HPH-MT8インタビュー / 株式会社スターテック サウンドエンジニア 高田 義博氏

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Japan/Tokyo, Jul 2017

HPH-MT220より定位感や分離感が格段に良くなった。

コンサートのPAではヘッドホンが音の基準

コンサートのPAにおいて、ヘッドホンはどんな時に使われるのでしょうか。

まずは回線チェックですね。仕込みの時間によってはスピーカーで音を出せない時もありますので、そんな時はヘッドホンでチェックをします。それから音質のチェックにも使います。ミキサーの出音をヘッドホンでチェックして、ヘッドホンがOKなのに、スピーカーから出ている音がちょっと違うのであれば、スピーカーのチューニングが違っている、と判断します。このようにコンサートのPAの音作りでは基準をヘッドホンに置いています。

ヘッドホンを使うのは、いわゆる「仕込みの時」だけですか。

本番でも使っています。特に定位の確認には欠かせません。というのも、PA席は必ずしもいい場所にあるわけではなくて、実際にはPA席がセンターにあることはほとんどありません。そういう時はスピーカーでは判断できませんので、ヘッドホンで定位を確認します。

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コンサートPAで定位は重要なのでしょうか。

レコーディングとは違って、音像を極端にL、Rに振りすぎると、客席の位置によってはLしか聴こえないお客さんやRしか聴こえないお客さんも出てきてしまいます。それでは困るので適度な定位の設定が必要ですので、その定位を確認するためにはヘッドホンを使っています。

コンサートPAで長時間ヘッドホンを着けることはありますか。

よくあります。場合によってはヘッドホンでしかモニターできないこともあります。例えば野外のコンサートでは、朝イチの時間帯だとサウンドチェックの時はFOHが音出し禁止だったりします。そうなるとヘッドホンでひたすらミックスしますから、1時間ヘッドホンを着けっぱなし、なんてことは珍しくありません。また、リハーサルスタジオにハウス卓を入れる時なども、スタジオにはPA用のスピーカーがありませんからヘッドホンでずっとモニターします。

HPH-MT220は高域の伸びと分離が良かった。

コンサートPAで使うヘッドホンの条件とはどんなものですか。

音の面でいえば、なるべくカラーリングがなく、原音をそのまま再生してくれるヘッドホンが理想です。さらにツアーなどでは過酷な状況が多いので耐久性も重視します。特に夏場の野外で使ったりすると汗でイヤーパッドがボロボロになってしまうんですよ。そんな中で私が実際に使い続けているのは国産の定番モデルと、海外のモデル。ヤマハのHPH-MT220も使っています。

PAの現場では複数のヘッドホンを使うのですか。

会社の現場では基本として国産の定番モデルとヤマハのHPH-MT220の2つを使っています。レコーディングのモニタースピーカーにスモールとラージがあるように、比較のため2種類のヘッドホンで聴くんです。

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HPH-MT220と国産定番のモニターヘッドホンとではどんな点が違いますか。

高音域の伸びはHPH-MT220のほうがあります。ただ中域のボーカルレンジは定番モデルのほうが前に出てくる気がしますね。分離に関して言うとHPH-MT220のほうがいいですね。定位がわかりやすいです。あと、物理的な問題かもしれませんがHPH-MT220はスピーカーと耳の距離感がちょっとあるせいか、空気感があるんです。定番モデルの場合はイヤーパッドが薄っぺらいので、耳に近くて直接聴いているような感覚です。

原音再生、定位と分離感がさらに向上したHPH-MT8

HPH-MT8を使ってみた印象をお聞かせください。

HPH-MT220でもかなりいいと思いましたが、定位感や分離は抜群によくなったと思います。

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音質についてはいかがでしょうか。

方向性はHPH-MT220と同じで「原音に忠実」というヤマハの路線をさらに進化させた感じがします。まだ使い始めたばかりでユニットが馴染んでいるかどうかがわからないので断言はできませんが、低域はしっかりしているんじゃないかと思います。高音域に関しても1カ月使ってみた現状ではとても良いです。

音以外の面ではどうですか。

PA用のヘッドホンってケーブルの長さは結構重要なんですよ。最近のデジタルコンソールは小さいのであまり問題はありませんが、ケーブル長が足りないと、大型のアナログコンソールで一番端へ行こうとするとガンってケーブルが引っ張られてしまうことがあります。だから僕はヘッドホンのケーブルをここにベルクロで引っかけるんですよ。こうすると断線やプラグの破損が防げるんです。

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コンサートPAならではのノウハウですね。ちなみにHPH-MT8で使っているケーブルはストレートコードだけですか。

いいえ、現場によって、小さいところはカールコードがいいし、大きいライブハウスや大きなコンソールがあるところはストレートの長いケーブル、と使い分けています。HPH-MT8はケーブルが両方使えるようになったのがいいと思います。カールコードだけだとグルッと裏返ったりするのが気になるんですよね。戻しても結局また裏返ったりするから(笑)。ストレートコードならその心配はありません。

HPH-MT8の装着感はいかがでしょうか。

いいですね。HPH-MT8のイヤーパットの材質は好きですね。しっとりしている感じが使いやすいです。あとサイズ。折りたためてコンパクトになるのが、ツアーなどだと荷物が多いので助かります。側圧は一見キツそうなのですが、パッドがいい感じなので、僕にはちょうどいいです。

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社内のエンジニアの方々の印象はいかがでしたか。

社内の何人かにMT8を使ってもらったところ、フィット感もいいし、定位がよくわかり、分離がいいと言う人が多かったです。あと、同じレベルでヘッドホンを差し替えてチェックすると、MT8はちょっと出力が大きく感じると言っていました。

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レギュラー入りするヘッドホンは、現場でどれくらい使って決まるのですか。

実際の現場での耐久性も含めて考えると、ワンツアーとか、半年とかの期間が必要だと思います。単発でもヘッドホンの音のクセは、聴けばだいたい分かりますけど、ツアーに持っていくと今まで使い慣れていた定番ヘッドホンの絶対的な基準に対して、これがどうなのかが、よくわかります。HPH-MT8はまだ1ヶ月ぐらいしか使っていませんが、近々ツアーに持って行く予定があるので、楽しみです。

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ご多忙中お時間をいただき、ありがとうございました。

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Profile
サウンドエジニアカンパニー STAR*TECHに2010年から所属。
国内アーティストのみならず、海外アーティストのワールドツアーも担当。SR現場以外にも、アミューズメント施設のDAWを使用したサラウンドMixなども担当しエンジニアとして多岐にわたる。
最新機材やデジタルシステムへの意識が高く、海外の経験も豊富で周りのエンジニアからの信頼も厚い。

データ

製品情報 HPH-MT8, HPH-MT7, HPH-MT5