2人のオーケストラ奏者が語る、ヤマハ木製フルートを選んだ理由。

オーケストラ奏者が語る - 私たちがヤマハ木製フルートを使う理由 - 吉岡アカリ×満丸彬人

「遠くまでブリランテな音で聞こえ、
弱音も確実にコントロールできる」
(吉岡)
「僕が木製フルートに求める音の明るさ、軽やかさ、吹奏感の軽さがある」
(満丸)

通常の木製フルートよりも軽量でありながら、大ホールやオーケストラで素晴らしい音量感が得られるとして、 特にオーケストラ奏者たちの注目を集めるヤマハ木製フルート。
その魅力を東京フィルと
名古屋フィルの二人に語って頂いた。

この記事は管楽器専門誌PIPERS
2023年1~2月(497号・498号)に
掲載されたものです。
(雑誌PIPERSは2023年4月より休刊)

INTERVIEWEES

[顔写真]

東京フィルハーモニー交響楽団首席フルート奏者

吉岡アカリAkari Yoshioka

[顔写真]

名古屋フィルハーモニー交響楽団フルート奏者

満丸彬人Akito Mitsumaru

吉岡アカリ Akari Yoshioka
京都市立堀川高校音楽科を経て東京芸術大学入学。1985 年同大卒業。安宅賞受賞。読売新人演奏会出演。卒業と同時に東京フィルハーモニー交響楽団に入団、首席奏者として現在に至る。1983 年ニース音楽アカデミーでディプロム取得。福井ハープコンクール最優秀賞。1993 年文化庁在外研修員としてベルリンに留学しA. ブラウ氏に師事。ベルリン・ドイツオペラでも研鑽を積む。ソリストとして東京フィルや兵庫芸術劇場オーケストラ、九州交響楽団ほかと共演したほかアジアフィルの首席も務める。詩人の谷川俊太郎氏とコラボレーションを組み全国で展開するなどジャンルを超えた活動も行う。歌手からの信頼も厚く、エディタ・グルベローヴァ、ルチア・アルベルティ、スミ・ジョー、佐藤美枝子らのリサイタルにソリストとして共演。フルートを伊藤公一、川瀬瑩公、金昌国、ハンス・ペーター=シュミッツ、エリック・キルショフ、ヴォルフガング・リッターの各氏に、室内楽を山本正治氏に師事。武蔵野音大、洗足学園音大各講師。ミャンマー国立交響楽団講師。アジアフルート連盟理事。
満丸彬人 Akito Mitsumaru
鹿児島県出身。鹿児島県立松陽高校音楽科を経て東京藝術大学を同声会賞を得て卒業、同大学院修士課程を修了。瀬木芸術財団の奨学金を得てフランスに留学しパリ地方音楽院、エコール・ノルマル音楽院で演奏家ディプロム取得。クラマール音楽院でピッコロを学ぶ。第18 回コンセール・マロニエ21 木管部門入選、第19 回びわ湖国際フルートコンクール一般の部2位、第1回刈谷国際音楽コンクール・グランプリ、第16 回ゲオルグ・ディマ国際コンクールフルート部門最高位、ジュンヌ・フルーティスト国際コンクールピッコロ部門2位、第18 回日本フルートコンベンションピッコロ部門1位。フルートを佐賀友美、木村紀子、浅生典子、木ノ脇道元、神田寛明、高木綾子、小池郁江、ヴァンサン・リュカ、ジョナータ・スガンバロ、クロード・ルフェーブルの各氏に、ピッコロをピエール・デュマイ、ナタリー・ロザ、ピエール・モンティの各氏に師事。東京吹奏楽団を経て、現在名古屋フィルハーモニー交響楽団フルート奏者。 大垣女子短大、名古屋芸大、愛知県立芸大各非常勤講師。
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東京フィルハーモニー交響楽団首席フルート奏者

吉岡アカリAkari Yoshioka

吉岡アカリ Akari Yoshioka
京都市立堀川高校音楽科を経て東京芸術大学入学。1985 年同大卒業。安宅賞受賞。読売新人演奏会出演。卒業と同時に東京フィルハーモニー交響楽団に入団、首席奏者として現在に至る。1983 年ニース音楽アカデミーでディプロム取得。福井ハープコンクール最優秀賞。1993 年文化庁在外研修員としてベルリンに留学しA. ブラウ氏に師事。ベルリン・ドイツオペラでも研鑽を積む。ソリストとして東京フィルや兵庫芸術劇場オーケストラ、九州交響楽団ほかと共演したほかアジアフィルの首席も務める。詩人の谷川俊太郎氏とコラボレーションを組み全国で展開するなどジャンルを超えた活動も行う。歌手からの信頼も厚く、エディタ・グルベローヴァ、ルチア・アルベルティ、スミ・ジョー、佐藤美枝子らのリサイタルにソリストとして共演。フルートを伊藤公一、川瀬瑩公、金昌国、ハンス・ペーター=シュミッツ、エリック・キルショフ、ヴォルフガング・リッターの各氏に、室内楽を山本正治氏に師事。武蔵野音大、洗足学園音大各講師。ミャンマー国立交響楽団講師。アジアフルート連盟理事。
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名古屋フィルハーモニー交響楽団フルート奏者

満丸彬人Akito Mitsumaru

満丸彬人 Akito Mitsumaru
鹿児島県出身。鹿児島県立松陽高校音楽科を経て東京藝術大学を同声会賞を得て卒業、同大学院修士課程を修了。瀬木芸術財団の奨学金を得てフランスに留学しパリ地方音楽院、エコール・ノルマル音楽院で演奏家ディプロム取得。クラマール音楽院でピッコロを学ぶ。第18 回コンセール・マロニエ21 木管部門入選、第19 回びわ湖国際フルートコンクール一般の部2位、第1回刈谷国際音楽コンクール・グランプリ、第16 回ゲオルグ・ディマ国際コンクールフルート部門最高位、ジュンヌ・フルーティスト国際コンクールピッコロ部門2位、第18 回日本フルートコンベンションピッコロ部門1位。フルートを佐賀友美、木村紀子、浅生典子、木ノ脇道元、神田寛明、高木綾子、小池郁江、ヴァンサン・リュカ、ジョナータ・スガンバロ、クロード・ルフェーブルの各氏に、ピッコロをピエール・デュマイ、ナタリー・ロザ、ピエール・モンティの各氏に師事。東京吹奏楽団を経て、現在名古屋フィルハーモニー交響楽団フルート奏者。 大垣女子短大、名古屋芸大、愛知県立芸大各非常勤講師。

「頑張って吹かなくても
楽器が良い音で鳴ってくれる」
という感覚(満丸)

お二人とも早くから木製フルートをお使いですか?

吉岡:初めて買ったのは20年以上も前で、他社製のものでした。バロックのコンサートがあり、音色や、見た目……と言ったら何ですが(笑)、その時代のスタイルに近づければと思ったのが最初です。
ただ、オケの本番では普段使っている金属の音色感とややかけ離れた感じがして、使うのは怖かった。そう思っていたら、4年ほど前に、知り合いが吹いていたヤマハの木製フルートを試奏させてもらい、これならオケでも試せるかなと思えたんですね。普段使っている金属の楽器に音質が近く、とても扱いやすかった。それがヤマハ木製フルートと出会った最初です。

満丸:僕は大学を出るまで木管への興味は正直なかったんですが、オーケストラアンサンブル金沢にエキストラで行ったとき、岡本えり子さんの木管を吹かせて頂いて、「僕が吹きたかったフルートはこれだ!」と。

吹きたかった「木製フルート」?

満丸:いえ、吹きたかった「フルート」です。それまでシルバーやゴールドを吹いて来て、どこか無理をしながら頑張って吹いていたんじゃないかと。学生時代は試験やコンクールを目標に、いつも「一所懸命に吹く」という感覚で楽器と向き合い、自分に余裕が持てなかった。それが、初めて木製フルートを吹いてみたら、「頑張らなくていいよ」と楽器が言ってくれるような感じがしたんですね。頑張らなくても楽器が良い音で鳴ってくれるというのは初めての感覚でした。これが僕のヤマハ木製フルートとの出会いでした。

他のリード楽器と溶けやすい音色を
作れるメリットがある(吉岡)
この楽器に出会った時から自分との
相性の良さを感じた(満丸)

金属管と違和感のないものを

吉岡さんの場合、オーケストラでは吹奏感や音質など、金属管にできるだけ近い木製のフルートを求めていらっしゃった?

吉岡:そうですね。木製を選ぶ条件としては、金属管と持ち替えたときに、唇のフィット感などに違和感がないものをと。木製で吹き方を変えるということはしたくないんです。
オケでの私のパートは、メロディがきちんと浮き出るかどうか、客席の遠くまでブリランテな音で聞こえるかどうかということと、弱音も確実にコントロールして吹けるか、というこの二つが求められますけど、それが同時にできる楽器でないと本番では使いにくい。ヤマハの木製フルートはそれができると思いました。
その昔、木製フルートは金属に比べて音が弱々しいとか、音程がいま一つといったイメージがありましたけど、今は目をつぶって聴いても金属管との違いがほとんど分からないと思います。それでいて、他のリード楽器と溶けやすい音色を作れるメリットがあるんですね。

オケではどのくらいの割合で木管を使われていますか?

吉岡:7対3か8対2くらいで木製ですね。

そこまで木管を使われる積極的な理由は?

吉岡:音が周りに溶けやすく、吹きやすいというのと、音の柔らかさでしょうか。僕の金属の楽器はプラチナメッキで、音質がわりと硬く、音が立ちやすい。メロディラインが埋もれちゃいけないという理由で使っていますが、ヤマハの木製フルートは、それよりもう少し音が柔らかく溶けやすく感じます。

満丸さんの場合、オケで木管を吹く割合は?

満丸:オーケストラのセカンドは共演者に寄り添う仕事ですので、その意味では楽器を使い分ける必要性を感じています。モーツァルトやベートーヴェンなどで木管を使ったり、ファーストの二人に合わせて使い分けたり……結果としてオケで木製を使うのは半分くらいですね。個人的には、この楽器に出会った時から自分との相性の良さをすごく感じ、出来るだけ多く使いたいと思ってはいますが。

名古屋フィルでもファーストが木製を吹く場合もある?

満丸:あります。オケにも1本木製がありますし。

吉岡さんのヤマハ木製フルートはインラインリングキー・H足部管付きのYFL-894W。

満丸さんのヤマハ木製フルートは吉岡さんと同じインラインリングキーのYFL-894Wだが、足部管はC足部管。

機能性でも優れている

満丸さんは木製フルートのどんなところに魅力を感じられて?

満丸:一番は、音色感です。僕は金属管を吹いても音が柔らかくなる吹き方をしているので、木製にすごく相性の良さを感じます。ヤマハの木製フルートはまた、機能性でも金属管に引けをとらない。と言うよりむしろ、音がより滑らかにつながりますし、指も思った通りに動いてくれる。木製フルートは管体が金属管よりもやや太いんですね。指にフィットしやすい。

吉岡:金属管で左手にプロテクターを付け、指の当たりを太くして吹く人がいますが、木製の場合は最初からその太さがあるので、指にとてもなじみやすい。

満丸:楽器の重量も、木製フルートの方が軽いですよね。

吉岡:そう。実際に量ったことはありませんけど、ヤマハは特に軽く感じます。この点では頭部管と本体の重量バランスが大事で、頭部管に重い材質が使われて楽器のバランスが悪いと、左手がやられてしまう。ヤマハはそのバランスもとても良い。

満丸:僕はC足部管の楽器を使っていて、吉岡さんのH足部管の楽器よりも短く、重さも軽いんです。楽器は重ければ重いほど重厚感のある音が出ますが、僕が木製フルートに求めるのは音の明るさ、軽やかさ、吹奏感の軽さなので、僕にとって楽器の軽さはとても大事です。

吉岡:僕は金属管も「H足」です。仕事柄、第3オクターブのメロディを吹くことが多く、そんな時はH管の方が響きや音のコントロール性が良く感じるんですね。中音ではC管の方が明るい音がしていいと思うこともありますけど、自分が何を優先するかのメリットとデメリットを考え、最終的にH管にしました。

グラナディラ材から頭部管と一体で削り出されたリッププレート。標準「TypeEW」が付属。より抵抗感のある「TypeHW」も選べる。

トーンホールにはめ込み式音孔を採用し、金属製フルート同様の大きな面積を確保。安定した音程と音量を実現し、透明感のある音色を作り出す。

頭部管のジョイントは主管と隙間なくフィットし、重量を軽くし音がまとまりやすくなる。足部管をつなぐ銀製ジョイントも楽器を軽量化するだけでなく、響きの減衰を押さえる。

世の中の流れは……

木製を吹き始めたとき、楽器をフルに鳴らすのに慣れは必要でしたか?

吉岡:金属管だと上から下までダイレクトにポーンと鳴りますけど、木製では音の響かせ方やタンギングの強さなど、いろんな部分で最初は対等に行かなかったことは確かです。息の入れ方をどうすれば金属管と対等な響きになるのか、などの感覚を覚えて行きました。

満丸:僕の場合、木製を吹きたくてフルートを吹いているという感覚ですから、どうすれば木製の吹き方を金属管に生かせるか、などと考えたりします。

オーケストラで音を遠鳴りさせるような吹き方は木製フルートでも金属管と同じですか?

吉岡:特に変えてはいませんね。当然、聞こえ方や響きは金属管とは違うでしょうが、そのために唇をいじったりすると、下手すると潰れてしまう(笑)。基本的に吹き方は変えてないつもりです。

満丸:変えなきゃいけないとなると、しんどいですよね。

吉岡:仲間や客席で聴いている人に木管だと気づかれないこともありますよ。それだけヤマハの木製フルートはよく響いている証拠だと。
余談ですが、僕はちょっと古めの銀管も持っていますが、オケでは聞こえにくい柔らかめの音色が出て、わかりやすく言うと、木管の中で埋もれてしまいます。特に東フィルの木管はボリューミーですから。これは私自身が前任者から引き継いだオケの伝統でもありますし、これらの音量を基本に他の弦や金管セクションも成り立っています。そんな中で、ヤマハも含めて現代の木製フルートは音量的にも大きく進化していますね。

現代の木製フルートはゴールドのフルートに太刀打ちできる楽器になった?

吉岡:今から20~30年前は、オケ吹きも含めてみんなゴールドのフルートを求めていました。僕ももちろん持っています。しかし、ここ10年くらいから「ゴールド離れ」が起きつつあるんですね。
これは僕自身が感じたことですが、高価な材質ほど音が遠くまで響くというのが伝説化されていたところに、僕のはプラチナメッキですけど銀製を吹き始めたとき、「あれ、そんなに変わらないんじゃない?」と気づき始めた。同僚たちに聞いてもみんなそうです。価格が5倍ほども違うじゃないですか。ゴールドが800万、900万なのに対し、銀は150万くらい。響きがそれほど違うかと言うと、実はあまり変わらないことにみんながハタと気づき始めた(笑)。その延長線上に「銀に戻しました」とか「木もありなんじゃないか」という流れがあると思うんですね。

満丸:いまベルリンフィルにいるセバスチャン・ジャコーが、2013年の神戸国際フルートコンクール本選で木製を吹いたんですよ。国際コンクールで木製を吹いた人なんて、僕はそれまで見たことがなかった。でも、彼の演奏は誰よりも魅力的でした。僕が木製に興味を抱くようになったきっかけの一つです。世界的に活躍する自分と近い世代の人たちが木製で素晴らしいパフォーマンスをしていることに、僕はとても刺激を受けています。いま木製の需要が広まっているのは、そうした影響もあると思いますね。

購入して7~8年……音がまろやかになって来たような感じがする(満丸)

頭部管との相性

フルート選びでは、まず頭部管が一番気になるところだと思いますが、ヤマハ木製フルートの場合はいかがでしたか?

吉岡:試奏する時にまず何をみるかというと、「音が強く鳴るか?」「大きく鳴るか?」だと思うんです。楽器の選定を頼まれた時でも、大きな音が出れば出るほど吹奏感がよく感じられて、どうしてもそこに注意が行きやすくなります。でも、オーケストラの仕事をしていると、例えばピアノ、ピアニシモで自分の思ったタイミングと音量、音程で出せるコントロールしやすさというのが、頭部管選びの重要なポイントになってくる。単純に音が大きいかどうかだけで選んでしまうと、後悔することになります。僕のヤマハの頭部管は、その両面をカバーしていますね。

満丸:僕はヤマハの同タイプの木の頭部管(標準タイプの「EC」)を2本持っていますが、それぞれに個性があり、使い分けています。

吉岡:木の頭部管でも、メーカーによってはポイントや息を吹き込む角度の違いなどで、僕がまったく鳴らせないものがあったりする……。

満丸:メーカーとの相性って大きいですよね。

木製だと、経年によって変化することもあると思うのですが。

満丸:購入して7~8年になりますけど、だんだん味のある音が出るようになったと感じます。音がまろやかになって来たような……木がなじんで来たんでしょうかね。

割れのリスクはありますよね。

吉岡:ありますね。以前、別の頭部管を作って頂いたとき、さらっていたらパキッと音がして、「あれ?」と思って見るとスーッと割れが入っていた。小まめに水分を拭き取ることは必須です。
冬になると、楽器が温まるのも金属管より時間がかかります。金属管は熱伝導がいいのですぐに温まりますが、木製は早めに息を吹き込んで温めておかないといけない。去年の紅白歌合戦(※2021年)ではYOASOBIのバックでこの楽器を吹いたんですが、その会場が10℃くらいしかなかった。

満丸:室内ですよね?

吉岡:室内だけど、東京フォーラムのロビー。もう、割れてしまわないか心配で心配で……(笑)。

ヤマハの木製フルートは頭部管と本体の重量バランスがとても良い。

いろんな可能性を試してみたいから
現代音楽でも使う(吉岡)

現代曲にもすごく合う

東京フィルで吉岡さんが木製を吹かれる場合は、セカンドの方も木製が多いのですか?

吉岡:必ずしもそうじゃありませんが、事前にメールで伝えておいたりはします。

ファーストが木製だとセカンドはそれなりの対処が必要?

吉岡:最初にお話ししたように、僕は基本的に吹き方や響きをそこまで変えているつもりはなく、セカンドの人が違和感ないように吹いているつもりです。

満丸:僕はトップが木製の場合は、木製で合わせることが多いかも知れません。木製どうしの方が楽な気がしますね。上の金属管の場合、下が木製で合わせるのは可能ですけど、上が木製の場合、下が金属管で音を寄せていくのは難しい感じがします。吉岡さんは、例えばプロコフィエフやショスタコーヴィチなどで、音のエッジをすごくクリアに出さないといけないような時も木管で吹かれたりしますか?

吉岡:それはないですね(笑)。

レパートリーではどんな場合に木管を?

吉岡:モーツァルトやベートーヴェンなど古典ものでは木製を使いますし、逆に現代音楽でも使ったりします。

満丸:ああ、そうですね、ふっ切れたような現代曲に意外と良かったり……。

どこがいいんですか?

満丸:木製は音量の幅がすごくありますし、音の跳躍なども、僕は金属管よりも扱いやすい。現代曲にも合っていると思いますね。

吉岡:もう一つは、木製でいろんな可能性を試してみたいんですよね。この楽器で何を、どれだけできるのかと。

古典派の曲で木製を使う魅力は?

吉岡:木管セクションとしていい感じに溶け合って響いてくれているんじゃないかと……自分では聴けないので、そう思って吹いてますけど(笑)。

満丸:他の木管楽器がみんな木製なのに、フルートだけ金属って、考えてみれば不思議じゃないですか。歴史の流れでそうなってますけど、同じ素材の方が他と合いやすいのは当然じゃないかと思う。

吉岡:音楽教室で司会のお姉さんに、「では木管楽器から行きましょう。まずはフルートです。フルートは昔は木で出来ていましたが、今は金属なんです」と言って紹介されたとき、この楽器を見せて「今も木ですけど」って(笑)。

ソロでもほとんど木製ですか?

吉岡:いえ、そこまでは。あえて言ってしまうと、シビアな曲ではこれまで長年使って来た楽器にどうしても頼ってしまいがちになる、というのが本音です(笑)。

ヤマハ木製フルートは2001 年に開発されて以来のロングセラー機だ。

この記事は管楽器専門誌PIPERS 2023年1~2月(497号・498号)に掲載されたものです。(雑誌PIPERSは2023年4月より休刊)