アビテックス「防音の先の、いい響きへ」

山石本 薫さん(サックス奏者)

自分の音がよく返って、適度な響きも加わるので、 管楽器にとって理想的な演奏空間だと感じました。

ゲーム東方Projectシリーズの音楽をアレンジして演奏する「東方アレンジ」をはじめ、ゲームミュージックを中心としたジャズ、ロックの演奏を動画で発信、さらにCDの製作などを行っている「東京アクティブNEETs」。そのサクソフォン奏者である山石本 薫さんをアビテックスの防音ショールームにお招きし、アビテックスや調音パネルの効果を実際にご体験いただきました。

Q1.本日は高輪防音ショールームにご足労いただき、ありがとうございます。山石本さんはヤマハの防音室「アビテックス」をご存知でしたか。

はい、知人が自宅で音楽制作をしていて、レコーディングブースとして自宅にアビテックスを入れていまして、そこで演奏したことがあります。

Q2.本日はインタビューの前にショールームのアビテックスをご体験いただきましたが、どんな印象だったのでしょうか。

以前私がレコーディングで入ったアビテックスは、外に音が漏れないという防音の機能だけしか持っていなかったように思いました。今日体験したアビテックスは遮音だけでなく、アビテックスの室内の音の響きまでよく考えられているんですね。

試奏の前にまずはアビテックスについてご説明し、ピアノの自動演奏などで遮音性をご体験いただいた。

音がもれない「防音」だけでなく、室内の演奏のしやすさに関わる「調音」の仕組みもご説明。

自動演奏のピアノの音を防音室内で試聴。「狭い室内でピアノを鳴らしても高音がキンキンしないですね」と山石本さん。

吸音と響きのバランスを整えている壁面のパネルに興味津々の山石本さん。

Q3.防音室というと、今までは吸音材を使って音を吸い込み、部屋の外に音を漏らさないようにする「遮音」のみが一般的でしたが、アビテックスでは遮音だけではなく、室内の演奏者にとって演奏しやすい、聴きやすい音環境を提供することを目指しています。

実際にアビテックスに入って自動ピアノの演奏を聴いてみてそれを実感しました。

調音パネルと設置した自由設計タイプのアビテックス室内で自然な響きを確認。「とてもいい響きです」。

Q4.防音効果をよりリアルに体感いただくために、様々な響きの空間でサックスを吹いていただきましたが、感想はいかがでしたか。

一番驚いたのは、3つの響きの比較用のブースでした。「調音なし」「グラスウールによる吸音のみ」「調音パネルでの響きが整えられた空間」が並んでいて、そこで順番にサックスを吹いてみましたが、結構衝撃的でしたね。その違いは予想をはるかに超えていました。

「調音パネルなし」

「調音パネルなし」

音がまったく処理されない狭い部屋なので反響が強すぎて、耳障りな音が大音量で鳴っている状況です。

「グラスウールによる吸音」

「グラスウールによる吸音」

吹いている音がすべて壁面のグラスウールに吸音されてしまって、演奏者に音が返って来きません。そのため自分の音がわからずコントロールできないため、強く吹きすぎて疲れてしまいます。音も艶のないスカスカした音色となります。

「調音パネルあり」

「調音パネルあり」

実際にはありえないほど狭い空間でありながら調音パネルの効果で適度な響きがあり、自然な音色で吹いていても快適です。吹いた音が自然に奏者に返ってくるので楽器のコントロールがしやすく演奏もしやすいです。

Q5.具体的には、響きがどう違ったのでしょうか。

「調音パネルなし」では、自分の音のはね返りが大きくて、ものすごくボリュームが上がった状態の音が耳に返ってきました。しかも高域が強く返るので音質的にもキンキンしています。吹いている間ずっとキンキンした大きな音を聴き続けることになるので、長時間吹くのはかなりストレスだと感じました。

こちらも調音パネルがない防音室での試奏。音が飽和して響きが強く、長時間は吹きづらい。

Q6.2つ目の吸音材のグラスウールを使った空間はどうでしたか。

こっちは逆に楽器から出くる響きを全部グラスウールが吸ってしまうので、吹いても吹いても自分の音が削られていく感じがします。どんなに吹いても音が返ってこないので、どうしても吹きすぎてしまうので疲労感があります。ここの空間で演奏するのは厳しいですね。

吸音材のグラスウールを多く使用した別室でも試奏。「響きがないので吹いていてとても疲れます」

Q7.最後の調音パネルを使った空間での演奏はいかがだったでしょうか。

調音パネルは初体験でしたが、自分が聞きたい音が聴ける、しかもモニターしやすい音色で粒立ちも良かったので、演奏するのに非常にいい環境だと思いました。調音パネルを入れるだけでこんなに音の響きが変わるのは驚きです。

調音パネルを壁に装着した自由設計型のアビテックスルームでも試奏。

Q8.アビテックスショールームのロビーでも調音パネルあり/なしでサックスを吹いていただきました。いかがでしたか。

ショールームのロビーでも調音パネルの効果を試してみた。悪い音響状況ではないが柔らかいカーペットで音が吸われている印象。

あのロビーはそのままで吹いても比較的音がいい場所でした。でも調音パネルを並べて吹いてみると、自然な響きが生まれてグッと吹きやすくなります。廊下のカーペットが柔らかいので床に音が吸われている状況でしたが、その分を調音パネルがうまく補ってくれて、音もまとまり、単なるロビーなのに非常に整った音空間になりました。パネルを置くだけで空間の響きの環境がこんなに良くなるのは不思議ですね。省スペースで、効果があって画期的だと思います。

調音パネルありで試奏。余計な音がカットされて音が整理されて自然な響きが生まれました。

Q9.管楽器の奏者の方にとっての防音室というテーマでお話をうかがいたいのですが、山石本さんはどんな環境で管楽器の練習をしてきたのでしょうか。

私は子どもの頃から一戸建の家に住んでいて、たまたま隣の方も楽器を演奏されるご家族だったので、比較的音を自由に出していい環境で育ちました。中学校からは吹奏楽部に入ったので、校門が開くとともに朝一番で音楽室に行って練習し、夜は守衛の方が帰れと言うまで音楽室にいたので。だから中学、高校はずっと学校で練習していました。

Q10.今自宅で練習される時は何時まで練習できるのですか。

近隣や家族の生活もあるので家では夜6時までと決めています。夜どうしても練習する必要があるときには近所のリハーサルスタジオに駆け込んで個人練習します。

Q11.リハーサルスタジオは管楽器奏者にとって練習しやすい環境ですか。

練習だけでなく動画撮影でもリハーサルスタジオを使うことがありますが、やっぱり響きが少なくてデッドな空間ですね。今日の響きの比較例で言えばグラスウールで吸音された空間に近いので、必ずしも練習しやすいというわけではありません。

Q12.管楽器のお仲間の方でも、練習場所に苦労している方は多いのではないでしょうか。

夜中に墓地の脇に行ってクルマの中で練習している人を知ってます(笑)。あと良くあるのは多摩川や荒川など、大きな川の近くに住んで、川で練習する人もいます。でも響きがないので辛いんじゃないでしょうか。

Q13.カラオケで練習する人も多いとききました。

私も使ったことがあります。カラオケルームのいい点はドリンクが飲み放題なところ。ただカラオケは部屋が狭いので響きは決して良くありませんし、防音が甘いので周りの歌声や音が聞こえて、どうしても集中できませんでした。つい歌ってしまうときもありますし(笑)。

Q14.管楽器奏者にとって、理想的な練習場所とはどんなところでしょうか。

まず静かで集中できること、そして自分の音が適度に返ってくること。さらに残りすぎない程度の響き、質のいい反響があるとより吹きやすいですね。適度な響きは自分の音に魅力を加えてくれるので、練習のモチベーションも高まります。今日体験させてもらったアビテックスは管楽器の練習にはまさに理想的な空間ですね。もしリハーサルスタジオで練習をするなら、響きがすくないのでしっかりマイクを立ててモニターし、少しリバーブを足すといいと思います。

管楽器奏者にとっての理想的な練習環境とは?

・静かで集中できる

・自分の音が適度に返ってくる

・残り過ぎない程度のいい響き、質のいい反響がある

Q15.最近サックスがブームですが管楽器の初心者の練習環境についてお聴かせください。

管楽器を始める方って、学校でブラスバンドを始める人もいるでしょうし、大人になってから趣味として始める人もいると思います。学生の方なら学校で練習できますが、大人の場合、夜しか練習できないということは往々にしてあると思います。もし防音室があって家でいつでも練習できる環境があれば、上達はとても早いと思います。

Q16.管楽器の上達は、やっぱり練習量に比例するということでしょうか。

そうですね。「続くかどうかわからないので、とりあえず安い楽器で始めました」っていう人は、結局続きません。いい楽器でいい音が出るほうが楽しいので、結果的に楽器が続きます。練習環境もそれと同じで、最初からいい音で自分に音が返る、そしていい響きで練習できるだけで、楽器を吹く楽しさ、音が出る嬉しさが全然違ってくると思います。しかも自分が吹いて気持ちよかった「いい音色」が耳に残るので、自分の音色を育むことにもなります。これは管楽器の練習ではとても大事なことだと思います。

本日はありがとうございました。

山石本薫(岩本義雄)

山石本薫(岩本義雄)

サックスを中心に、クラリネット、フルート、リコーダーやオカリナからパーカッションまで多種多様な音色を操るマルチプレイヤー。バイト先で出会ったメンバーで結成した幻のバンド「StreetRats」のライブ幕間で声にエフェクトをかけてMCをする謎の悪徳マネージャーとして誕生。そこで紅い流星と出会い『東方爆音ジャズ』シリーズ2作目よりゲスト参加。後に東京アクティブNEETs正式メンバーとして加入。同バンドでは演奏の他に動画編集やドロー系ソフトを用いた素材作りなどを担当。2016年には【薫の雑動画】と銘打って「0と5のつく日に演奏動画をアップする」という企画を完遂。OSTER project、黒うさP、nero project、40mPの録音に参加。中の人は現在放映中のアニメ「ぼのぼの」の劇中BGMに参加。9本の楽器を持ち替えて収録。国内外ジャズフェスの出演や有名テーマパーク出演での経験を生かし、五感で楽しむライブステージを提案中!

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