コンサートレポート

コンサートレポート

ソロからトリオ、オーケストラとの競演まで多彩な活動でジャズの魅力を伝え続け、
ピアノ界のスーパーレディと謳われる国府弘子さん。
文化の日に相応しい福岡市美術館の開館記念日、
「魅惑のJAZZ 国府弘子のPiano Party」が開催されました。

2020年11月3日(福岡市美術館ミュージアムホール)

 雲一つない秋晴れのとなった文化の日は福岡市美術館の開館記念日。この日早朝7時前から人の姿がちらほらと、8時を過ぎる頃には美術館外の道路までぎっしりと長蛇の列ができていた。お目当てはジャズピアニスト国府弘子さんのコンサート・チケット。
同日に2回の公演、いずれも先着150名、計300名が無料で鑑賞できるとあって、遠方からの熱心なジャズファンはもとより、「一度ジャズを生で聴いてみたかったけれど機会がなくて」、「美術館でジャズっておしゃれだから」等など多くの方々が参集、理由は多種多様。けれども目的は一つ、“国府弘子のJAZZに会いたい!”

 春からずっと公演が軒並みに延期・中止となり、国府さん自身なんとも言えない緊張感が続いてきたと言われる。だからこそ、今回の福岡市美術館でのソロ・コンサートは本当に嬉しくて、音楽でお客様の心を解き放ち、ともに幸せな時間となるよう、ありったけの心を込めて演奏したいと思ったそうだ。

 舞台に登場し、いきなりスタンディングで「ピアノ一丁!」のテーマを奏でる。こうして舞台で弾ける喜びを、相棒CFXと共に伝えるのに座ってなんかいられないと言わんばかりに。そして祈りを捧げるように「アメイジング・グレイス」、秋の午后を感じるシャンソン「枯葉」と続いていく。

 「今回は敢えてプログラムは決めない、わざわざいらしてくださったお客様達が聴きたいと思われる音楽をその場その場で感じながら、曲を展開していきます。」と国府さん。CFXのおかげでやりたいことがなんでも無限に表現できる、ここでこの楽器を弾けることが最高にうれしいと、相棒(ピアノ)への賛辞が舞台上でしばしば表れていた。

 国府さんがこの2月にリリースした最新アルバム「ピアノ・パーティ」はCFXで録音されている。このアルバムの中からNHK“8Kアースウォッチャー”テーマ曲の「コズミック・ランデヴー」「アディオス・ノニーノ」が演奏された。ドラマティックなサウンドがピアノ1台でダイレクトに観客に伝わっていく。小さな会場だからこそ、そのパワ-とエネルギーが直球だ。そしてモーツァルトの「きらきら星変奏曲」でクールダウンした後は、「ピアノ・テラピー」「眠りの森」とラストまで鮮やかな音色と共に駆け抜け、幕は下りた。

 通常であればかけ声を出したり一緒に歌い、共に音楽を楽しむ方法があるのに、今はそれができない。国府さんの奏でる音楽に観客はフィンガー・スナップ(指鳴り)で応えた。老若男女みんなが心ひとつに国府さんの「魅惑のJAZZ」にノックダウンした瞬間だった。

※美術館の草間彌生作品と2ショット

Text by 樋口洋子