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ケニー・ブロバーグさん バッハの音楽が大好きですが、バッハ自身の感情が理解できるまで作品とじっくり対峙し、楽譜の裏側まで読み込み、練習を重ね、自分のものにしなければなりません。 この記事は2018年12月26日に掲載しております。

アメリカ出身のケニー・ブロバーグは、2017年にアメリカ・テキサスで開催された第15回ヴァン・クライバーン国際コンクールで第2位入賞に輝いた。これまでヘイスティングス国際コンクール、シドニー国際コンクールでも入賞を果たしている。2018年11月17日には、横浜みなとみらいホールの小ホールで開催された「第37回 横浜市招待国際ピアノ演奏会」に参加。J.S.バッハのトッカータ ハ短調BWV911とバーバーのピアノ・ソナタ変ホ短調作品26を演奏した。コンサートの翌日、コンクールのこと、ピアニストとしての歩み、バッハについてなど、さまざまな話を聞くことができた。

Profile

pianist ケニー・ブロバーグ
© Jeremy Enlow/The Cliburn

pianist
ケニー・ブロバーグ
1993年アメリカ、ミネアポリス生まれ。2017年第15回ヴァン・クライバーン国際コンクールの銀メダリスト。「想像力豊かな主題の作り方、明瞭な内声、尽きることのない推進力のセンス」(テキサス・クラシカル・レビュー)と評されている。
2017-2018シーズンは全米各地及びヨーロッパでもリサイタルやオーケストラソリストとしての出演が予定されている。またクライバーンコンクールライブ音源によるソロ・デビューアルバムが8月にデッカ・ゴールドレーベルよりリリースされた。6歳からピアノを学ぶ。2016年ヒューストン大学のムーアズ音楽学校卒業。現在はパーク大学にて、2001年クライバーン優勝者であるスタニスラフ・ユデニチの元で研鑽を積む。
ヘイスティングス国際、シドニー国際、シアトル国際、ニュー・オリンズ国際コンクールなど有数のコンクールで入賞。ソリストとしてロイヤル・フィル、ミネソタ管、シドニー響、ダラス室内管、フォートワース響、ルイジアナ・フィルなど多数のオーケストラと共演を果たしている。これまでに指揮者ルドヴィック・モルロー、カルロス・ミゲル・プリエト、レオナード・スラットキン、ケント・ナガノ、ニコラ・ミルトン、ニコラス・マギーガンと共演。ソロ、室内楽、協奏曲の演奏が、HPR放送(ハワイ)やABC放送(オーストラリア)などで放映されており、2016年のシドニー国際ピアノコンクールのライブ音源がオーストラリアのユニバーサル・ミュージック・レーベルからリリース。

※上記は2018年12月26日に掲載した情報です。

すばらしい3人の先生に師事

 ケニー・ブロバーグは1993年、アメリカ中西部の都市ミネアポリス生まれ。家には母方の祖母が母親の結婚祝いにと贈ってくれたアップライトピアノがあり、4歳上の兄とよく遊びながら弾いていた。その兄がピアノのレッスンを始めたため、自分も習いたいと母親に頼んだが、ダメだった。
「母は、すでにひとりピアノを習っている子がいるのだから、あなたはヴァイオリンにしなさいといって、私は最初ヴァイオリンを習うことになったのです。でも、どうしてもピアノが弾きたくて、6歳からピアノも始め、9歳まではヴァイオリンとピアノの両方を習っていました。その後、ひとつの楽器に集中した方がいいということになり、私はピアノを選んだわけです。もうそのころから“自分は音楽の道で生きていきたい”と考えていました」
 やがてヒューストン大学に進み、その時期にプロのピアニストとして活動を始める。
「私はすばらしい3人の恩師に恵まれました。まず、最初に就いたジョセフ・ジン先生は、音楽に対する愛情と尊敬の念を植え付けてくれました。18歳まで彼に師事しています。
その後、ヒューストン大学では、ナンシー・ウィームズ先生に就きましたが、彼女は母親のような存在で、私にとっては特別な人です。天性の音楽家で、この時期に私はプロのピアニストとしてのスタートを切ったのです。
 その次に師事したのがスタニスラフ・ユデニッチ先生で、現在も師事しています。彼は2001年のヴァン・クライバーン国際コンクールの優勝者で、非常に幅広い知識の持ち主。音楽の伝統がどのように受け継がれてきたかということを教えてくれます。
 ユデニッチ先生からヴァン・クライバーン国際コンクールに参加するよう勧められたのです。でも、最初はそんなに大きなコンクールに出るにはまだ早すぎると辞退しましたが、先生は大丈夫だと背中を押してくれました」

コンクールではいつも通りに演奏

 同コンクールは非常に課題曲が多いことで知られる。室内楽や新曲もあり、本選では2曲のコンチェルトを弾かなくてはならない。
「ものすごく多い作品を弾くことになりましたが、最初にステージに出た途端、私はいつも通りに自分の音楽を演奏することができると気づき、プレッシャーはあまり感じませんでした。課題曲は確かに多いですが、自由に選べる面があり、自分の得意な作品を弾くことができます。コンチェルトの ひとつはモーツァルトを選び、これは大好きな曲ですので緊張せずに弾くことができました。新曲は2~3カ月前に楽譜が届けられるのですが、審査員も務めたマルク=アンドレ・アムランの《トッカータ》という曲でした。古代の聖歌を現代に蘇らせたという曲想で、難度もかなり高いのですが、私にとっては弾きやすい作品でした」
 このコンクール入賞により、ブロバーグの人生は大きく変わることになる。
「みんながコンクールで優勝や入賞を果たすと人生が一夜で変わるといっていたのですが、まさにその通りですね。私も人生が劇的に変化しました。まず、コンサートの数がものすごく増え、それに合わせてレパートリーを増やさなくてはならない。ユデニッチ先生はホールでずっと聴いてくれ、入賞をとても喜んでくれましたが、私自身はこのチャンスを生かさないといけないと思って、気を引き締めています」

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ケニー・ブロバーグさんへ “5”つの質問

※上記は2018年12月26日に掲載した情報です。



横浜市招待国際ピアノ演奏会の様子(201811.17)

撮影:藤本史昭
提供:横浜みなとみらいホール