SWP1

1987年、ヤマハ株式会社はデジタル音声処理技術を応用して通信用LSIに参入。1995年、その応用製品の一つとしてヤマハネットワーク機器は生まれました。ユーザーの声とともに進化を続けた20年の歴史を振り返ります。

ヤマハネットワーク機器の歴史:プロオーディオの世界に辿り着くまで

1887年、ヤマハ株式会社は、創業者の山葉寅楠がオルガン修理をきっかけに創業しました。楽器製造から派生したデジタル音声処理技術を応用して1987年に通信用LSIに参入。1995年、通信用LSIの応用製品の一つとしてヤマハネットワーク機器は誕生しました。そんなヤマハネットワーク機器が誕生から20余年の時を経て、SWP1シリーズでプロオーディオの世界に辿り着くまでの歴史を振り返ります。

ヤマハネットワーク機器の黎明

ヤマハネットワーク機器の黎明

1987年にデジタル音声処理技術を応用したデジタルFAX モデムLSI(大規模集積回路)を発売。1989年には、当時普及が始まったばかりのISDN LS Iを発売しました。その後、いくつかのISDN回線を利用した応用端末の開発を経て、日本の商用インターネットが始まった直後の1995年3月に「ISDNリモートルーター RT100i」を発売したのがヤマハのネットワーク機器の始まりです。2015年3月に20周年を迎えました。

ヤマハらしいネットワーク機器の誕生

ヤマハらしいネットワーク機器の誕生

1994年に登場した商用インターネットは、アナログ電話回線でダイヤルアップ接続していました。当時のアナログ回線用モデムのスピードは、28.8kbps~33.6kbps、その後56kbpsに高速化されましたが、ISDN回線は64kbpsで2回線分同時利用できることや高速性・信頼性の高さから注目を集めていました。そして1997年頃からISDN回線を使って電話機能とインターネット接続機能を1台でこなせる製品が登場し、ヤマハも1997年10月に「RT80i」を発売しました。ISDNダイヤルアップルーター戦国時代に旗揚げです。RT80i発売直後より「小型化・低価格化・電話とインターネットのオールインワンの追求」と「ヤマハらしさの表現」をテーマに後継機開発に着手し翌年、1998年10月に「ネットボランチ RTA50i」が誕生しました。

ブロードバンドVPN時代の幕開け

ブロードバンドVPN時代の幕開け

高信頼性を求める金融、自治体、製造業のブランチオフィス向けルーターとして1997年からISDNやイーサネットなどの複数WANを収容できるRT140シリーズを展開しました。RT140eは、イーサネットを2ポート持ちWAN回線としてイーサネットとISDNを併用できる当時としては大変珍しいルーターです。発売当初は、ローカルルーターやCATVインターネット接続用に使われていました。2000年以降に急速に普及したADSL回線の登場で本領を発揮。個人向けに普及したADSL回線は、高速性が評価されながらもインフラとしての信頼性が欠けるため、企業への採用は足踏みをしていました。RT140eの高速性を実現するブロードバンドVPNと信頼性を提供するISDNバックアップを組み合わせることにより、企業へのブロードバンド普及が歩み始めました。2001年末より「小型化・低価格化・高速化」と「ISDNバックアップソリューション」をテーマに開発を着手し、2002年10月に「イーサアクセスVPNルーター RTX1000」が誕生しました。

リモートアクセスVPNの実現

ヤマハルーターを使ったリモートアクセスは、ISDN回線やPHS回線などを利用して安心・安全な通信を可能にしていました。しかし、ブロードバンド回線が普及して、新しいリモートアクセス手段VPNの提供が必要になり、2006年にWindows XPやVista用の「VPNクライアントソフトウェア YMS-VPN1」が誕生しました。

新たなファイアウォールの系譜

新たなファイアウォールの系譜

ヤマハルーターが持っているルーター機能やVPN機能などの基本機能を継承しながら、セキュリティを守る視点でソフトウェア機能を再構築して2007年に「SRT100」が誕生しました。SRT100の後継機種は、名前、外観、ハードウェア、ソフトウェアすべてにおいて、セキュリティ装置としての「分り易さ」を重視して2012年に「ファイアウォール FWX120」を発売しました。

LAN製品への取り組み

LAN製品への取り組み

1998年10月に発売したRTA50iで数台のPCを直接接続できるように3ポートのイーサネット・ハブ機能を搭載しました。インターネットにつなげる端末は続々と増えLANの老朽化と大規模化に伴いLANのトラブルも増えています。そのようなLANトラブルを回避し安定したLAN構築と管理・運用を支援するために2011年に「ネットワークスイッチ SWX2200シリーズ」、2012年に「ワイヤレスアクセスポイントWLX302」を発売しました。

オーディオのデジタル化、そしてネットワーク化

オーディオのデジタル化、そしてネットワーク化

一方でヤマハネットワーク機器と足並みを揃えるように、ヤマハプロオーディオ機器も他社に先駆けてデジタル化が進められました。その圧倒的な性能とコストパフォーマンスで業界を牽引し、プロオーディオの現場におけるワークフローを変革してきました。2000年代に入りイーサネットを用いたIP通信が一般化するとともに、オーディオ伝送にもネットワーク化の波が押し寄せます。いくつかのオーディオネットワーク伝送フォーマットが提案される中、IPネットワークで500チャンネルを超えるオーディオ信号を伝送できるDanteが登場しました。ここでもヤマハは業界の先陣を切ってDante対応機器を市場に投入し、ヤマハプロオーディオ機器の普及と共にDanteはオーディオネットワークのデファクトスタンダードとしての地位を固め、現場におけるオーディオ伝送環境を一変させました。

2016年、そしてプロオーディオの世界へ

2016年、そしてプロオーディオの世界へ

プロオーディオ業界においてDanteによるデジタルオーディオネットワーク化が進み、非常に高音質かつ便利になってきましたが、複雑なシステムになると取扱いはまだ難しいノウハウが多く、トラブルの一因になっていることも確かでした。また、CL/QLシリーズをはじめとしたDanteを採用した商品の購入を検討いただいているお客様から「スイッチはどれを買えばよいですか?」とのご質問も数多くいただいていました。ネットワークに関するノウハウを意識しなくても良いような「簡単で安心できる機材」を提供するため、ネットワークスイッチ自体をDanteに最適化した設定とし、さらにヤマハネットワーク機器が持つ「ネットワークの見える化」機能とDanteが持つオーディオフローの管理機能を統合。お客様に「より安心できる」「より簡単な」ソリューションをお届けするために生まれたのが「L2スイッチ SWP1シリーズ」です。

20余年の歴史の上に生まれた、ヤマハのヤマハによるヤマハのためのネットワークスイッチ。それがSWP1シリーズです。

Interview

Interview

SWP1開発ストーリー

ライブサウンドをはじめとするプロオーディオ市場においても利便性の高いオーディオネットワークが普及しはじめています。なかでもヤマハはデジタルミキシングコンソール「CLシリーズ」を筆頭に、オーディオネットワークDanteを採用した製品群によりプロオーディオ市場を牽引しています。「SWP1シリーズ」はヤマハが満を持してプロオーディオ市場に投入するネットワークスイッチ。1995年に国内ルーター市場に参入してから20余年、IT機器とプロオーディオ機器の両方を知り尽くしたヤマハが提供するソリューションとはどんなものか。プロオーディオ部門の開発者にインタビューを行いました。