PA虎の巻 PAの基礎知識や、わかりやすいFAQが満載!
実は色々! マイクの種類と特徴
スピーチや歌、アコースティック楽器のPAに欠かせないマイク。
その選定の際に知っておきたいポイントをご紹介します。
ダイナミック型とコンデンサー型
マイクにはダイナミック型とコンデンサー型があります。ダイナミック型は構造が比較的単純で、丈夫かつコストパフォーマンスに優れています。また高い音圧を扱うことができ、大音量にも対応します。基本的にはダイナミック型ですべての用途がカバーできます。
コンデンサー型はレコーディングスタジオやコンサートホールで多く使用されます。非常に高感度で、高品位な音が特徴です。一方、ダイナミック型より構造が複雑で高価であり、振動や湿気、温度変化に弱いため取り扱いに注意が求められます。
ダイナミック型は電源を必要としませんが、コンデンサー型はファンタム電源という電源が必要です。
使い回しの自由さを求めるならワイヤレスマイク
ワイヤレスマイクシステムは音の信号をケーブルではなく電波で伝送します。ケーブルがないため動きの制約が少ないのが特徴です。基本的にワイヤレスマイクシステムは、マイクとレシーバーにより構成されます。レシーバーは機種によって受信できるマイクの本数が異なり、1本受信できるレシーバーは「1波用」、2本のレシーバーは「2波用」と呼ばれます。
Line6のレシーバーは「1波用」です。また1つの部屋で同時に使用できるマイク本数に上限があるため、購入の際には注意してください。
大きくても小さくても駄目!
最適なパワーアンプの選び方
パワーアンプはPAシステムの中で最も大きい電圧・電力を扱う部分であり、
選定する際のポイントをしっかりと押さえておく必要があります。
パワーアンプの選び方
パワーアンプを選ぶポイントは、目的に合った音の大きさを出力できることと、スピーカーを破損させないことです。適切な出力のパワーアンプを使用しない場合、スピーカーを破損させてしまうことがあります。
本カタログにはそれぞれのスピーカーとマッチングするパワーアンプをご紹介しています。大切な機器の破損を防ぐためにも、推奨の組み合わせでの使用を強くおすすめします。
スピーカー破損の主な要因
機械的破損
極度に低い周波数帯域を持つ音声信号や、瞬間的に大きな音声信号が入力された場合、破損する恐れがあります。
熱的破損
スピーカーに入力された信号の大部分は熱に変換され、パーツの温度を上昇させます。これが長時間にわたり、負荷をかけ続けると、パーツが破損する恐れがあります。
TOPICS.
パワーアンプの出力が低かったら、スピーカーは壊れないのでは?
パワーアンプは最大出力を超えるとクリップ(信号のひずみ)します。
出力の小さいパワーアンプで大きな音を出そうとすることで、クリップを発生させる危険性が高くなります。
クリップが発生すると、スピーカーにもたらす危険性が高くなるため、出力信号をクリップさせないためにも、十分な出力を持つパワーアンプを選ぶことが重要です。
スピーカーってどんなもの?
良質な音環境を実現するために、スピーカーの種類や性能はもちろん、
その構造や配置方法も理解した上で、最適な機種を選定しましょう。
スピーカーの各部名称と役割
高音用のツイーターと低音用のウーファーの2種類のユニットで音を再生するスピーカーの方式を「2WAY(ツー・ウェイ)」といいます。
メインスピーカーとモニタースピーカー
聴衆が聴きやすいように、音色・音質を調整して鳴らすスピーカーを「メインスピーカー」と呼びます。 「メインスピーカー」は客席に向けて設置しますので、出演者や演奏者は自分の音が聴こえにくくなります。そのような場合に、出演者が音を確認するために設置するスピーカーが「モニタースピーカー」です。
サブウーファー
サブウーファーとは、通常のスピーカーでは十分に再生できない超低音域(120Hz以下)を再生するためのスピーカーです。 通常のPAシステムよりも迫力ある重低音が再生でき、ライブイベントやダンスミュージックなどに活躍します。
多彩な機能を持つDSP搭載スピーカー
DSP(ディー・エス・ピー)とは「Digital Signal Processor」の略で、さまざまな音声処理に使用されます。 DSPを搭載しているスピーカーは、チュー ニングによる音質の最適化を実現することはもちろん、「DZRシリーズ」や「DXRmkIIシリーズ」、「DBRシリーズ」の 「D-CONTOUR」のように、用途に応じて音質を変化させたり、スピーカーを安定動作させる保護機能があるモデルがほとんどです。
TOPICS.
スピーカーの出力について
音圧レベルは、パワーアンプのワット(W)数とスピーカーの「感度(出力音圧レベル)」の組み合わせで考えます。ヤマハのスピーカーは、パワーアンプからスピーカーに1Wの電力を供給した時に、スピーカーから1m離れた正面軸上で得られる音圧レベルを「dBSPL(1W,1m)」として仕様に明記しています。これがスピーカーの感度(出力音圧レベル)です。例えば「96dBSPL(1W,1m)」のSM10Vに200Wを供給した場合、119dBの音圧が得られますが、「99dB SPL(1W,1m)」のSM15Vは、半分の100Wで同じ音圧を得られます。スピーカーの感度が3dB違うと、同じ音圧を得るために必要な電力は2倍になるのです。
スピーカーの設置について
メインスピーカーは低い位置に設置すると、前方の聴衆に音が吸収されてしまい、音が遠くまで届きません。そのため、スピーカースタンドや取付金具などの設置用オプションを使って、遠達性を確保しながら適正な高さに安全に設置するようにします。機種によって対応する設置方法が異なりますので選定の際には注意が必要です。
実機で学ぶミキサーの操作方法!
ミキサーはPAシステムを運用する上で中核となる機器です。その基本的な操作についてMGP12Xを例にご紹介します。
※操作方法や各部の名称・機能は機種によって異なる場合がありますので、詳細は各機器の取扱説明書をご確認ください。
1.ミキサーの構成
音源機器から入力された音の信号は、チャンネルコントロール部の縦の列(チャンネル)を上から下に流れます。基本的にミキサーは、この1列1列のチャンネルの集まりと言えます。チャンネルごとに音量や音質を調整した後、音の信号はマスターコントロール部で1つにまとめられて(ミックス)、全体の音量を調整の上、ステレオアウトから出力されます。
2.音量のバランスを調整する
1. GAIN(ゲイン)を調整。
マイクや楽器などの入力音を、まずGAINコントロールで適切な音の大きさに調整します。
2. 各チャンネルの音量のバランスを調整する。
次にステレオマスターフェーダーを「0」の位置まで上げてから、各チャンネルフェーダーを上下させて音量のバランスを調整します。最初からボリュームを上げ過ぎるとハウリングの恐れがあるため注意しましょう。
3. 全体の音量を調整する。
ミックスした後の全体の音量をステレオマスターフェーダーで調整します。
3.音質を調整する
音を圧縮する ~ コンプレッサー
コンプレッサーは、音量が一定レベルを超えた時にその信号を圧縮する機能です。過大入力を抑えることで全体の音量が上げられるため、大きな音は歪ませずに抑え、小さな音はしっかりと増幅できます。ボーカルではささやき声と力強い声の音量差を抑える効果を得られます。ただし、コンプレッサーを使いすぎるとハウリングしやすくなるため、少し抑えて使用しましょう。
周波数特性を補正 ~ イコライザー
周波数をいくつかの帯域に分け、帯域ごとに音を補正できます。
補正の効果例
増幅 | 減衰 | |
---|---|---|
HIGH(高音) | 音にメリハリが出る | 音がやわらかくなる |
MID(中音) | ボーカルなどが聴きやすくなる | 落ち着いた音色になる |
LOW(低音) | 音に力強さが出る | 音がすっきりする |
4.その他の操作
音を左右に分ける、バランスをとる ~ PAN(パン)
PANを使うと、2台のスピーカーで音を鳴らす時に左右の出力の割合を変えられます。音に広がりを持たせたい時などに使用します。
音を切る ~ ON/OFFスイッチ
設定を活かしたまま、使用していないチャンネルの音をワンタッチで切っておけます。
音量を確認する ~ メーター
PEAKが点灯し続けた場合、接続機器が損傷する恐れがあります。音量を下げましょう。
ステレオアウトへ音を送る ~ STスイッチ
ステレオアウトへ音を送るチャンネルのSTスイッチは、必ずONにしておきましょう。
TOPICS.
ミキサーのエフェクター機能
エフェクターを使用する際は、デジタルエフェクト部で種類を選び、各チャンネルのエフェクターコントロールつまみでかかり具合を調整します。
代表的なエフェクターは「リバーブ」や「エコー」です。リバーブは狭い部屋でもコンサートホールのような響きを作り出し、エコーはボーカル用の美しい響きを加えます。ただしエフェクターを上げると比例して音量も上がるため、ハウリングが起こりやすくなります。実際に音を聴きながら適度な使用を心がけましょう。
PAシステムをセットアップしてみよう!
司会者用マイク、余興のためのボーカル用とギター用のマイク、BGM用のCDプレーヤーを使ったシステムを例に、セッティングの手順をご紹介します。
※操作方法や各部の名称・機能は機種によって異なる場合がありますので、詳細は各機器の取扱説明書をご確認ください。
1.電源を準備する
ミキサーやパワーアンプなど電源が必要な機器は、必ずPOWERスイッチを「OFF」にしてから電源コンセントにプラグを差し込みます。
2.機器を接続する
必ず各機器の電源を切り、音量を最小にする。
感電や機器の損傷を防ぐため、接続する際は各機器の電源を必ず切り、音量(ボリューム)を最小にしておきます。
音の流れに沿って接続していく。
音の信号は音源機器から出てミキサーに入ります。したがって音源機器の「OUT」端子とミキサーの「IN」端子を繋ぎます。同様に、ミキサーの「OUT」とパワードスピーカーの「IN」を繋ぎます。機器が変わっても基本的な考え方は同じです。
3.電源を入れる(落とす)
機器の損傷を防ぐため、電源を入れる時も落とす時も順番に注意しましょう。電源を入れる時は音の入口側から行います。つまり①音源機器、②ミキサー、③パワードスピーカー(パワーアンプ)の順になります。電源を落とす時は、その逆になります。
TOPICS.
端子とケーブルの種類
接続に使用する端子とケーブルの種類について正確に把握しておきましょう。間違えると、機器が揃っても音が出ないだけでなく、発熱・発火など思わぬ事故を引き起こすこともあります。
端子の種類
XLR端子
バランス型対応のロック機構付き端子、接続は「出力側=オス、入力側=メス」が一般的です。
フォーン端子
TRS(ステレオ)タイプは、ステレオ信号や、インサートI/O、バランス型の伝送にも使用可能。モノラルタイプはアンバランス型専用で、エレキギターなどの楽器で多く使われます。
RCAピン端子
オーディオ・AV機器で一般的に使われているアンバランス型専用の端子。
スピコン端子
プロ用機器に使われるスピーカーケーブル専用のロック機構付き端子。
ケーブルの種類
マイク/ラインケーブル
バランス(平衡)型
シールドと2本の芯線、計3本の線で信号を伝送する方式です。プロ用音響機器で使われています。逆相信号を同時に伝送することで外来ノイズをカットし、アンバランス型よりノイズに強いことが特長。接続する機器がバランス型に対応している必要があります。
●主な使用箇所
- マイク入力 ミキサー
- マイク入力 パワードミキサー
- ミキサー パワードスピーカー
- ミキサー パワーアンプ
アンバランス(不平衡)型
芯線とシールド用網線の2本の線で信号を伝送する方式です。バランス型よりノイズは乗りやすいですが、ラインレベルの信号(エレキギターなど一般の電子楽器や民生用音響機器)であれば長いケーブルでない限りはアンバランス型でも対応できます。
●主な使用箇所
- 音響機器(ライン入力) ミキサー
- 音響機器(ライン入力) パワードミキサー
- 電子楽器(ライン入力) ミキサー
- 電子楽器(ライン入力) パワードミキサー
スピーカーケーブル
パワーアンプからスピーカーへ信号を伝えるためのケーブル。アンプで増幅された大容量の電気信号を伝達するため、耐久性の高いケーブルとなっています。ラインケーブルと異なりシールド用網線は使われていません。
※スピーカーケーブルをライン用ケーブルとして誤って使用すると、ノイズが多く混入しますので、気をつけてください。
●主な使用箇所
- パワードミキサー スピーカー
- パワーアンプ スピーカー
マイク/ラインケーブルはパワーアンプで増幅される前の信号を伝送するケーブルです。スピーカーケーブルとして誤って使用すると発熱・発火する可能性がありますので十分気をつけてください。
よく寄せられる質問集
PAの基礎知識から実践的なノウハウまで、よく寄せられる質問を中心に、わかりやすくQ&A方式でご紹介しましょう。
Q. カタログでよく見る “dB” と “Hz” は、どのような意味の単位ですか?
A. 音が発せられると、周囲の空気を押したり引いたりして、その密度に疎密を作り出します。その疎密が空気中を波のように伝わるのですが、これを「音波」と呼びます。音波を概念図にすると、下図のようになります。波形が上下に一回往復する間隔を「周期」、空気の振動の大きさを「振幅」と呼びます。
音の「高い/低い」、すなわち音程は周期で決まります。周期が多ければ音は高くなり、少なければ低くなります。1秒間に周期が何回あるかを「周波数」と呼び、それを表す単位がHz(ヘルツ)です。1秒間に1周期ならば1Hz、1,000周期ならば1,000Hz(=1kHz)となります。
音の「大きい/小さい」、すなわち音量は振幅で決まります。振幅が大きいほど、音が大きくなります。音量の単位として「音圧レベル」という指標が用いられ、dB SPL(ディービー・エスピーエル)で表されます。SPLを省略して単にdB(デシベル)と表記されることもあります。
Q. ミキサーのGAINコントロールとフェーダーの違いは何ですか?
A. どちらも音量を調整する機能ですが、GAINコントロールは入力の調整、チャンネルフェーダーは出力の調整を行います。例えばGAINコントロールで音量を絞った音をチャンネルフェーダーで大きくすると、入力が小さな音を無理に大きくすることになり、ノイズが多くなってしまいます。音質を損なわないようにミックスするには、まずマイクや楽器で音を入力しながら最大入力時にPEAKインジケーターが一瞬点灯する程度にGAINを上げておくのがコツ。次にチャンネルフェーダーでチャンネル間の音量バランスを調整します。マイクと楽器の音量バランスを決めるのはこの段階です。そして最後に、パワーアンプへ送るトータルの音量をステレオマスターフェーダーで決定します。
Q. エレキギターやエレキベースをミキサーに直接繋げますか?
A. エレキギターやエレキベースは楽器自体の出力が非常に小さいため、インピーダンスを高くして電圧を上げています。一方、一般的なミキサーはローインピーダンス対応のため、直接繋げると適正な出力が得られず、ノイズが発生します。そのため、ミキサーに繋ぐ場合はダイレクト・ボックス(DI「ディー・アイ」。「ダイレクト・インジェクション・ボックス」の略称)という機器を通して接続します。DIがインピーダンスを変換するため、適正な出力が得られ、ノイズの影響も受けにくくなります。ただしエレキギターは、ギターアンプでの音の作り込みも含めて最終形の音質を考える場合が多いため、ギターアンプの音をマイクで拾う方が一般的です。
Q. パフォーマンス中、自分の声や演奏が聴こえないのですが…。
A. モニタースピーカーの導入をお奨めします。モニタースピーカーは、ステージ上のパフォーマーが自分や共演者の発している言葉、歌、演奏の音を聴くために使用します。自分達が発している音が聴き取りづらいと、良いパフォーマンスは望めません。カラオケイベントや楽器演奏を伴うシーンでは、ぜひご検討ください。
モニタースピーカーは、メインスピーカーと別の系統で音を出せるAUX(Auxiliary:「オグジュリアリー」)端子に接続し、各チャンネルのAUXつまみで音量を調整します。
Q. バンドのサウンドづくりで気をつけたいポイントを教えてください。
A. バンドのサウンドは、ボーカルが「よく聴こえる」ことを念頭に調整します。「よく聴こえる」とは音量が大きいことではなく、バンドの中でボーカルが際立って聴こえるように全体の音のバランスが整えられていることです。またエフェクターをどれくらいかけるかという判断も必要です。ぶっつけ本番で上記の作業を行うのは難しいため、本番前に実際にバンドに音を出してもらいながら調整を行う「サウンドチェック」の時間を設けましょう。さらに、サウンドチェックで初めてバンドの音を聴くのでは対応が遅くなってしまう場合があります。事前にバンドの音源を聴くなど予習した上で現場に入るとベターです。またサウンドチェックを入念に行っても、本番は聴衆の身体・衣服に音が吸われ、会場に響く音が変わってしまいます。そのため、本番中にも音を聴きながら微調整が必要です。
そして最後にもう1つ。ライブのクオリティはバンドの演奏能力とPAの能力、両方が不可欠です。いわばPAもバンドの一員なのです。PAに求められるのはセンスや技術だけでなく、バンドメンバーとの“コミュニケーション”だということも心がけておきたいポイントです。
Q. モニタースピーカーを導入したら、ハウリングが起こりやすくなりました…。
A. ハウリングは、スピーカーの音をマイクが拾い、その音が増幅されて再びスピーカーから出て…という音のループで特定の周波数帯域が強調されて生じます。ハウリングを抑える最も簡単な方法は、個々の楽器の音量を下げたり、マイクとモニタースピーカーの距離や向きを変えるなどして、スピーカーの音をマイクが拾わないようにすることです。