モーツァルト、ウェーバー、ショパンの作品を積み重ねて、時代の流れを表現したい
サラ・デイヴィス・ビュクナーさん
【公演告知インタビュー】2026年12月28日(ヤマハホール)
サラ・デイヴィス・ビュクナーさんが、今年12月に銀座ヤマハホールに登場する。古典派からロマン派への軌跡を描くプログラムの要は、演奏機会の少ないウェーバーだ。選曲に込めた思いを聞いた。

今年1月、東京での初リサイタルを大成功させたサラ・デイヴィス・ビュクナーさん。待望の再登場となる12月のリサイタルは、古典派からロマン派へと続くラインをつなぐプログラムだ。
「モーツァルト、ウェーバー、ショパンの作品を積み重ねて、時代の流れを表現したいと思いました。3人の作曲家は、お互いに影響し合っています。お客さまには、音楽を聴きながら歴史の違いを知っていただきたいです」
冒頭に演奏するのは、名曲揃いのモーツァルトの作品のなかで、“かなり特異な立ち位置を占める作品”とサラさんが話す「幻想曲とソナタ」。ドラマティックでロマンティックなこの作品は、プログラムの最後に置いたショパン「ピアノ・ソナタ第3番」の声楽的な要素につながることから選曲したという。そして、モーツァルトとショパンの間に存在するのが、今回のリサイタルの要となるウェーバーだ。
「プログラムを組み立てる際、最初はウェーバーのソナタ全4曲を演奏したいと思いました。でも、公演で実施するのはなかなか難しい。ですから、いずれ全曲レコーディングをしようと考えています。それくらい私にとって大切で、いま弾きたいと感じる作品なのです」
全4曲のソナタの中から、リサイタルで演奏するのは第1番と第2番だ。古典的なスタイルで作曲されている第1番は、冒頭に演奏するモーツァルトとのつながりを意識して選曲した。ふたりは親戚という間柄でもあり、お互いの作曲にも影響しあった仲だという。そして、第2番はドラマティックでオペラ的な要素があり、必然的にショパンの作風へとつながる。
「私がウェーバーのソナタに初めて触れたのは、10歳のとき。エチュードとして第1番の第4楽章《無窮動》に取り組み、素早い動きのアクションを毎日、徹底的に練習しました。難しかったけれど、そのトレーニングはとても良かった! その後、16歳になってジュリアード音楽院に在籍したとき、このエチュードがソナタの一部だったことを知りました。改めて全楽章を学んだところ、なんて素晴らしい作曲家なのだろうと感じ、そのまま第2番、第3番と続けて取り組みました」
こうしてウェーバーに魅了されたサラさんだが、「最近では、完全に忘れ去られた作曲家といっても過言ではない」と嘆く。
「たとえば、アメリカ人も日本映画の『ゴジラ』は知っているけれど、名巨匠の成瀬巳喜男監督の映画はまったく知らない。ポピュラーな作品には注目が集まるけれど、日が当たらない世界もあるのです。ジュリアードで学んでいたころも、みんなが一斉にベートーヴェンやショパンの作品を弾く。でも、私は図書館に行って作曲家の棚のAから順番に楽譜を手に取り、知られざる作品を発見していました。多くの作曲家に興味を持ち、魅了された楽曲を弾き、探究してきたのです。人生は短い。だからこそ、私はいろいろなことに挑戦したい。音楽はもちろん、言語に関しても日本語、フランス語、スペイン語も知りたいし、たくさんの食べ物にもトライしたい。私の好奇心に終わりはありません」

現在は、ピアニストとしての活動のほか、後進の指導にも尽力しているサラさん。教師として大事にしているのは、どんな事なのだろう。
「2つあります。まず、私自身が学んできた教育、テクニック、そして伝統を伝えていくこと。師事したバイロン・ジャニス、ルドルフ・フィルクスニーといったレジェンドから受け継いだものを、次の世代につないでいく必要があります。もうひとつは、生徒が自分の道を見つけられるように育てることです。彼らには、自分の声を見つけてほしい。みんなが画一的に同じ道を目指すのではなく、100人のピアニストがいたら、100通りのスタイルを掴んでほしい。演奏法はもちろん、レパートリー、歩んでいく道が多様であってほしいと願っています」
最後に、サラさん自身が持つ独自のスタイルとは何かを聞いた。
「自己の内なるものと対話することが、私の強みなのかもしれません。仏教的な感覚を守り、作品から読み取れる情報をクリアに感じて、聴衆にクリアに届けることに気を配っています。音楽は、私にとって教会です。天からのメッセージを、みなさんに共有したい。今回のリサイタルも、ぜひ楽しんでください」

Text by 鬼木玲子
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サラ・デイヴィス・ビュクナー ピアノリサイタル
2026年12月28日(月)
18:30開場 / 19:00開演
ヤマハホール
前売 6,000円 / 学生 3,000円
当日 6,500円 / 学生 3,500円
プログラム
モーツァルト:幻想曲とソナタ ハ短調 K.475/457
ウェーバー:ピアノ・ソナタ第1番 ハ長調 Op.24
ウェーバー:ピアノ・ソナタ第2番 変イ長調 Op.39
ショパン:ピアノ・ソナタ第3番 ロ短調 Op.58
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