コンサートレポート

コンサートレポート

小曽根真さんが日本のトップミュージシャンたちと熱いセッション。ヤマハCFXで魅せた圧巻のプレイ

2018年3月17日(鎌倉芸術館)

小曽根真さんが鎌倉芸術館で贈るシリーズ「OZONE Collection」。その第1回に、自身が率いるビッグバンドNo Name Horsesのメンバーからエリック宮城さん(Trp)、中川英二郎さん(Trb)、中村健吾さん(Bass)、高橋信之介さん(Drum)が顔を揃え、熱いジャズ・セッションを繰り広げました。

■公演名
OZONE Collection Vol.1
小曽根真ジャズ・セッション feat. No Name Horses Quintet

 昨秋リニューアルオープンした鎌倉芸術館に、極上のジャズ・クインテットを堪能しようと幅広い年齢層の方々が集い、大ホールの3階席まで聴衆で埋め尽くされました。これから始まるコンサートへの期待に包まれた会場に開演ブザーが告げられ、次第にすべての照明が落とされました。冒頭、暗闇の中からピアノの音だけが現れ、観客の聴覚が研ぎ澄まされます。程なく、スポットライトがステージで演奏している小曽根さんの姿を映し出し、ベース、ドラムが順番に加わったあと、トランペットとトロンボーンが1階席の両サイド扉から登場。1曲目≪Ya Gotta Try≫から、まるでアンコールのような盛り上がりを見せました。

 「今日は江の島に出掛けたくなるお天気ですね」とリラックス感にあふれたトークを挟み、自身のオリジナル曲≪Bouncing in my new shoes≫を踊るように奏でます。ピアノ、ベース、ドラムが作る心地よいスウィングに、艶のある音色を響かせるトロンボーンと客席も思わずのけぞる迫力のハイトーンで圧倒するトランペットが重なっていきます。
 その後、トリオやカルテットなど編成を変えながら、メンバーそれぞれのアイデアで選曲したナンバーの数々を披露。エリック宮城さんが選んだ曲は、名サイドメンと呼ばれるジャズサックス奏者、ジェリー・ニーウッドの≪joy≫。ヤマハCFXから紡ぎだされる爽やかなフレーズがリフレインされる中、ピッコロトランペットが美しく響きます。途中、バッハを連想させるクラシカルな面も覗かせ、木漏れ日のような温かく生き生きとしたピアノを聴かせました。続く≪OP-OZ≫は、中村健吾さんが小曽根さんに勧められて初めて書いたオリジナルで、「オスカー・ピーターソン(OP)と小曽根さん(OZ)に捧げた曲」と解説しました。ピアノがバンド全体を包み込む優しい音色に溢れる一方、ドラムとの掛け合いでは打楽器の要素を感じさせる鋭い一面も。幅広い表現を実現するヤマハCFXの力が、最大限に発揮されました。第1部のラストは、中川英二郎さんのオリジナル≪Into the Sky≫。会場いっぱいに広がる清々しい響きと、躍動感あふれるリズムが心を揺さぶります。大迫力のジャズ・コンボに、聴衆は歓喜の拍手を送りました。

 休憩を挟み、フリューゲルホルンの穏やかな音色が心地よい≪Breakfast Wine≫で第2部がスタート。この曲が収められた"Bobby Shew Quartet"のアルバムに、若かりし日の小曽根さんが参加しており、「初めてこの曲を耳にした時、涙が出るほど感動しました!録音に参加していたご本人と一緒に演奏できるなんて、今日は感謝の気持ちでいっぱいです」とエリック宮城さんが語りました。続く≪Heaven's Kitchen≫は、中川英二郎さんのオリジナル曲。タイトル通り、天国での朝食をイメージさせる美しいピアノの音色と軽やかなドラムに、伸びやかなトロンボーンが応えます。
 この日のハイライトシーンは、小曽根さんのピアノソロ演奏。世界中で高い評価を受ける河瀨直美監督のラブコールを受けて映画音楽に初挑戦し、数日前に録音したばかりという≪End Roll≫を披露しました。6月公開予定の映画『Vision』に登場する様々なキャラクターが表現され、静けさと力強さがドラマティックに展開していきます。ヤマハCFXによって生み出される色彩豊かな世界観に、会場全体が息を飲みました。

 最後は「皆さん、安全ベルトを締めて!」と小曽根さんが客席に呼びかけ、エネルギッシュに≪Take the Tain Train≫が発車!遊び心いっぱいに仕掛けていく小曽根さんのピアノに、メンバーも乗じていきます。豪快なドラムソロも飛び出し、会場の温度を一気に押し上げました。大声援に応えたアンコールは、スタンダードナンバー≪Just Friends≫。最高の仲間と共に白熱のセッションを魅せた小曽根さんは、拍手が渦巻く会場を笑顔で見上げました。

Text by 鬼木玲子