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梅村知世さん ファンタジーあふれるシューマンの音楽を追求し続けたい。 この記事は2019年4月10日に掲載しております。

2013年からベルリン芸術大学で研鑽を積んでいる梅村知世さん。東京藝術大学在学中に、第34回ピティナ特級グランプリ及び聴衆賞を受賞。2016年には、第17回ロベルト・シューマン国際コンクールで最高位を受賞し、ベルリンと日本を拠点に、新進気鋭のピアニストとして活躍している。これまでの歩み、シューマンへの想いなどを聞いた。

Profile

pianist 梅村知世

pianist
梅村知世
岡山県出身。4歳からピアノを始め、岡山県立岡山城東高等学校を経て、東京藝術大学を首席で卒業。同大学院修士課程修了。文化庁新進芸術家海外研修生として渡独、財団法人ローム・ミュージックファンデーション奨学生としてベルリン芸術大学修士課程を修了し、現在は同大学国家演奏家資格課程にてクラウス・ヘルヴィッヒ氏の下で研鑽を積んでいる。第78回日本音楽コンクール入選。第34回ピティナ特級グランプリ及び聴衆賞を受賞。第14回ピネローロ市国際コンクールにて第4位。第20回シュナーベル国際コンクール第2位、第17回ロベルト・シューマン国際コンクールにて最高位を受賞。
日本全国各地・ドイツ、ポーランド、アメリカ、オーストリア、イタリア等でも音楽祭やリサイタルに出演。東京交響楽団、東京フィル、東京シティ・フィル、藝大フィル、岡山フィル、プラウエン-ツヴィッカウフィル (ドイツ)等と多数共演をしている。第12回岡山芸術文化賞グランプリ、2018年度福武文化奨励賞を受賞。オクタヴィア・レコードよりデビューCD「シューマン」をリリース。2019年夏に二枚目のCDをリリース予定。
梅村知世オフィシャルサイト
※上記は2019年4月10日に掲載した情報です。

人生の分岐点となった藝大受験

 岡山市出身。4歳からヤマハ音楽教室で学び、ピアノと出会った。

「お友達ができたらいねという母の考えで通い始め、音楽が大好きになり、幼児科を修了した後、ジュニア専門コースに進みました。ジュニア専門コースでは、ピアノの個人レッスンと並行してグループ・レッスンを受け、エレクトーンでアンサンブルをしたり、作曲したり、即興演奏をしたり、幅広く音楽を学ぶことができました。レッスンの後、音楽教室があった商店街でお友達と鬼ごっこをして遊んだことなどを懐かしく思い出します。エレクトーンは様々な楽器の音が出るので、オーケストラをイメージしながらアンサンブルを楽しむことができました。そうした経験が私の音楽の根底にあるんだなと感じることがあります。ピアノの個人レッスンでは、ハノン、チェルニー、バッハなどを中心に学びました。当時は、早くショパンを弾きたい! などと思いましたが、今考えると、音楽的な基礎をしっかり築いていただけたと感謝しています」

 中学生になり、大阪のヤマハマスタークラスピアノ演奏研究コースに通うようになった頃から、ピアノへの取り組み方が変わったという。

「現在若手ピアニストとして活躍している仲間と出会い、彼らは小さい頃から優秀で、演奏家としての将来をしっかり見据えて学んでいて、すごいなと衝撃を受けました。そして、私も頑張ってみようと思ったのです。彼らとはその後、東京藝術大学やヨーロッパでも一緒に学び、いつもよい刺激を受けています」

 岡山県立岡山城東高校の音楽コースに進み、東京藝術大学を目指した。

「高校時代に師事したクラウディオ・ソアレス先生、北島公彦先生、東京藝術大学で師事した伊藤恵先生、3人ともハンス・ライグラフ氏の門下で、ドイツ音楽に造詣が深く、私も自然にドイツ音楽に惹かれるようになりました。北島公彦先生のご紹介で、初めて伊藤恵先生のお宅にレッスンに伺った日のことは今でも忘れられません。隣で弾いてくださるピアノの音色の素晴らしさに感動し、藝大に入ってぜひこの先生のもとで学びたいと思いました。藝大受験は、人生の分岐点だったなと思います」

伊藤恵さんに師事し、シューマンに心惹かれる

 念願かなって東京藝術大学で、シューマン弾きとして知られるピアニスト、伊藤恵さんに師事し、シューマンの魅力の虜となった。

「大学に入って最初に学んだ曲が、シューマン《交響的練習曲》。それを、入学してわずか1カ月しか経っていない5月の試演会で弾きました。全学年の学生が出演する8時間もかかる演奏会で、新入生にとっては大きな試練だったことを思い出します。伊藤先生のレッスンは、とにかく演奏家としてのオーラにあふれていて、弾いてくださる音の説得力にいつも圧倒されました。また、ラドゥ・ルプーの演奏会にいらした後、彼はこう弾いていたわと言いながら演奏を聴かせてくださったり……。刺激に満ちたレッスンから、多くのことを学びました。また、伊藤先生が弾くシューマンは本当に素敵で、私のシューマンへの愛が深まっていきました」

 大学4年の時にピティナ・ピアノコンペティションで特級グランプリ・聴衆賞に輝き、注目を集めた。

「小学生の頃から参加していたコンクールで、最後に素晴らしい賞をいただくことができ、とても嬉しかったです。伊藤先生に、「ピアノだけに向かわないで」「指だけで音楽をつくらないで」とよく言われていたので、コンクールという競争の場でも、作品、そして芸術に向き合おうと心がけ、選曲もコンクールのためというより、自分が今音楽家として何がやりたいかを軸に選びました。やはりドイツ音楽を究めたいと考えていたので、ベートーヴェン、シューマンを中心にプログラムを構成しました」

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梅村知世さんへ “5”つの質問

※上記は2019年4月10日に掲載した情報です。