躍動する「楽」を綾なす プリメインアンプ A-S3000
A-S3000
MOS FETを得て進化したフローティング&バランス・パワーアンプと
ローインピーダンスを徹底した回路設計――躍動する「楽」を綾なす
スピーカーターミナルは無垢の真鍮を削り出し
AS-S3000 音楽の実感 --- しなやかな低域が眼前に音楽を立ち上げる。
■機構設計
あたかも演奏者とあい対しているかのような、「音楽がここにある」という実感をオーディオルームに提供するには、
ヤマハ伝統の活きいきと伸びのある高域/あたたかみのある中域を、ただ重いだけではなく、芯があり、
かつ適度な響きを備えた低域のリズムと調和させることが必要不可欠です。
ここでの「芯があり、かつ適度な響きを備えた」とは、アタック/ディケイ/サステイン/リリースからなる
音のエンベロープが精密に表せていることに他なりません。
この低域の表現を実現するためには情報量を生かすパワーの供給とそれを損なわないためのロスの低減が重要です。
A-S3000の機構設計上の最重要課題は、より強固な、リジッドなコンストラクションの構築と
徹底したローインピーダンス化となりました。
構造上は新設計となる高剛性・二重構造のコンストラクションを採用し、徹底した振動対策、
信号経路の最短化を実現しました。
ボトムシャーシとインシュレーターとが外部からの振動を受け止め、各回路は独立したベースフレームによって
支えられるフローティング構造とすることで、振動の影響を徹底して排除。
理想的な重量バランスを考慮して、大型トロイダルトランス、コンデンサーから成る電源部は中央に配置。
プリアンプ部はリアパネル側に、パワーアンプ部とヒートシンクは前後のベースフレームで強固に挟みこんで
固定することで、左右対称のリジッド・ストリームラインド・コンストラクションを実現しました。
電源部とアンプ回路を構造的に独立させ振動の伝播を徹底して遮断するだけでなく、
微小信号を扱うプリアンプ部と信号増幅を行うパワーアンプ部を独立させることで、
相互の干渉により起こる音質の劣化を低減する理想的なシャーシ構造です。
また、パワー段そのものについても左右を完全分離した左右対称設計とすることで、 チャンネルセパレーションの向上や明瞭なステレオイメージを追求しました。 内部振動の原因となる大型トロイダルトランスをより強固にマウントするためには、 シャーシから独立した三次元構造ベースフレームを採用。銅メッキ処理が施されたベースフレームは、 凸型形状の高剛性インナーフレームと前後・左右のベースフレームを立体的に組み合わせた構造で、 全方向からの不要振動を低減。 さらにトロイダルトランスの取付ベースには、素材の音色を吟味し、より開放感のあるクリアなサウンドを 実現すべく真鍮を選定。コンストラクションの各部位に鉄・銅・真鍮といった異なった固有振動を持つ素材を使い分け、 振動を相殺させることで全体としての振動の抑制に成功しています。
ローインピーダンス設計については、インナーフレーム下部に配線スペースを設け、
トロイダルトランスからスピーカーへの電力供給や音楽信号の伝送など信号経路の最短化を物理的に実現。
線材には、一般家庭用屋内配線比で約40%インピーダンスが低いAWG No.12を使用し、
損なわないダイレクト感のある再生を可能にしました。
また、ベースフレームに施された銅メッキ処理も基準グランドのローインピーダンス化に寄与しています。
一次側はトランスへの外部電源ラインに入手可能な限り太いケーブルを使用、
二次側はトロイダルトランスから巻線そのものを取り出し、ダイレクトに電源モジュールの接続端子に真鍮のネジで結線。
接点ロス、はんだ付けなどによる信号伝達ロスを徹底的に抑え、
かつ瞬時の大音量時にもよどみない電源供給を可能にしました。
さらに、アンプの心臓部である電源部のブロックコンデンサーの配線、プリアンプ部とパワーアンプ部との接続、パワー段からスピーカー端子への配線など、信号伝送の上で重要な箇所にネジ止め結線を採用しダンピングファクターを向上、スピーカーの駆動力・制動力を高めることで、芯があってしなやかな低域を実現しています。
■回路設計
パワーアンプの出力素子としては一般的なバイポーラー型トランジスタではなく、MOS FETを採用。
その理由は、トランジスタよりもON抵抗が少なく、低域の表現やドライブ能力に長けていること、
そして電流制御であるトランジスタに対し、MOS FETは電圧制御であるため前の段の影響を受けにくいことでした。
カスタムメイドされた大型トロイダル電源トランスとの組み合わせにより、あたたかみがあり、
かつ豊かな音で、音源本来の情報量を余すことなく再現します。
MOS FETの採用により、ヤマハの特許技術であるフローティング&バランス・パワーアンプは、
求める音の実現に向けてさらに大きく進化しました。
出力段では、電源供給を含んだ全回路をグラウンドから完全に独立させることで、
微細な電圧変動やグラウンドをめぐる外来ノイズの影響を徹底的に排除し、
+側と−側で同一極性かつ特性の揃ったAUDIO用Nch MOS FETを使用。
NFB回路や電源供給も左右のチャンネルのそれぞれの+側と−側の計4個をすべてフローティングさせることで、
出力段におけるプッシュ−プル動作を完全に対称化(プル−プル化)、極性の違いによる音質差をなくし、
S/N比に優れた、音場感の高い音を実現しています。
そもそも、フローティング&バランス・パワーアンプの優位性は、出力段をグラウンドから完全に
フローティングさせることにより、電力(エネルギー)供給経路からのパワーアンプ回路の
独立を実現していることにあります。
通常のパワーアンプでは、スピーカーへの電力供給はアンプの出力素子を介しており、スピーカーの−側はグラウンドに接していますが、フローティング&バランス・パワーアンプでは、電力供給はスピーカーの+および−側に直接行われます。
すなわち、電源やスピーカー出力から見るとアンプは単なる制御素子であり、電源トランスからのエネルギーの流れは、アンプの増幅部とはフローティングされた最短の経路を通って、直接スピーカー端子へとつながっていくことになります。
コンストラクションやその部材の選定、トランスからの巻き線引き出し、ネジ留め結線、インピーダンスの低い線材の採用など、A-S3000では様々なローインピーダンス化への取り組みが行われていますが、これらの素材・部品・機構的な取り組み以前に、フローティング&バランス・パワーアンプそのものが、ローインピーダンス化技術の集大成だと言うことができるでしょう。
この世界でも類を見ないユニークでかつ合理的なアンプ回路は、信号伝送・増幅のフルバランス伝送との組合せにより、外来ノイズを排除するとともに、完璧なまでの増幅動作精度を現実のものとしました。
トーンコントロール回路を信号系から切り離したトーンディフィート時において、
全段フルディスクリート構成を実現。その動作を大量のNFBが支えるオペアンプを排除することで、NFBの影響を最小限に止め、スルーレートを向上しレスポンスを高め、活きいきと伸びのある高域を再現します。さらに、信号伝送・増幅のフルバランス伝送を採用し、制御系においてもバランス動作を徹底しています。
したがってこのA-S3000と、I/V変換回路がディスクリート設計であり、D/Aコンバーター以降の回路がすべてバランス伝送となっているCD-S3000とをバランス接続することにより、トータルなシステムとして理想的な全段フルディスクリート構成&フルバランス伝送を現実のものとすることができます。
またボリュームコントロールにおいては、スルーレートの低下や音色の色づけなど、オペアンプからの音質への影響を最小限に止めるため、ラダー抵抗のみで構成されたカスタム仕様の新日本無線社製高精度電子ボリューム素子を採用、ボリュームコントロールからもオペアンプを排除しました。
さらに、トーンコントロールにおいては、三連パラレル方式トーンコントロールを採用することで、直列方式のトーンコントロールで見られる音質への影響を最小限に止めています。
BASS、TREBLE、COMMON回路のそれぞれが、アンプのNFBを使わず、CR素子を直列に入れただけのシンプルな構成になっており、トーンコントロール時にもより純度が高い再生音、急峻な信号の変化にも素早く反応するレスポンスの良さを確保。トーンディフィート時には1つのボリュームとディスクリート構成のバッファーアンプのみのストレートな信号の流れを実現しています。
そして、MCヘッドアンプ付きフォノイコライザーあるいはヘッドホンアンプなど
アクセサリー回路もすべてディスクリート構成。アナログレコードの再生、そしてヘッドホン再生においても、A-S3000の音楽性豊かなサウンドを楽しめます。
スピーカーへの最終の出口であるスピーカーターミナルにも徹底してこだわり、無垢の真鍮を削りだしたオリジナルデザインの大型ハンドル付きの締め込み式端子を採用。音質劣化のない確実な接続を実現するとともに、優雅な印象を与え、回しやすく、軽い力でもしっかりと締め付けられるように配慮しています(バナナプラグ接続、Yラグ接続にも対応)。