【ヤマハイマーシブソリューション「Sound xR」使用事例レポート】『Japan Mobility Show 2025』ヤマハ発動機ブース Part.2 テクニカル編

Japan/Tokyo Oct. 2025

2025年10月東京ビッグサイトにて「Japan Mobility Show 2025」が開催されました。そのヤマハ発動機株式会社のブースの音響演出にヤマハのイマーシブオーディオソリューション「Sound xR」の「AFC Image」機能が使用されました。

レポートPart.2「テクニカル編」では、イマーシブミックスを担当したサウンドエンジニア サカタコスケ 氏、ブースの音響機器設置とショーでのオペレーションを担当した株式会社綜合舞台のピウポーン・パンタナパット 氏に「AFC Image」の実際の使い方やシステムの使い勝手、今後のイベントにおけるイマーシブオーディオの活用の可能性などについてお話をうかがいました。


Japan Mobility Show 2025 ヤマハ発動機ブース×「AFC Image」インタビュー
イマーシブオーディオの最大のメリットは「分離感」と「迫力」

サウンドエンジニア サカタコスケ氏 インタビュー

サウンドエンジニア サカタコスケ 氏

サカタさんはこのプロジェクトでどんな作業を担当されたのでしょうか。

サカタ氏:
ブース内で再生する音源や音素材のイマーシブミックスを担当しました。

ミキシングした音素材と「AFC Image」との相性はどうでしたか。

サカタ氏:
音源については初期段階から「工場の環境音や機械音をふんだんに入れたい」という構想がありました。そして実際にいろんな音が幾重にも積み重なるような音源が仕上がってきて、その音素材をミックスしましたが、空間を立体的に広く使える「AFC Image」は、多くの音像を配置するのに適していて非常に相性が良かったです。ステレオでミックスしたとしたらかなり苦労したでしょうね。「AFC Image」が使えて良かったです。

ミキシングにおいてステレオとイマーシブオーディオにはどんな違いがありますか。

サカタ氏:
ステレオにはステレオの良さがありますが、イマーシブオーディオの最大のメリットは「分離感」と「迫力」です。この点はイマーシブが圧倒的にいいです。たとえばステレオミキシングの場合、今回の音源のように音数が多いと、どうしても音が重なってお互いを打ち消し合う「マスキング」が発生します。それを避けるためにはEQなどを駆使し、重なる帯域を削って音を整理します。でもこれはある意味で音を削って、痩せさせているとも言えます。しなくていいなら、そのほうがいい。そのマスキングがイマーシブオーディオで起きにくいのです。

イマーシブオーディオではなぜマスキングが起きにくいのですか。

サカタ氏:
正確に言えばマスキングは発生しますが、イマーシブオーディオなら出し先を変えるだけで簡単にマスキングが回避できます。イマーシブオーディオでは多数のスピーカーを使用するから、マスキングが起きそうなら別のスピーカーに振ればいい。たとえば「この音をセンターに置きたいけど、ボーカルと被るな」と思ったら、センターの奥のスピーカーに逃がせばいい。それだけで解決します。

ですからイマーシブオーディオのミックスは素材の音を良くしたら、あとは配置するだけでいいんです。個々の音の自然な迫力を残したままミックスできるわけです。無理に音を削る作業は必要ありません。これはステレオミックスにはない最大のメリットだし、ミキシングエンジニアとしての喜びでもあります。

事前にスタジオでミキシングしたサウンドイメージと、実際のイベント会場の広いスペースで再生した音にギャップはなかったですか。

サカタ氏:
そこが最大の心配でしたが、驚いたことにあまりギャップを感じませんでした。ヤマハの研究室にお邪魔してミックス作業をしたのですが、そこで作った音と東京ビッグサイトでの出音が、ほぼ同じ印象で鳴ってくれたんです。サイズも再生したスピーカーも違うのに、です。

これは「AFC Image」がオブジェクトベースであることと、今回の音響システムの全機器がヤマハで統一されていたことが理由だと思います。NEXOの「DME10」とスピーカーとNEXOのアンプ、そしてヤマハのスピーカーとミキサー「RIVAGE PM5」。システム全体がヤマハグループの製品で構築できることの強みを感じました。

「AFC Image」のオブジェクト設定画面

今回のミキシングで特にこだわったポイントを教えてください。

サカタ氏:
メインの聴きどころとしては初音ミクのライブや、管楽器ガールズグループ「MOS」の演奏シーンですが、エンジニア視点としては、BGMや効果音で「AFC Image」を駆使していて、特にこだわったのがナレーションの定位でした。

ナレーションはどんな定位だったのですか。

サカタ氏:
ナレーションは通常は前方のセンターに置くのがセオリーです。しかし今回のように会場が広く、お客様が自由に歩き回れる場合、前方からナレーションを出すと最前列はうるさくて後列は声が聞こえづらい。そこで今回は「AFC Image」でナレーションを上方に定位させました。

ナレーションの声を上から降らせた、ということですか。

サカタ氏:
そうです。ナレーションを「天の声」のように上から音が降ってくる形にすることで、すべてのお客様に均一なバランスで声が届きます。オーディオの発想ともライブPAとも違う、イベントにおけるイマーシブオーディオならではの音響空間が作り出せたと思います。

ありがとうございました。


Japan Mobility Show 2025 ヤマハ発動機ブース×「AFC Image」インタビュー
膨大な入出力数をプロセッシングできるNEXO「DME10」とその信号が扱える「RIVAGE PM5」が必須だった

サウンドオペレーション担当 ピウポーン・パンタナパット 氏(株式会社綜合舞台)

ピウポーン・パンタナパット氏(株式会社綜合舞台)

Japan Mobility Show 2025のブース音響システムの概要について教えてください。

パンタナパット氏:
信号のフローとしてはまず音源、マイク音声が「RIVAGE PM5」を介してNEXO「DME10」に入ります。そこで「AFC Image」の信号処理を行い、その音声がデジタルミキシングコンソール「RIVAGE PM5」に戻り、バランスをとって出力先のアンプとスピーカーに送られます。入出力数が多くて膨大な回線数でしたがシステム全体をDanteで構築したので非常にスマートに構築できました。

今回のシステムの中枢となったプロセッサーNEXO「DME10」はいかがでしたか。

パンタナパット氏:
名機と謳われたヤマハのシグナルプロセッサー「DME64」を長く愛用していたので、その後継ならと思い、ヤマハさんに相談して使用を決めました。やはり圧倒的に能力が高く、使い勝手も非常に良かったです。「AFC Image」は「DME7」でもプロセッシングが可能でしたが、出力が50を超える今回の規模では圧倒的な処理能力のNEXO「DME10」が不可欠でした。

シグナルプロセッサーNEXO「DME10」

スピーカーの構成についても教えてください。

パンタナパット氏:
スピーカーはすべてNEXOとヤマハで統一しました。ステージ側のメインのラインアレイはNEXOの「STMシリーズ」と「GEOシリーズ」を使い音圧を確保しました。ブースをぐるりと囲ったサラウンドスピーカーには小型で高出力なNEXO「ID24」を使用し、天井のシーリングスピーカーにはナチュラルな音のヤマハ「CZR12」を使用しました。

NEXO「STM M46」「STM S118」
NEXO「ID24」
NEXO「GEO M10」
ヤマハ「CZR12」
舞台奥に設置されたNEXO サブウーファー
NEXO パワードデジタルTDコントローラー「NXAMP4x4」

展示会場という特殊な環境でしたが、スピーカーはどのように調整したのですか。

パンタナパット氏:
音響設計の段階でNEXOのシミュレーター「NS-1」を使用しました。そこで推奨配置を割り出し、ブースの構造に合わせて基本プランを作成しました。それによってほぼ理想に近い状態を割り出したのですが、実際の現場ではそう簡単にはいきませんでした。

それはどういうことですか。

パンタナパット氏:
いざ現場となると、会場やイベント自体に吊荷重の制限があったり、照明や映像機器などとの位置の調整もあり、実際の設置状況は非常にシビアでした。理想と制約の狭間で試行錯誤を繰り返し、重量制限や他機材との干渉をクリアするベストな位置を探しながら構築しました。

「AFC Image」の音響についてはどう感じましたか。

パンタナパット氏:
これまでのステレオが「面」で聴こえるサウンドだとすると「AFC Image」のイマーシブオーディオは「音に包まれる」感覚でした。ライブの時などはバンド演奏の中に自分が入り込んでいるような没入感があって、これは従来の方式では絶対に味わえない体験でしたね。

デジタルミキシングコンソール「RIVAGE PM5」の導入理由を教えてください。

パンタナパット氏:
今回の音響システムはスピーカー出力だけで39ch、配信やモニター回線を含めると約50出力にもおよぶ巨大なシステムでした。これだけの回線数を制御するためには圧倒的な入出力数を誇る「RIVAGE PM5」が必要でした。というか「RIVAGE PM5」でなければ今回のサウンドシステムは成立しなかったと思います。余裕を見てDSPユニットに「DSP-RX-EX」を使いましたので、最終的には最大288ch入力、最大108ch出力というモンスターグレードの処理能力を持たせました。

「RIVAGE PM5」
「DSP-RX-EX」

「RIVAGE PM5」の操作性はいかがでしたか。

パンタナパット氏:
このショーはワンマンでオペレートしましたが、これだけの規模のイマーシブライブを1人でオペできたのは「RIVAGE PM5」の卓越した操作性があってこそでした。特に3つのタッチディスプレイがあって、それぞれを独立して操作できる点が素晴らしかったです。中央の画面で今のショーを操作しながら、右の画面では次のステージの回線準備をする、といった並行作業が楽に行えました。

今後の展示・イベントでの音響システムでイマーシブオーディオにはどのような可能性があるでしょうか。

パンタナパット氏:
イベントの音響はコンサートのように一カ所で座って聴くものではなく、お客さんがいろんな場所に動き回りながら聴くものです。そんなイベントでは「AFC Image」のようなイマーシブオーディオのメリットは大きいと思います。たとえば今回は「ここにはこんな音が鳴っているのか」「あっちではあんな音が聞こえてくる!」というように、音の世界を歩き回れるようにしました。こうしたアプローチはイマーシブオーディオの大きな可能性であり、「ここでしか体験できない音」という価値が創造できると思います。

ありがとうございました。

ヤマハ発動機 Japan Mobility Show 2025 特設ページ
https://global.yamaha-motor.com/jp/showroom/event/japan-mobilityshow-2025/

Part.1はこちら


ヤマハ音像制御システム「AFC Image」について

「AFC Image」とは

「AFC Image」は、音像を3次元的にかつ自在に定位・移動させることで、演劇、オペラ、コンサート、インスタレーションなど多彩なシーンでイマーシブな音響演出を可能にするオブジェクトベースの音像制御システムです。

主な特長

  • 洗練されたGUI上でのオブジェクト操作や音像サイズ調整により、緻密かつ迅速な音像コントロールが可能
  • 特定のスピーカーセットにのみオブジェクト再生を割り当てできるスピーカーゾーニング機能を搭載
  • 3Dリバーブシステムを搭載し、それぞれのリスニングエリアにて臨場感ある残響と音場を実現
  • DAWやコンソールのパンニング操作を実空間の形状に最適化するレンダリングエリアコンバージョン機能を搭載

詳しくは「AFC Image」製品ページをご覧ください。

AFC

AFC(アクティブフィールドコントロール)は、あらゆる空間において、音を自在にコントロールし最適な音環境を創り出すことができるヤマハのイマーシブオーディオソリューションです。

RIVAGE PM Series

新世代のフラッグシップ・デジタルミキシングシステム。

CZR Series

CZRシリーズはポータブルで軽量でありながら頑丈な設計で、高出力と優れた音響性能を実現したパッシブスピーカーです。