この記事は2018年8月28日に掲載しております。
2015年の浜松国際ピアノコンクールで鮮烈な演奏を繰り広げ、最年少の18歳で第3位に入賞した後、2017年にはヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールで第3位、および室内楽演奏賞、新曲演奏賞を受賞し、期待の新星として注目を集めているダニエル・シューさん。6月の来日ツアー中にお話を伺い、ひたむきに音楽に向き合う21歳の素顔に迫りました。
© Jeremy Enlow/The Cliburn
- pianist
ダニエル・シュー - 「なぜかその演奏に惹きつけられ、心を奪われる豊かな表現の切り口を持ち合わせた“詩人”」(フィラデルフィア・インクワイアラー紙)
1997年アメリカ、サンフランシスコ出身生まれ。6歳で音楽の勉強を始め、10歳でカーティス音楽院に入学、ラン・ランやユジャ・ワンを育てた名教授ゲイリー・グラフマンとエレノア・ソコロフの元で10年間学んでいる。
アルゲリッチらも審査員として参加し話題となった2015年第9回浜松国際コンクール第3位(最年少参加)、2017年6月ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクール第3位及び、室内楽演奏賞、新曲演奏賞受賞。デッカゴールドからコンクールライブを収録したソロアルバムをリリース。クライバーンコンクールで最優秀室内楽演奏賞を受賞したブレンターノ弦楽四重奏団との演奏は「情熱に満ち雄弁で、細部まで神経の行き届いたピアノ五重奏」(ダラス・モーニングニュース)と高く評された。他、2年ごとに22歳以下の若手ピアニストに贈られる、ギルモア・ヤング・アーティスト賞2016を受賞。2016年フィラデルフィア管弦楽団デビュー(指揮:C.マチェラル)。2017年にはNYのカーネギーホール(ワイルホール)デビューするなど注目度急上昇中のアメリカの新星。
コンピューター・プログラミングにも親しんでおり、開発貢献したiPhoneアプリ“Workflow”が2015年アップル・デザイン・アワードを受賞した。
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※上記は2018年8月28日に掲載した情報です。
シューベルトの音楽に心惹かれます
6月の日本ツアーでは、ショパンとスクリャービンの《幻想曲》を中心に、シューベルトやショパンのソナタを聴かせてくれた。10月の日本ツアーでは、シューマン《幻想曲》を演奏する。今、彼の中で、“ファンタジー”がひとつのテーマになっているようだ。
「ファンタジー、表現の可能性が無限に広がる魅力的な言葉です。イマジネーションの赴くままに表現できる……。シューマン《幻想曲》は、長い間あこがれ、ずっと弾きたいと思っていた作品なので、やっとリサイタルで取り上げることができ、自分でもすごく楽しみです。それと組み合わせるのは、ベートーヴェン《ピアノ・ソナタ第31番》、バッハ(ブゾーニ編曲)《シャコンヌ》、ショパンのマズルカなど。リサイタルのプログラムは、ある時点の自分を表現するものだと思っています。作品を通して、今自分が感じていること、語りたいことが伝えられたらいいですね」
シューベルトは、彼にとって特別な作曲家だという。
「シューベルトの音楽には、なぜかとても心惹かれます。浜松のコンクールで演奏した《即興曲作品142》、今回の日本公演で演奏した《ピアノ・ソナタ第13番》など、大切に弾き続けたいレパートリーです。シューベルトの音楽を聴いていると、人間を超越した神の存在のようなものを感じます。こんなに美しく純粋な音楽が、人間に書けるはずがないと思うのです」
コンピューター・プログラミングにも取り組み、開発に携わったiPhoneアプリ「Workflow」は、2015年アップル・デザイン・アワードを受賞した。
「友人たちがWorkflowという会社を作り、僕も時間の許す限りアプリの開発に貢献したということなのです。素晴らしい賞をいただき、その後アップル社が友人たちの会社を買い取り更なる発展をしていることは、とても誇らしく思います」
好奇心にあふれ、多彩な才能の持ち主だが、自分にとって一番大切なのはやはり音楽だと語る。
「いろいろなことに興味があり、その中でもコンピューター・プログラミングは大好きです。でも、音楽ほど大きな喜びを与えてくれるものはありません。音楽は言葉や絵画などでは表現できないものを表現することができます。一生をかけて自分自身の音楽を追求していきたいと思います」
のびやかな感性を持つ未来の巨匠の活躍を楽しみに見守りたい。
Textby 森岡葉
※上記は2018年8月28日に掲載した情報です。