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上原ひろみさん 長い歴史をもつピアノに対しては常に低姿勢で接し、「弾かせていただきます」という心構えでいます。~上原ひろみさんインタビュー この記事は2019年9月13日に掲載しております。

10代の頃より新時代のジャズ・シーンをリードする新鋭として注目を集め、今や世界的な名声を得て活動を続けている上原ひろみ。ソロ・ピアノ・アルバムとしては10年ぶりとなる『スペクトラム』は、ピアニストとしての研ぎ澄まされた感覚と、彼女が紡ぎ出す音がストレートに伝わってくるアルバムだ。

Profile

pianist 上原ひろみ

pianist
上原ひろみ
1979年静岡県浜松市生まれ。6歳よりピアノを始め、同時にヤマハ音楽教室で作曲を学ぶ。17歳の時にチック・コリアと共演。1999年にボストンのバークリー音楽院に入学。在学中にジャズの名門テラークと契約し、2003年にアルバム『Another Mind』で世界デビュー。2008年にはチック・コリアとのアルバム『Duet』を発表。2011年には2作連続参加となったスタンリー・クラークとのプロジェクト作『スタンリー・クラーク・バンド フィーチャリング 上原ひろみ』で第53回グラミー賞において「ベスト・コンテンポラリー・ジャズ・アルバム」を受賞。2013年にはアルバム『MOVE』の全米発売に合わせ、アメリカで最も権威のあるジャズ専門誌「ダウンビート」4月号の表紙に登場。2016年4月には上原ひろみザ・トリオ・プロジェクト feat. アンソニー・ジャクソン&サイモン・フィリップスとして4枚目のアルバム「SPARK」をリリースし、アメリカのビルボード・ジャズ総合チャートで1位のヒットを記録。2017年には「BBC Proms」への出演、コロンビアのハープ奏者エドマール・カスタネーダとのアルバム「ライブ・イン・モントリオール」のリリース、また日本人アーティストでは唯一となるニューヨーク・ブルーノートでの13年連続公演も成功させた。そして2019年、10年ぶりとなるソロピアノアルバム「SPECTRUM」をリリースした。日本国内でも2007年の平成18年度(第57回)芸術選奨文部科学大臣新人賞大衆芸能部門を、2008年と2017年には「日本レコード大賞優秀アルバム賞」を受賞。2015年には「フジロック」のグリーンステージに登場し大観衆を熱狂させ、2016年にも「サマーソニック」、「SWEET LOVE SHOWER」、「東京JAZZ」といった大型フェスに相次いで出演し話題となった。今までに矢野顕子、DREAMS COME TRUE、東京スカパラダイスオーケストラ、熊谷和徳、レキシらとの共演ライヴも行っている。世界を舞台に今後も更なる飛躍が期待されている。
▶上原ひろみさんオフィシャルサイト
※上記は2019年9月13日に掲載した情報です。

「ピアノには低姿勢で」というアドバイスは忘れない

 調律もオリジナリティのある音楽を作り出す、大切な要素のひとつだが、彼女自身が好む調律はどういったものだろうか。

「人間らしいピアノとでも表現したらいいでしょうか。マネキンっぽくないと言い換えてもいいです。素晴らしい調律は音がふくよかになります。調律師の方はそれぞれの技術やセンスをお持ちですし、3本の弦の音をブレンドさせて微妙な調整からどういう倍音を生み出すのかが腕の見せどころだと思います。私が信頼してお任せしている方たちは、私の音の好みを理解してくれていますので、そうした調律師さんに出会えたのは幸運です」

 上原はキャリアがまだ浅かった時代に、信頼できる調律師から受けたアドバイスを今でも忘れていないという。

「今考えても素晴らしい言葉ですけれど『ピアノに対しては基本、低姿勢で接しなさい』ということです。長い歴史の中で苦労して改良を重ねてきた技術者や演奏家など、いろいろな人の思いが積み重なって今がある楽器ですから、それに比べるとほんの少ししか生きていない私に何ができるかということですよね。目の前にあるピアノは製造されて1年くらいかもしれないけれど、その背景には長く深いものがありますから『弾いてあげる』なんて思っちゃいけないし、常に『弾かせていただきます』という心構えでいるということです。本当にその通りだと思いますし、私はどのピアノにも最初は『よろしくお願いします』と、心の中で深くお辞儀をしてから弾くようにしています。それでもピアノに翻弄されてしまうのは、もうしょっちゅうですね。そういうときには『力不足ですみません』という気持ちになります」

 ピアノと深い信頼関係を結んだ彼女の音楽は生命感があり、ピアノが喜ぶものであるはず。そのかけがえのない一音一音をじっくりと味わえるのが、今回のアルバムとツアーなのだ。
 会場はクラシックのコンサートをメインに開催しているホールも多く、極上のアコースティック・サウンドを体験できるチャンスかもしれない。
 上原ひろみの新しい魅力を、そして彼女がチームと称するピアノ(ヤマハCFX)とのパートナーシップを、じっくりとご堪能いただきたい。

Textby オヤマダアツシ
ヘアメイク 神川成二
衣装協力 MIHARAYASUHIRO

※上記は2019年9月13日に掲載した情報です。