当時の器楽作曲家たち

 

音楽史について学ぶ

バロック音楽

当時の器楽作曲家たち

コレッリ
コレッリ

ヴィヴァルディ
ヴィヴァルディ

タルティーニ
タルティーニ
この時期のヴァイオリン音楽には、ヴィタリ(G. B. Vitali, 1644頃-92)、トレリ(G. Torelli)、コレッリ(A. Corelli, 1653-1713)などの作曲家が活躍しました。彼らの作品には、教会ソナタ(緩急の4楽章の配列)、室内ソナタ(組曲とほとんど同じ)、独奏ソナタなどの形式によるものが多く、すぐ次に続く古典主義時代に重要な影響を与えていくことになります。とくに、コレッリの書いた12曲の合奏協奏曲は、この形式の確立を意味する重要性をもち、トリオ・ソナタ(2つのヴァイオリン、通奏低音を受けもつ低弦楽器とチェンバロで奏する三声部の楽曲)の形は、コレッリが完成したものとされています。

この3人の作曲家に続く世代には、ヴィヴァルディ(A. Vivaldi, 1678頃-1741)やタルティーニ(G. Taltini, 1692-1770)などがいます。前者は《四季》を含む12曲の合奏協奏曲で有名であり、後者には《悪魔のトリル》を含む80曲にものぼるヴァイオリン独奏曲が残されています。そうした作品を通して、彼は運指法や運弓法に工夫をこらし、技巧性を一段と進歩させるのに貢献しました。ドイツではヴァイオリンは、独奏よりもむしろ合奏音楽での重要な楽器として用いられており、代表的な作曲家にはテレマン(G. P. Telemann, 1681-1767)がいます。また同じ時期のフランスでは、ルクレール(J. M. Leclair, 1697-1764)が活躍していました。

一方、オルガン音楽は、バロック時代を通じて、主としてドイツを中心に盛んになっていきます。その伝統は、17世紀前半におけるローマのフレスコバルディ(G. Frescobaldi, 1583-1643)から受け継いだもので、直接には、フローベルガー(J. J. Froberger, 1616-1673)に受けつがれて、南ドイツへと広がっていくことになります。また、このイタリアからの伝統とは別に、オランダのスヴェーリンクによって開かれたもう1つの流れは、ラインケン(J. A. Reinken, 1623-1722)、ブクステフーデ(D. Buxtehude, 1637-1707)などによって、北ドイツを中心に盛んになっていき、その流れの上にやがて、バッハが現れてくることになります。

フランスとイギリスでは、オルガン音楽にはあまり見るべきものはありませんでした。むしろクープランを中心とするクラヴサン(チェンバロのフランス名)の音楽に、華やかな活動が見られました。もちろん、チェンバロ音楽は、イタリアでもドイツでもほぼ平行して発達していきますが、それぞれの国民性を反映した独特の音楽へと完成されていきます。
クープラン
クープラン

チェンバロ
チェンバロ
イタリアでは、フレスコバルディのあと、ドメニコ・スカルラッティ(D. Scarlatti, 1685-1757)が出て、555曲にものぼるソナタを書き、イタリアのチェンバロ音楽を様式的に確立します。スカルラッティは、ヘンデルやバッハと同年の生れで、35歳頃にポルトガルの宮廷楽長になりました。その後スペインに移って生涯を終えますが、重要な作品はそのソナタにあり、他の作品はわずかしか知られていません。彼の書いたソナタは後の古典主義時代のものとちがって、大部分が二部構成の1楽章によるソナタでした。技法的には、短い楽句や音型の反復を巧妙に使用したり、音階や分散和音をうまく使って、ホモフォニック的な効果をよく表しているのが特徴です。スカルラッティの後、この分野にはチマローザ(D. Cimarosa, 1749-1801)、マルチェロ(B. Marcello, 1686-1739)、パラディージ(D. Paradisi, 1707-91)、ガルッピ(B. Galuppi, 1706-85)などが出て、チェンバロのための作品を多く残しています。

フランスでのクラブサン音楽は、シャンボニエール(J. C. Chambonnieres, 1602頃-72)に始まり、クープラン(F. Couperin, 1668-1733)に引き継がれていきます。クープランは、オルドルと呼ばれる多くの組曲を書きましたが、そのほとんどは表題がつけられていて、情景や気分的な雰囲気を表す内容とともに、きわめて優雅な趣きを見せています。優美な旋律、装飾音の多用、分散和音の巧妙な使用、優雅な楽曲構成など、技法的にも顕著な特徴が見られ、この時期のフランスのクラヴサン音楽の様式を確立したといえます。また、クープランは1716年に奏法に関する書である《クラヴサン奏法》を出版しています。このフランスの伝統は、その後ラモー(J. P. Rameau, 1683頃-1764)へと受け継がれていきます。

またドイツでは、フィッシャー(J. C. F. Fischer, 1665頃-1746)が平均律による曲集を書き、《聖書ソナタ》で知られるクーナウ(J. Kuhnau, 1660-1722)やパッヘルベル(J. Pachelbel, 1653-1706)などが活躍しますが、やはりオルガン音楽が優位に立っていたといえます。