調律師の仕事

調律師の仕事 調律師の仕事

調律師の仕事

なぜ調律が必要か

ピアノは弦楽器の仲間です。ほかの弦楽器と同様にチューニング(調律)の必要があります。
ピアノは、ほかの弦楽器と比べるとはるかに強い力で弦が張られています。その力は平均して1本あたり約90kgに及びます。また弦の総数は200本以上もあり、ピアノ内部ではおよそ20トンにも及ぶ強い力が働いています。参考までに、アコースティックギターにかかる張力は合計で70~80kgであることを考えると、ピアノにかかる張力がいかに大きいものであるかがわかります。
なぜ調律が必要か
常にこれほどの力がかかっているピアノは、使用することがなくても時間の経過とともにチューニングが変化してしまいます。そのため、ピアノが美しい音色を奏でるためには定期的な調律が欠かせないのです。
なぜ調律が必要か

調律以外の調整

ピアノは多数の部品から成り立っています。その部品総数はおよそ8000個です。
そのうち約6000個の部品が鍵盤を押す力をハンマーに伝えるアクション機構に集中しています。
演奏や環境の変化(温度・湿度等)で各部品は消耗し、タッチにずれが生じたり、部品が故障して音が出せない状態になってしまうこともあります。アクション機構のメカニズムを正しく調整すること(整調)で、よく揃った心地のよいタッチを生み出すことができます。
また故障・消耗した部品を交換・修理することも調律師の仕事です。
調律以外の調整
その他にもハンマーの弾力を調整することで音色を整えること(整音)や、塗装を補修することなど、調律師はいわゆる調律だけでなく、ピアノにかかわるさまざまな調整を請け負います。
調律以外の調整

なぜ専門の「調律師」が存在するのか

ピアノはほかの楽器に比べて大型で、複雑な構造をしています。
まずチューニング(調律)について考えてみます。
美しい音色を生み出すためには、弦すべてを正しい張力に合わせる必要があります。
しかし弦は非常に強い力で張られており、適切な調整をするためには、わずかな音の変化を聴き分けて微細な操作をする技術が求められます。また、弦の総数は200本以上であり、これらすべてを素早く調整するためには、作業に対する慣れや経験、判断力、音程に対する知識が必要不可欠です。 
なぜ専門の「調律師」が存在するのか
アクション機構の調整(タッチの調整)では、ピアノの構造に対する深い理解と高い技術力が求められます。鍵盤を弾いてから音が出るまでのメカニズムは非常に複雑です。したがって、各調整がタッチに及ぼす影響のみならず、各工程がどのように影響し合うのかについての深い理解が必要です。調整に当たっては、タッチの違いを微細に感じ取り、コンマ1ミリ単位での調整を行う必要があります。わずかなタッチの差が、演奏者が意図する通りに心地よく演奏できるか否かに関わってくるためです。
以上のように、調律師が専門職である理由は、繊細な耳や、ピアノに対する専門的な知識と高い技術力が求められることが挙げられます。
なぜ専門の「調律師」が存在するのか

どのような現場で活躍しているのか

ピアノが設置してある場所すべてが調律師の仕事場です。
ご家庭やピアノの先生、学校、コンサートホールなどさまざまな場所が考えられます。
お客様によって、ピアノを使用する頻度や目的、調律作業を行うことのできる頻度が異なります。お客様の異なるニーズに応えつつ、ピアノをより長く、より良い状態で使用していただくことが調律師の使命です。
どのような現場で活躍しているのか

調律全般に関するFAQ

調律はどのくらいの頻度で行うべきですか。

一般的には年に1~2回の調律が必要です。演奏の頻度やご希望に応じて増やすこともあります。

1台の調律にかかる時間はどれくらいですか。

通常120分程度ですが、ピッチ変更の度合いやピアノの状態に応じて前後します。調律のほかにも調整が必要とされる場合は、数時間から数日に及ぶ場合もあります。

ピアノの日ごろの手入れはどのようにしたらいいですか。

ピアノはそのほとんどが天然素材でできているため、設置環境によって内部の状態が変わりやすい楽器です。そのため、温度や湿度の変化によって調律やタッチに影響が出ることがあります。ピアノをいい状態で保つためには、調律師による定期的な調整に加えて、日ごろから極端な温湿度の変化を避け、以下をめどに温湿度の管理をすることをおすすめします。
夏季:20~30℃/40~70% 冬季:10~20℃/35~65%

調律に関する資格はあるのですか。

ピアノテクニカルアカデミーでは「レベルアップコース」においてグレード制度を導入しております。各コース内で実施する試験に合格すると、技能レベルに応じてグレードが付与されます。ほかに調律師としての技能レベルを示すものとして、日本ピアノ調律師協会が実施する「ピアノ調律技能検定」があり、レベルに応じて3級から1級まで取得することが可能です。(取得は実務に当たって必須ではありません。)

卒業生の声

卒業生の声 卒業生の声

VOICE 01

渡辺 麻衣子 さん

総合コース第23期卒業生

株式会社ヤマハミュージック
リテイリング 札幌店

調律師を目指そうとした理由は何ですか。

幼いころからピアノを習っており、当時自宅に来て下さっていた調律師の方が若い女性で、とても気さくにピアノのいろいろなことを教えて下さいました。「調律師」という職業が身近に感じられるようになり、目指すきっかけになりました。

アカデミー時代に苦労したことはどんなことですか。

私自身は器用な方ではないため、作業工程の意味や関連性を覚えるのに人一倍苦労しました。しかし、講師の方々に根気よく丁寧に教えていただけたので、無事に卒業することができました。

現在、仕事をしていて大切にしていること、調律をしていてよかったと思うことは何ですか。

いかにお客様のご希望に沿えるかどうかを大切にしています。自分の思い通りの調律ができて、お客様にも満足していただけた時に達成感を感じます。また、外装をはずして調律をしていると、お子さんに興味を持っていただけることもあります。演奏することだけでなく、「こうやって音が出ているんだ!」とピアノそのものの魅力を感じ、より一層ピアノを好きになってくれたことがとてもうれしかったです。
卒業生の声 卒業生の声

VOICE 02

佐藤 義輝 さん

総合コース第39期卒業生

株式会社松栄楽器店

調律師を目指そうとした理由、ピアノテクニカルアカデミーに入学した決め手は何ですか。

元々は営業職として楽器店に所属していました。しかし、改めて自身の専門分野であるピアノについて学び直したいと思い、ピアノテクニカルアカデミーに入学しました。以前からメーカーとしてのヤマハ製品の品質の高さについて理解していたこと、ピアノ工場併設の学校ということが決め手となりました。

アカデミー時代に一番心に残っていることは何ですか。

在学中はピアノについてさまざまな内容の実習がありました。中でも調律については、環境設備やカリキュラムなどが充実しており、重点的に技術向上の機会を設けていただきました。他の調律学校を卒業した同業の方にもお話を伺いましたが、私はこの点がピアノテクニカルアカデミーの強みだと考えています。

調律をしていてよかったと思うことは何ですか。

主にピアノのリニューアル業務に従事しています。同じ作業を何度も繰り返す中で、所要時間と精度が向上した時は、アカデミー在籍時と変わらずうれしい気持ちになります。この初心は時間が経過しても大切にしたいと考えています。