【音像制御システム「Sound xR Image」使用事例レポート】体験型エンターテインメントイベント「Ehtel -“Release” Party- Produced by SWAG」/ 東京
Japan/Tokyo Jul. 2026
2026年7月22日から8月28日まで渋谷ストリームホールにて、体験型エンターテインメントイベント「Ehtel -“Release” Party- Produced by SWAG」が開催されました。そのイベントにおいてイマーシブな音響演出を可能にするヤマハの音像制御システム「Sound xR Image」が使用されました。
その狙いや目指した効果、使用感などについて、株式会社SWAG プロデューサー 志満津 勇馬 氏、同 クリエイティブディレクター 伊藤 大輔 氏、そして音響を担当した有限会社プレストーン ENGINEER/DIRECTOR 栃尾 恒樹 氏、同 岩野 和美 氏にお話をうかがいました。
「Ehtel -“Release” Party-」概要
イベント名:「Ehtel -“Release” Party- Produced by SWAG」
期間:2026年7月22日(水)~ 8月28日(金)
会場:渋谷ストリームホール(4F・5F・6F)
主催:UKAB Lab.(制作・演出:株式会社SWAG)
「Ehtel -“Release” Party- Produced by SWAG」は、架空のエナジードリンク「Ehtel」の発売記念を装い、映像、音響、光、立体造形などの最先端技術を融合させることで五感を刺激する没入型のエンターテインメントイベントとして開催されました。会場は渋谷ストリームホールの4F、5F、6F。4Fには試飲やグッズ販売を行うポップアップストアが、5F・6Fでは体験型エキシビションが展開されました。
イベント詳細についてはこちらをご覧ください。
https://ehtel.ukab-lab.com/
「Ehtel -“Release” Party-」における「Sound xR Image」の再生システムについて
ヤマハの音像制御システム「Sound xR Image」は5Fで展開された「Auditory」で使用されました。
この展示は聴覚で受けた刺激が聴覚神経を経由して脳に伝達され、脳内でシナプスが爆発的に発火する過程を表現するメディアアートです。音、光、振動、そして風を連動させることで全身を包み込む圧倒的な没入体験を提供するものです。
「Sound xR Image」による立体音響システムは体験者8人が中心を向いて座る放射型の配置で構築されており、各座席に対し上・中・下の3層の縦レイヤーにスピーカーが設定されました。
スピーカーにはヤマハの超小型モデル「VXS1MLB」を計24基、中心部にサブウーファーを1基、そして8つの各座席には振動を与えるボディソニックが搭載されました。
「Ehtel -“Release” Party-」×「Sound xR Image」インタビュー
メディアアートで表現するまったく新しい
体験型エンターテインメント「Ehtel -“Release” Party-」
「Ehtel」で異彩を放った空間インスタレーション「Auditory」。そのコンセプトや「Sound xR Image」を導入した理由、そして使い勝手などについてうかがいました。
「Ehtel -“Release” Party-」にはどんな狙いがありましたか。
志満津氏:
「Ehtel -“Release” Party- Produced by SWAG」は、UKAB Lab.主催のもと、弊社が制作・演出を手掛けたイベントです。架空のエナジードリンクブランド「Ehtel(エテル)」とその開発元の発売記念パーティという設定で展開しました。ブランド自体はフィクションですが、会場では一から開発した本物の超酸っぱいドリンク(2万5千本製造)を試飲・体験できます。この「現実とフィクションの交差」が、本イベントの最大の特長です。
ノンフィクションベースでお話すればSWAGとしては、一般のお客様にチケットをご購入いただいて開催する初のBtoC主催事業でした。これは単に収益化を目指すだけでなく、自社の技術や空間演出のプレゼンテーションというブランディングを兼ねた試みであり、さらに将来的なIP(知的財産)化や他地域での巡回展示までを見据えた挑戦的なプロジェクトでした。
具体的な「Ehtel -“Release” Party-」の内容について教えてください。
志満津氏:
このイベントは、従来の鑑賞型メディアアートとは異なり「刺激」をテーマにした空間演出と、練り込まれたストーリーを掛け合わせているのが最大の特長です。私たちが得意とする最新テクノロジーを駆使した音と光の空間は、それ単体でもイベントとして十分に楽しめます。しかし今回は感覚的に楽しむだけではなく、随所に隠された背景や仕掛けを知ることでより深い世界観へ入り込める、いわば「二層構造」の体験に仕上げました。
このストーリー体験を成立させるため、いきなり現実からメディアアートの空間に足を踏み入れるのではなく、4Fに「現実世界にあるドリンクのポップアップストア」という導入を設けています。日常から物語が始まり、順路に沿って非日常的なメディアテクノロジー空間へと進む。体験全体がひとつのストーリーとしてつながる設計にしています。
メディアアート展のために実際にエナジードリンクを開発するのはすごいですね。
志満津氏:
メディアアートと「刺激」というキーワードは非常に相性が良いのですが、今回は視覚や聴覚への刺激だけでなく、実際に刺激的なドリンクを「体に入れる」という物理的な体験を伴わせることで、より深い身体的没入感を生み出せると考えました。それを実現するためパッケージデザインから味の設計に至るまで、本気で一からオリジナルドリンクを制作しました。会場では、チケットをご提示すればこのドリンクを1本お渡しする仕組みで、フィクションのドリンクを現実の刺激として味わうことができます。
「Sound xR Image」が可能にした縦軸3層の配置と
それを実現した「裏返しミックス」による新たな没入体験
「Sound xR Image」を採用した体験コンテンツ「Auditory」のコンセプトを教えてください。
伊藤氏:
エキシビションエリアには10個の体験コンテンツがあり「Auditory」はその最初のほうに位置するコンテンツです。「Auditory」は聴覚の刺激がどうやって脳に伝わるのか、がモチーフで、オブジェを「シナプスの受容体」の形状にデザインし、聴覚からの刺激が脳に伝達されて脳内で爆発的な発火が起きる様子を表現しています。それを音と光、座席の振動(ボディソニック)、さらに中央から吹き出す「風」を連動させることで、刺激の波動や動きを没入型のインスタレーションに仕上げました。
「Auditory」で「Sound xR Image」を採用した理由を教えてください。
栃尾氏:
私はこれまでにもヤマハの「Sound xR Image」を使用した経験があり、今回のコンテンツで没入感を高める音表現を実現するにはこれしかないと迷わず選定しました。
「Auditory」での具体的な使用機材を教えてください。
栃尾氏:
計画当初はNEXOの「ID14」の予定でしたが、重量の都合でヤマハの超小型スピーカー「VXS1MLB」に変更となりました。軽量でコンパクトなモデルを採用したことで設置の自由度が飛躍的に高まり、当初予定していた「上部に8基」を上・中・下の3層(縦レイヤー)に各8基、計24基構成へと拡張でき、より没入感の高い体験を実現しています。また「VXS1MLB」は観客がその存在に気付かないほど小型なので、空間のデザイン性を一切損なうことなく、理想的な音場を構築できたのも大きなメリットでした。
通常のイマーシブ音響はスピーカーが聴衆を取り囲む「密閉型」ですが「Auditory」はスピーカーが中央に放射状に設置された「開放型」です。これはどんな発想で生まれたのですか。
栃尾氏:
「シナプスの受容体」をモチーフとし、体験者が放射状に内側を向いて座る空間デザインだったため、音響演出としても音が中心から外側へ広がっていくアプローチが必要でした。そのため従来のイマーシブ構造とは正反対の発想になりました。具体的なミキシングにおいても今までにない発想が必要でした。
というのもイマーシブのミックス作業は聴取者が中心にいる従来型の環境でしか行えません。そのため今回はスタジオの仮想空間の中心にいわば「8方向の耳を持つ聴取者」を置いて音場を構築し、それを現場で外向きに反転させる「裏返しミックス」という手法を試みました。斬新な手法でしたが「Sound xR Image」はオブジェクトの処理が丁寧で、相対的な距離の変化を音量のみで表現してくれる点が素晴らしいです。だからこそ特殊な使い方をしても、ソフト上の多少のテクニックでの調整と現場での補正で対応できました。
「Sound xR Image」を実際に現場で調整してみた感想はいかがですか。
氏:
今回は、あらかじめスタジオのDolby Atmos(7.1.4ch)環境で音源を制作し、そのマスターデータをNuendo経由で読み込んで再生しました。「Sound xR Image」は、円形をはじめとするレンダリングエリアの範囲設定が非常に柔軟です。そのためスタジオで作り込んだ立体音響のイメージを思ったよりスムーズに現場のシステムで再現することができました。
「Auditory」での「Sound xR Image」を使ってみての感想をお聞かせください。
伊藤氏:
開放型イマーシブ音響という今までにない試みとなりましたが、外向き放射型配置でも精緻な立体音響が実現できました。これによって、今後より多くの人にイマーシブ空間を提供できると考えています。
志満津氏:
「Sound xR Image」は癖のない高精度なシミュレーションが行えるので、今回のように斬新な使い方をしても、試行錯誤で時間を浪費することなく、調整時間が大幅に短縮できました。その時間をよりクオリティを高める時間として使えたのが非常に大きなメリットでした。「Sound xR Image」は今回のような挑戦的な演出を目指すイベントでは頼りがいのあるシステムだと実感しました。
ご多忙中ありがとうございました。
X:Ehtel(エテル) 公式 | UKAB Lab
https://x.com/ehtel_ukablab
株式会社SWAG | 映像 デザイン クリエイティブ制作
https://www.swag.pics
音像制御システム「Sound xR」について
「Sound xR Image」とは
「Sound xR」は、音像を3次元的にかつ自在に定位・移動させることで、演劇、オペラ、コンサート、インスタレーションなど多彩なシーンでイマーシブな音響演出を可能にするオブジェクトベースの音像制御システムです。
主な特長
- 洗練されたGUI上でのオブジェクト操作や音像サイズ調整により、緻密かつ迅速な音像コントロールが可能
- 特定のスピーカーセットにのみオブジェクト再生を割り当てできるスピーカーゾーニング機能を搭載
- 3Dリバーブシステムを搭載し、それぞれのリスニングエリアにて臨場感ある残響と音場を実現
- DAWやコンソールのパンニング操作を実空間の形状に最適化するレンダリングエリアコンバージョン機能を搭載
詳しくは「Sound xR」製品ページをご覧ください。