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河島 利香 さん (Rika Kawashima) ピアノの色彩感を表現できたとき、演奏する楽しさを実感します。
この記事は2017年9月22日に掲載しております。

2017年6月に開催された「第29回宝塚ベガ音楽コンクール ピアノ部門」で第1位に輝いた河島利香さん。フランス音楽に熱心に取り組む河島さんは、現在、大阪音楽大学ピアノ演奏家特別コース3年生。コンクール優勝を機に、新たな一歩を踏み出す河島さんに、ピアノへの想いを聞いた。

Profile

pianist 河島 利香

pianist
河島 利香
1996年大阪府大東市生まれ。6歳からピアノを始める。
大阪府立夕陽丘高等学校卒業。2004年~ピティナ・ピアノコンペティション全国決勝大会にて、A1級・F級・G級入選、B級ベスト賞。
第62回、67回全日本学生ピアノコンクール大阪大会入選。第19回、20回、22回大東楽器ピアノフェスティバル本選会グランプリ受賞。第18回、20回、22回、24回、27回ヤマハヤングピアニストコンサートファイナル推薦演奏会出演。第30回日本ピアノ教育連盟本選優秀賞。第1回豊中音楽コンクール大学・一般の部、ピアノ部門第1位。第29回宝塚ベガ音楽コンクール ピアノ部門第1位、併せて兵庫県知事賞を受賞。
現在大阪音楽大学演奏家特別コース3回生。これまでに森洋子、佐藤美香、稲田節子、賀來満智子の各氏、同大学にて仲道郁代、芹澤佳司、芹澤文美の各氏に師事。
※上記は2017年9月22日に掲載した情報です。

ピアノの色彩感を表現できたとき、演奏する楽しさを実感します

 初々しい雰囲気を漂わせ、静かに語り始める河島利香さん。コンクールの感想を聞くと、「まさか受賞できるとは思っていませんでした」とあくまで控えめ。しかし、大好きなドビュッシーの演奏については「自分の思うように弾けました」と手応えを語った。
 「自由曲で演奏した《喜びの島》は、自分の中にある『島へ向かう情景』を思い浮かべながら弾くことができました。途中には華やぐ時間があり、また迷いや不安もあるのですが、それらを乗り切って喜びの島にたどりつく。そんなイメージです」
 作品の世界を豊かに広げていく河島さん。コンクールの舞台で彼女が選んだのは、これまで慣れ親しんできたヤマハだった。取材時に演奏したCFXからも、芯のある重厚な和音、繊細で美しいパッセージを紡ぎ出した。
 「幼い頃からずっと弾いてきたヤマハは、私にとって最も弾きやすいピアノです。特に今回の曲目では高音域を軽く弾きたかったので、迷わずヤマハを選びました。本番のステージでも、音色、響きともに、自分の思うように表現できたと思います」

 音、響きへの明確なイメージを持つ河島さんと音楽の出会いのきっかけは、ヤマハ音楽教室。歌うことやグループでのアンサンブルが好きだったそうだ。
 「レッスンがとても楽しかったですね。歌うことは今でも好きで、声楽科の伴奏も楽しみながら演奏しています」
 幼少時にはエレクトーンも演奏していたという河島さん。音楽を心から楽しむ感性を豊かに育み、6歳から本格的にピアノのレッスンをスタート。先生から渡される曲の数々に触発されるかのように、幼い頃から集中して何時間もピアノに向かった。小学校低学年から挑んだ数々のコンクールを「広い会場で大きなピアノが弾けることとドレスが着られることが嬉しかった」と、微笑ましい思い出として振り返る。こうして多くの刺激を受けるなかで、小学生の頃にドビュッシーに心を奪われていく。
 「フランス作品が大好きになり、いつかドビュッシーやラヴェルを弾きたいという一心で練習を続けました。中学生で《ピアノのために》を弾いたとき、心から楽しんで弾いていたのを覚えています。ピアノで色彩を表現することの大切さを知りました」
 音で表現する色彩感。それを追い求めるうちに、自分がドビュッシーに惹かれるのは「ドビュッシーが日本を好きになった感性に近いのかもしれない。日本人の感性と何か通じるものがあるのではないか」と思うようになった。そして、ラヴェルにも惹かれていく。
 「現在は、コンクールでも弾いた《ラ・ヴァルス》に取り組んでいます。もともとは管弦楽曲として作曲された作品ですので、オーケストラのいろいろな楽器をイメージしながら弾いています。1台でいろいろな楽器が表現できるところも、ピアノという楽器の魅力のひとつではないかなと思います」
 たとえばフルートを思わせる響き、歌うようなバイオリンの旋律……。どうしたらイメージ通りの音が出せるのか、1音1音、タッチを変え、時間を忘れて響きを探求する河島さんの姿が目に浮かぶようだ。「宝塚ベガ音楽コンクール」の入賞者による記念演奏会「ベガ・ウィナーズコンサート」(2018年1月開催予定)では、コンクールの演奏曲に加え、新たなレパートリーも披露されるという。どんなステージになるのか、期待は高まる。

 幼い頃に歌やアンサンブルに親しみ、高校、大学では箏、三味線といった和楽器の演奏体験からも刺激を受け、響きへの感性を高めている河島さん。大学で受けた「ピアノ教授法」という授業では、学生同士でレッスンを実践し、言葉によって相手のレパートリーが広がっていく楽しさを学んだという。大阪音楽大学での師との出会いや、同じ志を持つ友人たちとの触れ合いもまた、新たな成長をもたらす貴重な場となっていることだろう。
 卒業後は大学院に進み、さらに研鑽を積んでいきたいと語る。幅広い音楽への興味、関心によって音楽性を深めている河島さんの未来には、無限の可能性が広がっている。彼女のキャンパスにこれからどのような色が加えられ、独創的な世界が描かれていくのか。今からとても楽しみだ。

Textby 芹澤 一美

※上記は2017年9月22日に掲載した情報です。