コンサートレポート

コンサートレポート

2017年にフランツ・リスト音楽大学ヴァイマル修士課程を修了し、現在は佐野日本大学短期大学、こども教育宝仙大学にて講師を務める川田将人さんのピアノリサイタルが、2021年5月29日にヤマハ銀座コンサートサロンで開催されました。

2021年5月29日(ヤマハ銀座コンサートサロン)

■プログラム
◇J.S.バッハ/ペトリ: 羊は安らかに草を食み
カンタータ〈楽しき狩りこそわが喜び〉BWV208 より
◇J.S.バッハ/ケンプ: 主よ、人の望みの喜びよ
カンタータ147番〈心と口と行いと生命もて〉BWV147 より コラール
◇ベートーヴェン/リスト: 遥かなる恋人に
◇ショパン/リスト: 乙女の願い
◇ショパン/リスト: 私のいとしい人
6つのポーランドの歌 S.480 R.145 より
◇トレネ/ワイセンベルク: En avril a Paris(パリの四月)
シャルル・トレネによる6つの歌の編曲 より
◇R.シュトラウス/M.レーガー: Allerseelen(万零節) Op.10-8
◇R.シュトラウス/M.レーガー: Cäcillie (ツェツィーリエ)Op.27-2

◇J.S.バッハ: パルティータ第2番 BWV826
◇ベートーヴェン: ピアノソナタ 第27番 Op.90

[アンコール]
◇J.S.バッハ/ペトリ: 羊は安らかに草を食み
カンタータ〈楽しき狩りこそわが喜び〉BWV208 より
◇街角     トレネ/ワイセンベルク

冒頭におかれたのは、ブゾーニの高弟と呼ばれるピアニストのペトリが編曲したJ.S.バッハの《羊は安らかに草を食み》。まるでオペラ歌手がピアノの前で歌っているような美しい音色をCFXで表現しました。
続いて、ペトリと同じくドイツピアニストの巨匠であるケンプが編曲をしたJ.S.バッハの《主よ、人の望みの喜びよ》になると、その音は教会に響くオルガンのような重厚な音色へと変化しました。昼下がりの音楽に続いて登場したのは、ハンガリーの作曲家リストが編曲した歌曲たち。ベートーヴェン《遥かなる恋人に》、ショパン《乙女の願い》、ショパン『6つのポーランドの歌S.480 R.145』より《私のいとしい人》の3曲は、聴衆それぞれの心に儚くも美しい恋心を想像させました。フランスの大歌手、シャルル・トレネによる6つのシャンソンをピアニストのワイセンベルクが編曲した『トレネによる6つの歌の編曲』より《パリの四月》では、パリの郊外に響くトレネの歌声を想像し、続くレーガー編曲のR.シュトラウス《万霊節》と《ツェツィーリエ》では、哀愁を漂わせた歌曲を壮大に歌い上げました。

後半は、バッハ『パルティータ第2番BWV826』から開幕。前半の昼下がりの優雅な音楽とは対照的に、重く力強いアルペジオが響くと、目まぐるしいほどの声部転回が技巧的に繰り出され、緊張感を漂わせながら最後の一音まで勢いよく弾き終えました。
最後はベートーヴェンのピアノソナタ作品の中でも珍しい2楽章構成の『ピアノソナタ第27番Op.90』。ソナタ形式とロンド形式が採用されており、その中でもロマン派様式を感じさせる曲想と次々展開されるモティーフの表裏を、CFXの明瞭な音色を駆使して見事な緩急で表現しました。

本プログラムをCFXで演奏された川田さんは「シンフォニックな作品や言葉のニュアンスを大切にしたいリートの編曲、またピアニスティックな作品など様々でしたが、すべての音域でイメージした音を自然に表現でき、演奏中たくさんのインスピレーションを得る事が出来ました。」と、聴衆との素敵な時間をかみしめていました。
「本公演のプログラムは、私がヨーロッパ留学の最後の地として学んだドイツ・ワイマールの思い出から着想を得ました」とご挨拶された通り、「シューベルティアーデ」を感じさせる、川田さんと聴衆が身近で音楽を分かち合うひとときとなりました。

Text by 編集部