この記事は2021年3月29日に掲載しております。

新たな扉を開くストリートピアノ

　東日本大震災で500台ものピアノが失われたと聞き、なんとかしたいという思いからはじめた「Smile Piano 500」プロジェクト。10年にわたり、「ピアノ」と「ピアノの音」を被災地に届けてきた。

「“スマイルピアノ”という曲は、この10年の思いをこめて書きました。はじまりのシンプルな右手のメロディは、震災後はじめて東北に足を踏み入れたときの気持ちや、ここでなにか自分ができることを続けていこうという決意。そこからいろいろな人に出会い、街が復興していくなかで少しずつ景色も変わっていく様子を、同じメロディにハーモニーやアレンジを重ねていくことで、自分なりに表現しました」

　アルバムのジャケットに写っているカラフルなピアノは、西村さんの故郷である大阪府豊中市の学校にあった古いピアノに子どもたちがペインティングしたものだそうだ。

「2020年、豊中ストリートピアノプロジェクトの親善大使に任命されまして、街中のいろんなところにピアノを置いて、いろんな人に弾いていただこうという活動をしています。ヤマハの “LovePiano”プロジェクトで伊丹空港の展望デッキなどで弾かせていただいたときから、なんて素敵な企画なんだろう、いつか私の故郷でもできないかなとずっと夢見ていたので、とても嬉しいですね。昨今のストリートピアノのムーヴメントには大きな感銘を受けています。今はピアノを弾く人が表現する場が豊富にあり、YouTubeなどで世界中に発信することも可能になりました。もっと身近にピアノを感じて、楽しんでもらうきっかけになったらいいなと思います」

　今後も「ピアノの伝道師」としての西村さんの活動は、さまざまな場所で多くの実を結んでいくことだろう。

Textby　原典子