第11回東京音楽コンクールピアノ部門第1位、第84回日本音楽コンクールピアノ部門第1位など、主要コンクールで輝かしい成績を収めてきた期待のピアニスト、黒岩航紀が日々の出来事や想いを書き綴ります
(毎月1日、15日頃更新。※更新日は、都合により前後する場合がございます。)- No.18 2018.06.01更新 「空を見上げ、馳せる思い」
- No.17 2018.05.17更新 「美しい音楽や湖畔に魅せられて」
- No.16 2018.05.02更新 「ドナウ川に響く船の音」
- No.15 2018.04.06更新 「日本人の精神・和心が生む音」
- No.14 2018.01.31更新 「鐘の音〜モスクワ編〜」
- No.13 2018.01.15更新 「2018年も頑張ります(サンクトペテルブルク編)」
- No.12 2017.10.31更新 「ノープラン・ウィーン旅行記」
- No.11 2017.10.16更新 「ハンガリーからの第1音」
- No.10 2017.09.21更新 「いよいよハンガリーへ!」
- No.9 2017.08.07更新 「“間(ま)”で感じる形と色と音と……」
- No.8 2017.07.24更新 「SNSと紙文化」
- No.7 2017.07.05更新 「僕とサクソフォーンとの出会い」
- No.6 2017.06.20更新 「居心地の良い隠れ家的空間」
- No.5 2017.05.16更新 「秋吉台の青空に広がる音色はカルスト地形の彼方へ」
- No.4 2017.04.25更新 「上野の桜の音とともに…」
- No.3 2017.04.05更新 「ヘイスティングスでのあたたかい音」
- No.2 2017.03.01更新 「共演者の音から学ぶ」
- No.1 2017.02.08更新 「自分の音探し」
- pianist 黒岩航紀
- 1992年生まれ。
東京藝術大学音楽学部附属音楽高等学校を経て、東京藝術大学音楽学部ピアノ科を首席で卒業。第11回東京音楽コンクールピアノ部門第1位、及び聴衆賞受賞。第19回松方ホール音楽賞受賞(第1位)。第84回日本音楽コンクールピアノ部門第1位。第13回ヘイスティングス国際ピアノコンチェルトコンペティション(英国)第4位及びオーケストラプライズ受賞。第6回秋吉台音楽コンクール室内楽部門最高位。
国内外の多くの演奏家からの信頼も厚く、室内楽においても高い評価を得ている。 これまでに東京フィルハーモニー交響楽団、東京交響楽団、新日本フィルハーモニー交響楽団、日本フィルハーモニー交響楽団、東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団、藝大フィルハーモニア管弦楽団、セントラル愛知交響楽団、ロイヤルフィルハーモニックオーケストラ(英国)等と共演。
芹沢直美、秦はるひ、江口玲、各氏に師事。
公益財団法人青山財団奨学生。宗次エンジェル基金/公益社団法人日本演奏連盟新進演奏家国内奨学金制度奨学生。2016,17年公益財団法人ロームミュージックファンデーション奨学生。
2017年東京藝術大学大学院音楽研究科修士課程修了。同年4月にデビューCD「sailing day」をリリース。
公式HP:www.kokikuroiwa.com/
※上記は2017年6月20日に掲載した情報です。
No.17美しい音楽や湖畔に魅せられて
2018.05.17更新
皆さま、こんにちは。
飛行機のフライト時間を利用してのコラム更新です。
先日、リスト音楽院大ホールにて、ピアニストのプレスラーのこの世のものとは思えないような美しい音と音楽に涙し、未だその余韻が冷めていません。
音楽とは何か。芸術とは何か。時としてそんなことを問われること、自分自身に問うこともありますが、この解答は非常に難しいです。
人によって音楽との向き合い方が違って良いと思いますし、好む音楽も違えば、心理状態や精神状態によっても聴こえ方が違う。自分の周りだけをみても、どうしてここまで好きな音楽が異なる、あるいは演奏が異なるのだろうと不思議なものです。そんな、ある種不安定で不確かなものを追い求めているのが、芸術家なのだと思いますが、しかしながら、これはまさに人や人生そのもののようなものではないかと。
どんな環境に生まれ、人と人が巡り会い、何を考え、誰を好きになり、どういった人生を選択していくか。その一つ一つに、正解も間違いもないことでしょう。何一つとして同じ人や人生はなく、全てがかけがえのない生き方です。
それは音楽や芸術においても同じこと。もはや、音楽とは人生の全ての象徴なのではないかとさえ思えてしまうのです。
自分は一聴衆として、人の演奏を聴くと、曲の魅力、解釈は勿論のこと、その人の内面や人間性を感じ取れることが幸せなのですが、先日のプレスラーは正にそれでした。
彼自身の人生の中にあった、愛、人の感情や情緒、美しいもの。そこに淀みは全くなく、そんなものがホール一杯に広がり、自分の心の中にもスーッと入ってきたのです。自分の中にある全てが浄化されていったような気がしました。
音楽とは、人が人らしくいるためのもの。僕はそのように考えております。
幼き頃から、先生方にも、「美しいものをたくさん知り、経験をし、人を愛し、本を読みなさい。豊かな人生が良い音楽に繋がる」と言われ続けてきました。
ステージに立つということは、全てをさらけ出し、丸裸になる。そういうことなのかもしれません。
リスト音楽院大ホール
さて、前置きが長くなりましたが、前回のブダペストと周辺の街の周遊紀行の続きです。
今回は、オーストリアのウィーンとハルシュタット!
ハンガリーはオーストリアと隣接していて、それも音楽の都ウィーンへはなんと列車で2時間弱なのです!
チェコも列車で5時間弱と近いので、プラハ・ウィーン・ブダペストの3都市を周るツアーも多いようです。
ウィーンは一度だけ訪れたことがあるのですが、それに加えて、今回は世界で最も美しい湖畔の町の一つとして知られるハルシュタット!
前々から計画をして、ホテルや列車も早めに予約し、ずっと楽しみにしていた旅でした。
まずはウィーンから。
ウィーン自体は大きな町だと思いますが、観光名所は近いところに集まっており、旅行者にとっては満喫しやすいですね。
何度か訪れているパリもそうですが、交通網が便利な上に、徒歩だけでも十分に様々なところを周れる!
温かく柔らかい日差しの中、歩いてるだけでも楽しいです。どこを見渡しても、とにかく絵になる。自然や建物も、日の差し方一つでキャラクターを変えるので、一日中散歩しても飽きないことでしょう。
王宮庭園。自分も芝生に寝転んでみました!
ウィーンといえばこの方ですね。オーストリアの国母として慕われている、マリアテレジア女帝。
広場の中央、同じ作りをした2つの博物館のちょうど間に位置するマリアテレジア像。大きい像なのでやはりインパクトがあるなあ…
音楽家としては、やはりこのアングルが一番ですね。有名ではありますが、この中にハイドンとモーツアルト、見つけられますか?
オーストリア女帝、マリア・テレジア像
そんなマリア・テレジアが愛した宮殿。ヨーロッパでもっとも美しいバロック宮殿の一つ、シェーンブルン宮殿へも行くことができました。
館内は撮影禁止なので写真でご紹介できないのが残念ですが、想像以上に豪華絢爛な装飾や、規模の大きさは見事としか言いようがありません。一般公開の部屋は45部屋。それだけで十分に圧倒されましたが、実際には1441もの部屋があるようです!
日本語のオーディオガイドを聞きながら周れたこともよかったです。ただ見て周るよりも、時代背景やストーリー、エピソードを知りながらの方が、より一層興味深く、意欲的に鑑賞できますね。これは、音楽や演奏においても同じことのように常に感じているのです。自身がプログラムノートや演奏合間のトークも大事にしている理由の一つです。
シュテファン大聖堂なども巡り、身体はくたくたではあったのですが、遅めの時間に予約を入れることができ、人生で初めて食べることができたのが、牛肉料理のターフェルシュピッツ。
牛肉をスープ野菜とじっくりと茹でた料理で、たっぷりのスープに、高品質で柔らかなお肉と、嬉しいローストポテトの付け合わせ。一つの料理でコースさながらの満足度でした。
3人で2人前を頼みましたが、ほぼ完食したものの帰りはなかなかに苦しかった…こちらの方は体が大きいぶん、よく食べるのでしょうか。自分もよく食べる方なのですが!
オーストリア料理、絶品ターフェルシュピッツ
さて、ここからはハルシュタットです。
ウィーンからは列車で3時間弱。ブダペストからも行けなくはない距離と時間ですが、中間点であるウィーンの観光を間に挟む、というのが今回のプランでした。つまりは、ブダペスト→ウィーン観光→ハルシュタット観光→ウィーン観光→ブダペスト、というわけです。
朝ウィーンを出発する列車は、特別でもない自由席の普通列車だったわけですが、まるで、パノラマカー?ロマンスカー?大きなガラス張りで見晴らしが最高。さらに乗客も少ないため、6人がけのドアつきの個室シートに3人で座ることができました。漂うブルジョワ感。笑
2時間もすると、自然の澄んだ緑色に躍動感あふれる山々、しばらくすると美しい湖もが広がります。早くも、ハルシュタットに来てよかったーと大感激の僕でしたが、これは勘違い。
まだ道中で、ここはハルシュタットではないようです。こんな絶景の車窓であれば、永遠に乗っていられることでしょう。ハルシュタットまで、このような絶景が続きます。
ハルシュタットへ向かう車窓から
いよいよハルシュタット。なんと素晴らしいことでしょう。思わず息を飲む美しさでした。
山の緑が一杯に映った湖、大地の力強さを感じさせる山々、それらに挟まれた小さな街。木造の家々がもはや自然の一つなのでは、と思えるほどに調和し共存していて、哀愁をも感じさせてくれるのです。
そこで吸う空気に、ほんの少しの淀みや濁りさえ感じることはなく、心や体の隅々まで幸せがいっぱいに広がりました。
心の底からの感激と同時に、生きていることへの感謝さえも覚えたものです。
美しいハルシュタットの街
とにかく好天で、真夏のような暑さと眩しさだったのですが、白鳥の足こぎボートにも挑戦!行けるところまでと張り切ってしまい、案の定ヘロヘロ。汗もびしょびしょになってしまいました。笑
休んでる間に、雲の動きを見たり、風や波を感じているのも最高に気持ちよかったなあ…
白鳥ボートからのハルシュタットの街
ハルシュタットは二日間楽しむことができましたが、翌日は少し曇り気味。それもまた違う顔を見せてくれて、趣がありました。
ハルシュタットはもともと塩の街という意味。世界最古の岩塩坑があり、ツアー参加で内部見学ができます。
岩塩坑のある高台も美しい眺め
岩塩坑のツアーは、つなぎの作業服のようなものを着て、薄暗く肌寒い奥へ奥へと進んでいきます。
ガイドの方が解説をしたり、映像を見ながら進んでいくので、ちょっとだけ詳しくなれた気がします。小学校の時の社会科見学を思い出します。
さらに、元々作業員が坑道を降りる際に使っていたという滑り台があり、それを体験することができます。これが結構なスピードで、ジェットコースターさながらのスリル。
偶然、地元の(?)小学生の団体と重なったので、大盛り上がりでした。
ハルシュタットは僕にとって、まさに楽園のような、天国のような場所だった気がします。
数年後に、あるいは数十年後に、また訪れたいと強く願いますが、その時にその青や緑は同じ色に見えるのでしょうか。はたまた違う色に見えるのでしょうか。その美しさはどんな風に眼に映るのでしょうか。
ウィーンとハルシュタットでの夢のような時間、最高のバカンスを共に過ごしてくれた方々に感謝です。本当にありがとう。
次回、コラム最終回です!
オーストリア国旗と僕
コラムIndex
- No.18 2018.06.01更新 「空を見上げ、馳せる思い」
- No.17 2018.05.17更新 「美しい音楽や湖畔に魅せられて」
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執筆者 Profile
- pianist 黒岩航紀
-
1992年生まれ。
東京藝術大学音楽学部附属音楽高等学校を経て、東京藝術大学音楽学部ピアノ科を首席で卒業。第11回東京音楽コンクールピアノ部門第1位、及び聴衆賞受賞。第19回松方ホール音楽賞受賞(第1位)。第84回日本音楽コンクールピアノ部門第1位。第13回ヘイスティングス国際ピアノコンチェルトコンペティション(英国)第4位及びオーケストラプライズ受賞。第6回秋吉台音楽コンクール室内楽部門最高位。
国内外の多くの演奏家からの信頼も厚く、室内楽においても高い評価を得ている。 これまでに東京フィルハーモニー交響楽団、東京交響楽団、新日本フィルハーモニー交響楽団、日本フィルハーモニー交響楽団、東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団、藝大フィルハーモニア管弦楽団、セントラル愛知交響楽団、ロイヤルフィルハーモニックオーケストラ(英国)等と共演。
芹沢直美、秦はるひ、江口玲、各氏に師事。
公益財団法人青山財団奨学生。宗次エンジェル基金/公益社団法人日本演奏連盟新進演奏家国内奨学金制度奨学生。2016,17年公益財団法人ロームミュージックファンデーション奨学生。
2017年東京藝術大学大学院音楽研究科修士課程修了。同年4月にデビューCD「sailing day」をリリース。
公式HP:www.kokikuroiwa.com/
※上記は2017年6月20日に掲載した情報です。