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黒岩航紀の「音楽の玉手箱」

第11回東京音楽コンクールピアノ部門第1位、第84回日本音楽コンクールピアノ部門第1位など、主要コンクールで輝かしい成績を収めてきた期待のピアニスト、黒岩航紀が日々の出来事や想いを書き綴ります

(毎月1日、15日頃更新。※更新日は、都合により前後する場合がございます。)
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pianist 黒岩航紀

pianist 黒岩航紀
1992年生まれ。
東京藝術大学音楽学部附属音楽高等学校を経て、東京藝術大学音楽学部ピアノ科を首席で卒業。第11回東京音楽コンクールピアノ部門第1位、及び聴衆賞受賞。第19回松方ホール音楽賞受賞(第1位)。第84回日本音楽コンクールピアノ部門第1位。第13回ヘイスティングス国際ピアノコンチェルトコンペティション(英国)第4位及びオーケストラプライズ受賞。第6回秋吉台音楽コンクール室内楽部門最高位。
国内外の多くの演奏家からの信頼も厚く、室内楽においても高い評価を得ている。 これまでに東京フィルハーモニー交響楽団、東京交響楽団、新日本フィルハーモニー交響楽団、日本フィルハーモニー交響楽団、東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団、藝大フィルハーモニア管弦楽団、セントラル愛知交響楽団、ロイヤルフィルハーモニックオーケストラ(英国)等と共演。
芹沢直美、秦はるひ、江口玲、各氏に師事。
公益財団法人青山財団奨学生。宗次エンジェル基金/公益社団法人日本演奏連盟新進演奏家国内奨学金制度奨学生。2016,17年公益財団法人ロームミュージックファンデーション奨学生。
2017年東京藝術大学大学院音楽研究科修士課程修了。同年4月にデビューCD「sailing day」をリリース。

公式HP:www.kokikuroiwa.com/


※上記は2017年6月20日に掲載した情報です。

No.3ヘイスティングスでのあたたかい音

2017.04.05更新

 みなさまこんにちは。
「コラム楽しみにしています」という嬉しいお声をいただいておりますが、更新がすっかり遅くなってしまい、申し訳ない限りです。

 さて今回は前回の予告通り、2月23日~3月4日に開催された第13回ヘイスティングス国際ピアノコンチェルトコンペティションの時のお話を中心に書きたいと思います。ちょっと時間が経ってしまって恐縮なのですが、どうぞお付き合いください。

 ヘイスティングスはイギリスのロンドンから電車で2時間ほどの南東部、海岸線沿いの静かな街です。

ヘイスティングスの海岸

 コンクールは第1次予選、第2次予選がピアノコンチェルト(オーケストラパートはピアノ伴奏)を、セミファイナルはソロリサイタル形式、そしてファイナルはロイヤルフィルハーモニックオーケストラとのピアノコンチェルトです。
 僕は第1次予選の曲はラフマニノフピアノコンチェルト第2番。オーケストラパートのピアノ奏者が日本人ピアニストでイギリス在住の今井さん。彼は素晴らしいピアニストで日本でも演奏会を行っている方です。彼は音楽に対して真摯でストイック、リハーサルの合わせの時から、どうやって音楽を作り上げていこうかと二人で話し合いました。初めての地でしかも国際コンクールでは既に大きな賞歴のある錚々たるコンテスタントがずらりといる中でかなり緊張と不安があった僕ですが、本番は何の不安もなく彼と共に演奏を楽しみ自分の音楽が表現できました。

 第2次予選はリストのピアノコンチェルト第1番を別の女性ピアニストと共に演奏しましたが、その時は拙い英語で彼女に僕の音楽性をわかってもらい第1次予選同様、納得のいく演奏ができセミファイナル進出です。

第1次予選のピアノ伴奏の今井さんと

 ここでコンクールの演奏以外について少しお話ししたいと思います。
一言で表現すると、実にアットホームで手作り感があふれスタッフの方はとても親切。そしてお客様も楽しんでいます。中にはワインを片手に聴いている方も!そんなくつろいだ雰囲気ですが一旦演奏が始まると物音ひとつしない。集中して聴いてくださいます。そして演奏後は大拍手。「よかったよ」「次も楽しみ」など声をかけてくれます。

 また僕はホームスティをして滞在していたのですが、このホームスティ先の方々も親切!

ホームスティ先のJudithとAllan

 そして僕たちコンテスタントには1日2時間の練習時間と場所が確保されていました。ホームスティ先にも素敵なちょっと変わったアップライトピアノがあったのですが、練習するにはちょっと…というものだったで、与えられる2時間の練習時間がとても貴重でした。その確保されている部屋とピアノ。てっきりコンクールを行っている敷地内にあるのだと思いきや、練習室に行くためのドライバーさんという人がいて毎日違うピアノのある練習場所に連れて行ってくれるのです。それはスタジオのような時もありましたがたいていは一般のピアノのあるお宅に「はじめまして」とお邪魔して2時間ピアノをお借りする、というもの。皆さん親切で「航紀!紅茶飲む?コーヒーにする?」などと聞いてくれるのですが、ありがたいけど貴重な2時間なので、何もいらないということを伝えて弾き続ける。帰りは「次も頑張って!」と声をかけてもらう、といった感じでした。
 いろんな家で毎回違う日本では見たこともないブランドのピアノを弾く。これが新鮮で、ピアノ好きな僕にとっては楽しい。ふとコンクールに来たのではなく、穏やかな海沿いの街にふらっとピアノを弾きに来たんだっけ?と錯覚しそうになったほどです。

 実は僕はそれほど英語が流暢に話せないので、皆さん親切に何かと声をかけてくれるのですが、思っていることの半分どころか1/10も伝えられず、それがちょっと悔しかった!

ホームスティ先のピアノ

ある練習時のピアノ

 そしてセミファイナル。お客様のブラボーとスタンディングの拍手の中でファイナルに進むことが出来ました。
 お客様に喜んで頂け、結果もついてきてのファイナルはラフマニノフのピアノコンチェルト第2番。ロイヤルフィルハーモニックオーケストラの印象は良い意味で室内楽的。アンサンブルや個々の結びつきで共に一つの音楽を作っていこうというオケでとても嬉しい。楽しい。指揮者もオケ団員一人一人もアンサンブルしよう!という気持ちで接してくださったので、特に木管セクションやチェロとのアイコンタクトをとりながらのやりとり、音楽の対話を通してみんなで一つの音楽を作り出していく充実感。このステージを楽しもう!この気持ち聴衆の皆さんにも伝わるといいなと思って臨みました。観客席は満席。コンクールということを忘れるほど楽しんだ幸せな30分は短く、ブラボーの声とスタンディングの拍手で終わりました。

指揮者のTimothy Hentyと。この身長差!笑

コンクール会場
ピアノはヤマハのCFXでした!

 そして表彰式。まずはオーケストラプライスの発表。この賞はオーケストラ団員の投票で決まり、ほぼ満場一致で僕が選ばれました。名前を呼ばれた時は本当に嬉しかった。順位は第4位でそれに関しての聴衆の反応は納得いかないという声が多く聞かれました。自分で書くのもどうかな?なのですが、なかなか僕は人気で現地のニュースやウェブサイトでは1位の次に僕の名前と演奏が取り上げられていました。

4回にわたって取り上げられた地元ウェブサイト

 他のコンテスタントにも良い刺激を受け、得るものが多い2週間でした。
最終日はホテル宿泊でしたが、翌日審査員長が僕のホテルの部屋まで訪ねてきてコンクールの講評やアドバイスをくださいました。
なんと気持ちのこもったコンクールなのでしょう!

ファイナル出場のコンテスタントと

<おまけの話>
 最終日に宿泊したホテル。受賞者ディナーが夜中の2時頃終わって部屋に戻ると猫が侵入してベッドの上ですっかりくつろいでいます。僕を慰めに来てくれたわけではなくこのベッドがお気に入りでしかも僕の本番用の靴がお気に入りのようでスリスリしているし、毛づくろい始めちゃって…(苦笑)

ベッドの上でくつろぐ猫。隣にちょっと写っているのは表彰状

 今回は手応え感じながらも第4位と正直言うと少し悔しい結果となりましたが、また頑張ろう!と思った充実した2週間でありました。


 ここでお知らせです!
 4月5日にデビューCD「sailing day」がフォンテックからリリースされました。
 昨年12月8・9日、ヤマハアーティストサービス東京にて収録いたしました。
 これから発売イベントなども計画していますので、その時は是非足をお運びくださいね。

写真11
黒岩航紀デビューCD 「sailing day」
●ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第23番 ヘ短調 Op.57「熱情」
●ショパン:バラード 第1番 ト短調 Op.23
●ドビュッシー:前奏曲集 第1巻(抜粋)
アナカプリの丘
西風の見たもの
亜麻色の髪の乙女
パックの踊り
●リスト:パガニーニによる大練習曲 第3番 嬰ト短調「ラ・カンパネッラ」
●リスト:コンソレーション 第3番 変ニ長調
●リスト:ハンガリー狂詩曲 第6番 変ニ長調
●リスト:メフィスト・ワルツ 第1番

 

フォンテック FOCD9746

発売日:2017年04月05日 ¥2,800(税抜)

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pianist 黒岩航紀

pianist 黒岩航紀
1992年生まれ。
東京藝術大学音楽学部附属音楽高等学校を経て、東京藝術大学音楽学部ピアノ科を首席で卒業。第11回東京音楽コンクールピアノ部門第1位、及び聴衆賞受賞。第19回松方ホール音楽賞受賞(第1位)。第84回日本音楽コンクールピアノ部門第1位。第13回ヘイスティングス国際ピアノコンチェルトコンペティション(英国)第4位及びオーケストラプライズ受賞。第6回秋吉台音楽コンクール室内楽部門最高位。
国内外の多くの演奏家からの信頼も厚く、室内楽においても高い評価を得ている。 これまでに東京フィルハーモニー交響楽団、東京交響楽団、新日本フィルハーモニー交響楽団、日本フィルハーモニー交響楽団、東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団、藝大フィルハーモニア管弦楽団、セントラル愛知交響楽団、ロイヤルフィルハーモニックオーケストラ(英国)等と共演。
芹沢直美、秦はるひ、江口玲、各氏に師事。
公益財団法人青山財団奨学生。宗次エンジェル基金/公益社団法人日本演奏連盟新進演奏家国内奨学金制度奨学生。2016,17年公益財団法人ロームミュージックファンデーション奨学生。
2017年東京藝術大学大学院音楽研究科修士課程修了。同年4月にデビューCD「sailing day」をリリース。

公式HP:www.kokikuroiwa.com/
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※上記は2017年6月20日に掲載した情報です。