなかったので、金具で円柱を挟み込む形で固定しています。スピーカー側はNEXO純正のコの字形の金具を使用しているので、円柱もスピーカーも、一切加工せずに設置することができました。
西川氏:
円柱への取り付け角度は、ヤマハさんとディスカッションしながら決めました。

音響システムの設置で、何か苦労はありましたか?
辰巳氏:
どのパビリオンも同じだと思うのですが、スケジュールが非常にタイトで、それが一番大変でしたね。また、設置工事は2月の終わりに行ったのですが、会場内にはまだ雪が残っていたので、担当者は寒さがかなり辛かったと言っていました。トラスは高いところで10メートル以上ありますし、海も近いですからね。
今回、会期が半年間ということで、その間にゲリラ豪雨があるでしょうし、台風も来るでしょうから、雨風対策は入念に行いました。一応、屋根は付いているのですが、横から雨が吹き込むことを想定して、コネクターボックスなどにはカバーを取り付けています。
開幕して約1ヶ月が経ちますが、「GEO M10」の使用感をお聞かせください。
四藤氏:
おかげさまで問題なく運用できていますし、出音もお客さんから大変好評です。これまで、声が聴き取れないという話は聞いたことがありません。広場に来ていただいた方には、くまなく音が届いている感じです。
西川氏:
カラオケ大会のMCを担当した芸人さんが、“めちゃくちゃええ音や”と言っていましたね。“こんなええ音でカラオケ歌えんのは最高や”と(笑)。

「GEO M10」のカバーエリアの制御性能はいかがですか?
西川氏:
狙ったところにしっかり音が飛んでくれるので、非常に使いやすいスピーカーだなと思います。思いのほか、お客さんが後方に集まるので、ディレイスピーカーの角度をもう少し上げた方が良かったかなと思ったのですが……。でも角度を上げると、周囲への音漏れが問題になりますし、今くらいでちょうど良かったのかなと思っています。
万博閉幕後、音響機材はどうするのですか?
四藤氏:
吉本興業グループが運営する劇場がいくつもありますので、そこで使うことになると思います。
最後に、NEXO/ヤマハ製品に対する印象をお聞かせいただけますでしょうか。
西川氏:
やっぱり一番は手厚いサポートですよね。何かあったら、電話1本で駆けつけてくれますから。万博のような現場でも安心して使うことができます。
四藤氏:
それとヤマハさんの卓なら、音響屋さんであれば使い方を知らない人はいないというのも大きいですね。
西川氏:
どこに行ってもありますからね。よしもとの劇場も9割以上ヤマハさんの卓です。
本日はお忙しい中、ありがとうございました。
